今、アメリカで流行りの 「マイクログリーン」から始まって取り上げて見ました 「スプラウト」の話ですが、其の発芽野菜の持つ優れた特徴が一般に理解されているようでありながら、何か足らない情報があり、肝腎な点で欠けて居るものがあるような気がして成りません。
言うなれば、世界的に多発している 「スプラウト」が原因の食中毒、スプラウト種子汚染が原点に在ると指摘済ですが、スプラウトの生産工程での洗浄消毒でも結果的には不可抗力の要素があるとされ、状況に依っては安全性が担保出来ないと、尚も様々に論議されていることが一般には余り知られて居ないのです。
ご存じの方も居るとは思いますが、アメリカのスーパー大手のWalmart と Krogersは、安全上の理由からそれで 「スプラウト」の販売を取り止めて居るそうです。
―全米最大規模のスーパーのWalmart―WebImagesより
日本には定着している代表的な発芽食品である 「もやし」があり、それに亦、例の病原性大腸菌O157騒動で一時不人気となったとは言え、生食も出来る発芽野菜の「カイワレ大根」もあります。
其のどちらもが、古くから日本では作られて来た歴史があり、今流に申せば 其のどちらも発芽野菜ですから 「スプラウト」其のものズバリです。
その一般に言う 「スプラウト」、ご存知のように、英語の「発芽、芽を出す」と言う意味であり、日本でお馴染みの「もやし」は 芽が「萌え出る」から転じたのであり、亦 「カイワレ大根」、開いた子葉が二枚貝の姿に見える事からそう呼ばれると言いますが、全く同じ範疇の発芽食品であり乍ら、其処には微妙な違いがある事が意外と気付かれて居ない様です。
―もやしはスプラウトの元祖です!-
それで、欧米の野菜類やハーブ等の「スプラウト」と同様に 「カイワレ大根」も亦、生食するには問題となる種子汚染が潜在する事が、はっきり分かって居るか如何か気に成るところです。
昨近は自宅でも簡単につくれる「スプラウト」、園芸栽培の一環と捉えているのでしょうか、容器セットや専用種子が色々売り出されて居り、「もやし」(豆もやし)や「スプラウト」の作り方がいとも簡単に説明されています。
しかし、肝腎な発芽過程での大切な要点である複数回の「濯ぎ」の必要性、余りにも簡単に触れられているのには一寸驚いてしまいます。
―盛んに売り出されているスプラウト用種子―WebPagesより
今問題となって居る「スプラウト」の食中毒、生食する食べ方にあり、「もやし」は一般に「生」では食べない、生食するサラダとしての食べ方が 「もやし」には無かった事が、食中毒の原因となる発芽過程で増殖する微生物よる感染の心配をしなくて済んで来たと言う事かも知れません。
其の「もやし」の歴史は大変古く、文献で残る限りでは、中国の世界最古の薬草集大成の「神農本草経」の元となった「神農」の時代から ”大豆黄巻” 黒大豆もやしが在ったと言いますから、古代から中国では「もやし」が作られており、乾燥した生薬としても広く利用されて居たとあります。
ですから当然、日本にも古くから伝わって来ており、文献では平安時代の本草書の中に「もやし」が紹介されていたとあります。
一方 「カイワレ大根」も亦、平安時代には食べられていたとあり、平安時代の辞書「和名抄(わみょうしょう)」に 「黄菜(おうさい)」と書かれているのがカイワレ大根だと言います。
―“神農”4000~5000年前の古代中国の神―
それが日本では、本格的に「カイワレ大根」が生産されるようになったのは、昭和50年代と言いますから、おそらく、1960年代から始まったとされる、アメリカでの大豆もやし 「ソイスプラウト」の普及が原点とになって、全米に広がったと言う、ベジタリアン向けの自然食として自給用に盛んに作られるようになった穀類や野菜類、ハーブ等の「スプラウト」、そのブームが日本にも伝わって、触発されて日本のカイワレ大根の生産が復活したのだと推察致します。
―発芽の始まるもやしの緑豆―WebPagesより
