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副腎皮質機能亢進症のももこちゃん

2015年01月11日 | 診療科目

「2ヶ月くらい前からお水をよく飲み、たまにお漏らしをするようになっっていた。今日は元気が無く、胃液みたいなものを吐いた」とのことで来られたのは9才のヨークシャーテリアのももこちゃんでした。

↑いつも元気で愛想の良いももこちゃんですが、確かにちょっと元気ない顔つきでした

 

 診察をしたところ、お腹が少し張ってる以外に外見からは異常を感じませんでしたので、飼い主の方と相談して一般状態を把握する為に血液検査をすることになりました。

 

すると、胆嚢系の酵素であるALPが1845U/L、急性の炎症反応を示すCRPが測定不能という結果が出てきました。もちろんこれだけでは実際何が起きているのかは把握出来ませんが、ももこちゃんに大きなトラブルが起こっていることだけは分かります。

そこで、一日お預りして原因を突き止める為の検査を行うことになりました。

さて、お預りして検査を始めようとももこちゃんを診てみると・・・

 

↑全身の皮膚が突然このような状態に・・・

先ほどまで正常であった全身の皮膚に多数の紅斑が発現し、四肢末端の浮腫も急速に出現してきました。

このような変化が数分単位で発現するものとしては、ジンマシンに代表される1型アレルギー反応で認めらるのですが、何が原因であれ、この状態は命を落とす可能性のある危険な状態ですので、ひとまず検査を中止して救急対応を行う事になりました。

結果として、幸い状態もそれほど落ち込む事も無く、数時間後には浮腫も改善し紅斑も2日後には随分引いていきました。

状態が安定してすぐにレントゲンとエコー検査を実施しました。

  

↑レントゲン検査およびエコー検査所見(肝腫大、エコーレベルの上昇、一部モザイクパターンの出現、胆泥が認められ、両側の副腎は6mm、腰下リンパ節4.9mmでした)

 

この時点で原因として可能性があるものを経過と検査結果をあわせて判断すると、アレルギー性疾患、中毒、腫瘍性疾患、ホルモン性疾患、感染症による敗血症などを疑っていました。

入院4日目には、いつものももこちゃんに戻り、CRPも2.15mg/dLと改善傾向がみられたので、一時退院してもう少し治療反応を観察する事にしました。

更に対症療法を続け3日後の健診ではCRPも0.15mg/dLと正常範囲になり、一般状態もすこぶる良い状態でした。

↑退院3日後のももこちゃんの様子(この時点では飲水量も気にならない程度になったそうです)

ここまで対症療法による治療反応がよいと、原因として疑うものはアレルギー疾患か中毒、感染症のような一過性の疾患ですが、念のために除外診断としてホルモン検査を行ったところ、残念ながら副腎ホルモンの検査に明らかな異常値が出てしまい、今までの症状、経過、各種検査の結果を総合して、副腎皮質機能亢進症と判断しました。

 

この病気は以前も他の子でお話ししましたが、お腹の中の副腎自体に腫瘍性の変化が起こり発症するタイプ(早期発見が出来た場合は外科適応)と頭の中の下垂体という場所に腫瘍性変化が起こり発症するタイプ(基本的に内科治療)に分けられます。

ももこちゃんは内科治療を行うタイプになりますが、この治療は原因を除去するものではなく、お薬を使って快適な生活を維持する為のもので、いつかは限界が来ますが、それを出来るだけ長く(目標は寿命が来るまで症状が出ないようにすること)維持する為に綿密な治療計画やチェックが大切になります。

 

↑健診中のももこちゃん

 

これからも、飼い主の方と一緒にももちゃんを支えていきたいと思います。

 

獣医師 佐藤

 

 

 

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