うんどうエッセイ「猫なべの定点観測」

おもに運動に関して、気ままに話したいと思います。
のんびり更新しますので、どうぞ気長にお付き合い下さい。

お先真っ暗の日本ラグビー。もし許されるなら8年後のW杯開催を返上したい

2011年10月02日 | 団体球技(屋外)
◆第7回ラグビーW杯(2011年9月27日 @ニュージーランド・ネーピア/マクレーンパーク)

予選プールA
日本 23(17-7)23 カナダ

【日本】
2 2  1 17∥ 0 0 2  6∥ 23
T G P 前∥ T G P 後∥ 計
1 1  0   7∥ 2 0 2 16∥ 23
【カナダ】

※日本は予選プールを3敗1分で勝ち点2で最下位が決定


<予選プールの結果>
A組:1位・ニュージーランド(20)、2位・フランス(11)、3位・トンガ(9)、4位・カナダ(6)、5位・日本(2)
B組:1位・イングランド(18)、2位・アルゼンチン(14)、3位・スコットランド(11)、4位・グルジア(4)、5位・ルーマニア(0)
C組:1位・アイルランド(17)、2位・豪州(15)、3位・イタリア(10)、4位・米国(4)、5位・ロシア(1)
D組:1位・南アフリカ(18)、2位・ウェールズ(15)、3位・サモア(10)、4位・フィジー(5)、5位・ナミビア(0)

※各組2位以内のチームが決勝トーナメントに進出。
  カッコ内は勝ち点(勝利が4、引き分けが2、負けが0、4トライ以上獲得or7点差以内の敗戦にはボーナスで勝ち点が1)
  各組3位以内のチームは次回2015年イングランド大会の出場権を獲得。


<準々決勝の組み合わせ>
10/08 18:00 アイルランド(C組1位) vs ウェールズ(D組2位)     (@ウェリントン/ウェストパック・スタジアム)
〔通算対戦成績・アイルランドの60勝55敗10分〕
10/08 20:30 イングランド(B組1位) vs フランス(A組2位)        (@オークランド/イーデン・パーク)
〔通算対戦成績・イングランドの51勝36敗7分〕
10/09 18:00 南アフリカ(D組1位) vs 豪州(C組2位)           (@ウェリントン/ウェストパック・スタジアム)
〔通算対戦成績・南アフリカの44勝31敗1分〕
10/09 20:30 ニュージーランド(A組1位) vs アルゼンチン(B組2位)  (@オークランド/イーデン・パーク)
〔通算対戦成績・ニュージーランドの16勝1分〕

※キックオフの時間は現地時間 日本との時差は-4時間


今大会の日本代表30名


〔写真はロイターより〕


                           *  *  *  *  *


もはや改革は待った無しだ!!

既に予選プール敗退が決まった日本が最終戦で戦った相手はカナダ。4年前の前回フランス大会でも両国は対戦。この時は、日本がロスタイムで平浩二の執念のトライとその後の大西将太郎がコンバージョンゴールを決めて12-12の引き分けに持ち込み、予選プールB組を4位で終えて4大会ぶりに最下位を免れました。今回の試合はカナダに先制トライを許すも、日本は2トライなどを奪って逆転し、前半を17-7とこの日最大の10点差のリードで折り返します。ところが、後半は消化試合数が1試合少ないカナダに猛反撃を許し、徐々に点差が縮まります。それでも、日本は残り5分までに8点のリードを奪っていたので安全圏かと思われたが、1トライを奪われて3点差に詰め寄られます。更には、残り1分でペナルティーキックを与えてしまい、ついに同点に追いつかれます。日本は終了間際にジェームス・アレジが勝ち越しを狙ってドロップゴールを試みるも、大きく外れて失敗。結局、23-23と決着がつかず、またも引き分けに終わり、日本は1991年第2回大会のジンバブエ戦以来の20年ぶりのW杯勝利を逃しました。

日本代表のジョン・カーワン監督は今年で就任5年でした。前回は就任僅か1年で臨んだ大会だったのでまずますの評価を受け、今大会まで続投が決定。日本が今大会の予選プールで最初の2戦を戦ったフランスとニュージーランドは明らかに格上の相手なので、ある意味“予定通り”の結果でした。なので、トンガとカナダとの2連戦こそが、カーワン監督が率いた日本代表の4年間の真価が問われました。日本は今大会で2勝を挙げて予選プール3位に入り、4年後のイングランド大会の本大会出場権を獲得するのが目標でした。しかし、蓋を開けてみたら3敗1分で、勝ち点は2のみに。勝敗こそ4年前と同じだが、前回はフィジー戦で31-35と7点差で惜敗してボーナスでの勝ち点1を得ていたので、勝ち点では前回より1点少ないです。しかも、2大会ぶりに予選プール最下位に終わってます。試合内容も悪く、最大の大一番だったトンガ戦では「ターンオーバー制」を用いて準備万端で臨んだはずなのに、ミスを連発して自滅し、1度もリードを奪えずに18-31で完敗。そして、今回のカナダ戦はリードを守りきれずに終了間際に追いつかれたので、前回とは逆の試合展開でした。結果&内容とも、日本は4年前よりも後退したと言わざるを得ないです。しかも、目先の結果を追求する為に、あえて若い選手を選出せずに、即戦力として外国出身選手を10人も揃えて負けたのだから、何も成果が残りませんでした。

体格や身体能力の差はもちろん痛感させられますが、やはり強化体制の差を感じますね。日本は2003年に「トップリーグ」を創設し、近年はプロ契約した選手の増加やベテランの有名外国人選手が加入して強化しているとはいえ、リーグ運営の実態は企業アマに過ぎません。それに、大会形式が基本的に1回戦総当りのリーグ戦を行った後にプレーオフを実施するので、試合数が十分に多いとはいえません。本来なら、リーグそのものをプロ化する大胆な改革が必要ですが、今の経済状況だと手を挙げる企業は少ないと思うし、選手寿命の短さや生涯賃金を考慮すると選手も踏ん切りがつかないでしょうね。世界のラグビー界は既に1995年にプロ化を容認しましたが、アマチュアリズムを墨守していた日本は改革に立ち遅れてしまい、強豪国との実力格差が一向に縮まることなく、むしろ更に広がりました。他の競技のように国籍ではなく、所属協会主義を採用しているラグビーは外国出身選手を代表に加えることは可能ですが、如何せん「3年ルール」があるので、日本のような低レベルな環境で3年もプレーをしたら必然的に腕が落ちます。それに、外国出身選手といえども、他国での代表経験が無いことが条件なので、どうしても素材に限界があります。外国出身選手の加入の容認というのは、代表チームを取り巻く競技環境や国内リーグのレベルを含めた総合的な国力が問われているのです。

日本代表は外国出身選手が多い反面、海外のクラブに在籍している選手が極端に少ないです。なにせ、海外組がアレジだけですし、日本人選手に至っては皆無です。ラグビーはコンタクトプレーが伴う球技なので、日本と世界の強豪国とでは体格と身体能力の差が歴然です。海外選手の激しい当たりに負けない為にも、日頃から厳しい環境に身を置いて、体格や体力で勝る世界のトップレベルの選手たちに揉まれる必要があります。欧米勢と比較して体格で大きく見劣りする「なでしこジャパン」がW杯優勝を成し遂げた背景には、日本サッカー協会が北京五輪終了後に強化策の一環として「海外強化指定制度」を創設したことが挙げられます。協会が有望選手を欧米の強豪クラブへの移籍を斡旋し、「在籍日数×1万円」の日当と支度金を援助して海外での活動を支えてます。ラグビーは成績不振だったので、今後は海外の強豪国とのマッチメークが難しくなるのだから、サッカーと同様の制度を取り入れて選手個々の強化を図るべきです。余談ですが、アルゼンチンは、第1~3回大会までは国内組だけでしたが、1999年第4回大会に海外組を初めて6人招集。以降は16人→22人と大会ごとに増加し、今大会は24人です。一方、外国出身選手は皆無です。決勝トーナメント常連国となったアルゼンチンは、来年からはなんと「トライネーションズ」に参加します。90年代半ば頃までは贔屓目に見て日本よりも少し上の存在だと思ってましたが、今では完全に手の届かない所にまで引き離されました。