その種子の発芽食として生まれたもやし「スプラウト」、その原点は遠く古代からの農耕の歴史の中で発芽する種子から学んだ知恵で有ったのでしょう。
その「もやし」、長い歴史を持つだけあって、豆もやし「ソイスプラウト」の製造方法には、独特の発芽過程での管理があり、其の持つノウハウの肝腎な点は、種子の繰り返し必要な「濯ぎ」です。
その意味の理解に欠けていた事が、商業栽培で病原伝染性大腸菌やサルモレラ菌等の増殖を助長させる結果となり、大規模な中毒事件の発生に繋がったと思われて成りません。
一般家庭でも簡単につくれるスプラウトーWebPagesより
「もやし」の手作りでは、種子の浸漬後の発芽過程での「濯ぎ」が必須の作業であり、外気温や季節にも依りますが、1日3回以上もの丁寧な繰り返し洗浄が必要であると書かれています。
発芽までに、種子から流れ出る糖質養分等による微生物の繁殖を極力抑えて腐敗を防ぐ必要があり、日に何回もの種子洗浄が欠かせ無いのです。発芽過程でのトリプシンインヒビターの低下で起こるのです。
簡単に言えば、発芽が始まって豆が割れて子葉となって胚軸が伸び上がる前段階を含め、豆の表面に付いた「ヌルヌル」、微生物繁殖の栄養分を適時に洗い落す必要があると言う事です。
それが、粒子の大きい緑豆や大豆で作る「もやし型スプラウト」では、豆が発芽胚軸伸長の方向も制限を受けませんから、容器に立体的に種子が詰められて、比較的容易に何度も「濯ぎ」が出来るのです。
―回転式のスプラウト製造機―WebPagesより
ところが細かい粒子の野菜種子の「カイワレ型スプラウト」作りでは、浸漬後の発芽胚軸伸長を一定の方向に伸ばすようにする為に、種子は平面面的に並べられ、それが発芽過程で何度もの「濯ぎ」が充分出来ない理由です。
発芽種子は発根台に置かれて固定される様な状態になって、発根して胚軸が立ち上がるまで光を遮断した静止状態に置かれ、尚の事、適温、高湿度、栄養分のある状態で子葉が胚軸と共に立ち上がるのを待つのですから、種子は一層危険な微生物繁殖が助長される事になるのです。
―種子の発芽には土壌(媒体)が必要です!-WebPagesより
2006年の『野菜茶業研究所研究報告』に、野菜苗または野菜種子に接種した大腸菌の動態を解析した結果に就いて次の様に書かれて居ました。
「ほぼ全ての野菜種子でその発芽時に大腸菌が、種子浸漬液中で増殖した。また、4科8種の実生幼苗を供試して子葉表面での大腸菌の増殖を検討した結果、高湿度条件下で全ての子葉上における増殖を確認した。さらに、6科15種の実生苗の胚軸における大腸菌の増殖を検討した結果、全実生苗の胚軸組織で大腸菌の増殖を認めた。以上のことから、湿度条件などの環境条件が増殖に好適であれば、大腸菌は、ほぼ普遍的に実生幼苗の植物体表面及び組織内で増殖するものと考えられた。」
―余り知られて居ない潜む危険な細菌感染!―WebPagesより
しかし、一般土壌栽培での種子の催芽では、このような発芽過程での種子表皮の「濯ぎ」、洗浄の必要が無い事は一般常識です。
先のブロウでもそう申しましたが、そうした微生物の増殖は、飽くまでも好適な環境次第であり、メリーランド大学の発表した「スプラウト」と「マイクログリーン」と比較栽培試験では、繁殖菌数でLog3~Log4の違いが有ったと言いますから、土壌栽培は、その安全性の点での違いが顕著であると申せます。
もし、簡易自家栽培で「カイワレ型スプラウト」作りをされるなら、種子は浸漬前に洗浄消毒される事を強くお薦め致しますが、丁寧な「濯ぎ」が何回も、発芽中に必要で有る事を知ってください。
―もやしとはちがう、SproutのImage―webPagesより
尚、「カイワレ型スプラウト」の商業生産では、最後の緑化工程で養液が添加されていると聞きます。それがどんな影響を結果的に与える事になるのかはっきりして居ません。 唯、言えるのは 「カイワレ型スプラウト」作りには、用土栽培が向いているかも知れない事です。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます