光合成メーターとは聞き慣れない言葉です。Photosynthesis Meterとあるので其の儘に光合成メーターとしたのですが、ネット上の検索エンジンで当たって見ると関連情報はいろいろあるようですが、光合成メーターではヒットしません。多分未だ、日本では一般には使われてない為に市民権を得てない用語なのでしょう。
しかし、このメーター、植物の光合成による生産効率を分析すると言うコンセプトの基に研究開発された装置と言い、欧米では知られて居て農業先進国のオランダでの研究が尤も進んで居ると言います。
最近、其の第三世代と言う、簡単に持ち運びできる手持ちのメーターが売り出された記事が愛読するオーストラリアのWeb雑誌に掲載され、本来は、研究用や教材用でしたが、今やそれのみならず、施設園芸農業等の一般の農業者向けの応用装置と紹介されていました。
―植物の光合成メーターミニPPM―
作物生産の原点は、植物の光合成に依る炭素固定にあり、それを左右する制限要素は、日照、熱気、寒気、干ばつ、降雨、炭素ガス濃度、養分不足、大気汚染、農薬等、多々あるのですが、その生産効率を植物生理学上の数値として捉える事は、21世紀にふさわしい持続可能な農業に課せられた課題解決に資する現代科学での先進技術の一端とも受け止められます。
―大切な市内の樹木の恩恵も然り―ISAより
今、現代農業は、省力化と高生産性に名を借りた農薬や化学肥料の多投の反省から、提唱の始まった前世紀的な有機農産物の生産活動への回帰とも言える時代に逆行するセンチメンタルな発想に振り回され、新たな課題を抱えてなかなかその解決への糸口の見つからない状況にもあります。
―太陽光スペクトルとクロロフィル蛍光線ー
そして、多くの課題を抱えて低迷する日本の農業も亦、其の解決は省資源農業活動に繋がる技術革新や新技術の確立にあると言われていますが、このような装置、応用できる新技術へのアプローチとしての世界の潮流と捉えるべきでもあり、家庭園芸分野であっても大変興味の深い話です。
ご存知のように、光合成は植物や植物プランクトン、藻類などの光合成色素を持つ生物が行う光エネルギーを化学エネルギーに変換する生化学反応であり、光を必要とする明化学反応で作られたNADPHとATPを使って、二酸化炭素と水を材料にして糖が作られるカルビン回路の暗化学反応とを指して言います。
―植物細胞中の葉緑体―Wikipediaより
その植物生理活動の効率の分析計器と言うこの装置、「飽和パルスクロロフィル蛍光光度計」とも言い、その基本原理の概要に就いて、さるメーカーの発表している資料がWEB上に有りましたので、一寸紹介させて頂きます。
―光合成メーターの原理イラストー
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「太陽からの光エネルギーが植物体サンプルの中のクロロフィル分子によって吸収されると、分子の電子配置は一時的に変更されますが、この励起された電子の配置構成は、吸収したエネルギーを消散させるいくつかのプロセスが競合するために、本質的に不安定であり、(通常8から10秒未満)と短命であります。光合成システムでのこのエネルギーが消散されるプロセスは、光化学プロセス或いは非光化学プロセスのいずれかであります。
光化学プロセスでは、色素因子からアクセプター分子へ電子の供与が行われる中で、光化学用に吸収されたエネルギーが利用され、そのようなプロセスでは、光合成が関与する化学的操作のためのエネルギーが直接作用します。
―メーカー原理説明イラスト1ー
非光化学プロセスでは、光合成作用を作動させない方法で、光合成システムからエネルギーを消散させ、そのエネルギーは通常、赤外放射(熱)とクロロフィル蛍光線として知られている赤色/遠赤色放射線の形で、葉面サンプル面から再放射されます。
これらのプロセス間の競合での吸収されたエネルギーは、その1つのプロセスでのエネルギーの減少の割合に関連して、競合する他のプロセスのエネルギーを確実に増加させます。すなわち、光化学反応での消散するエネルギーの減少は、熱の産生とクロロフィル蛍光のような非光化学プロセスによるエネルギーの増加となって反映されるのです。
―メーカー原理説明イラスト2ー
従って、太陽エネルギーをチャネル化する葉の光合成の能力性能に影響を及ぼす生物的または非生物的ストレスのいずれかの形式の影響も、葉面サンプルなどに影響する光化学反応経路を介して、クロロフィル蛍光の発光の強度を変更させる事になります。
光合成性能を制限するストレス要因となる特定のタイプの葉面サンプルを効果的にスクリーニングするようにする事で、結果としての蛍光発光の程度の変化の測定によって、光化学反応での光利用効率の変化についての情報を推測することができるのです。
1932年以来、エマーソンらの研究によって、光合成中には、異なるグループに依る色素因子に関連付けられている独立した光化学反応手順があり、後に光化学系Iと光化学系IIとして知られるようになって広く受け入れられてきたのですが、光化学系IとIIの機能上の実践の違いは、生理的温度で観察されるクロロフィル蛍光信号の少なくとも95%は、光化学系II(PSII)に関連付けられたクロロフィル分子に由来していることを意味しています」
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以上がそのメーカーの原理説明ですが、これだけでは光合成メーターを如何使うのかさっぱり分かりません。
―DC Bioscientific Ltd..―より
クロロフィル蛍光測定は、干害、寒気、熱気、塩害、ミネラル不足、土壌ミネラル毒害の調査に適すると言います。
この計器を作物の栽培管理に如何様に応用するかは、光合成の能力性能に影響を及ぼす生物的または非生物的ストレスであると言う干害、寒気、熱気、塩害、ミネラル不足、土壌ミネラル毒害を蛍光測定から読み取るノウハウにあるのでしょう。
―窒素不足が蛍光測定で読み取れる―Wikipediaより
そして、施設園芸を中心とした環境制御型の農業生産で、そこに育つ作物の生理活動をデユアルタイムで数値モニターしたパラメーターで管理する、従来とは違った栽培管理の時代が近く到来する事になるのでしょう。
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