そして、本当に重要なのは育成年代の強化です。早い話が、大学ラグビーにメスを入れることです。なぜなら、8年後の2019年に日本で開催されるW杯に出場する世代である、現在の高校生から大学生ぐらいの10代後半から20代前半の選手を今から徹底的に鍛えて強化しないと、絶対に間に合わないからです。だが、日本の場合、スポーツ選手が一番伸びるこの時期に、レベルが高い社会人や外国人選手がいない同世代だけのリーグで4年間を過ごす低レベルな悪環境なので、大学ラグビー自体が育成組織として機能しているとは言い難いです。しかも、リーグが地域ごとに分かれており、最もレベルが高い関東は2つに分裂。更には、「補欠文化」が蔓延る日本は、下級生だと試合経験そのものが明らかに不足。実力上位校と下位校の対戦だと力の差があり過ぎて一方的な展開なので、守備をまともに覚えられず、いざ卒業してトップリーグのチームに入団しても即戦力にはなりにくいです。大学ラグビーは若い有望な人材をスポイルさせているので、識者からは存在自体が批判されてますが、実はその大学ラグビーが社会人よりも遥かに人気があって集客能力があるのだから、まさに歪な構造です。ラグビー関係者でさえ、日本代表よりも大学の勝ち負けに一喜一憂しているほどです。このおかしな構造を根本的に変えない限り、日本人選手は育つはずがないです。結局、育成組織がまともに機能しないから、いつまで経っても日本は外国出身選手に甘えているのです。

ただ、あらゆる手段を講じても、もう手遅れでしょうね。W杯は予選プールを最低でも3勝1敗の成績を挙げないと2位以内には入れず、決勝トーナメントに進出できないです。開催国は抽選で優遇されて第1シードとなり、世界ランキング1~3位の国とは当たらず、4~7位の第2シードの国が相手なら1度の負けは大丈夫です。しかし、8位以下の国には絶対に全て勝たなくてはなりません。世界ランキングでは同等のトンガやカナダにも勝てない国が、フランス・スコットランド・イタリアの「シックスネーションズ」の国に勝利を要求するのはあまりにも酷な話です。それ以前に、日本は20年間もW杯の白星から遠ざかっている国だから、8年後の本番で3勝のノルマを課す事自体、かなり無謀に等しいです。それこそは、今から目ぼしい人材を抜擢して資金を集中的に投下して手間暇を掛けて強化する「集中強化方式」を採用するか、外国出身選手を今以上に大勢起用する「傭兵軍団化」の2通りしか、代表強化の道はないでしょう。しかし、前者の場合は、限られた人材のみを強化するので、主力である彼らが年齢的に代表から引退したら人材が枯渇し、必然的に代表チームが衰退する弊害があります。後者の場合が最も手っ取り早く結果を出せますが、国民がシラけるのは必至ですし、下手すると国内のラグビー人気の定着にも左右する危険性があります。

そして、本当に不安なのは収支面です。なにせ、政府保証がありませんから。しかも、開催国は約180億円掛かる大会運営費以外に、国際ラグビー評議会(IRB)に約150億円もの莫大な“上納金”を支払わなくてはならないのです。開催国が手に入れられる収入は入場料のみで、そこから全ての費用を賄わなくてはならないのです。黒字にするには、入場料収入だけで300億円以上がノルマです。1試合に4万人を集めると仮定しても、単純計算でチケット1枚の平均価格は1万5000円以上となります。ただでさえ、国内ラグビー人気は低迷しており、日本代表戦ですら秩父宮では満員にならず、TVの視聴率だって低いです。それどころか、世間一般ではラグビーのルールすら知らない人だって大勢おります。このような状況下で、高額のチケットを購入してわざわざ会場に足を運ぶ人はいるのでしょうか? 集客が苦戦すれば必然的に開催国への負担が圧し掛かり、当然赤字が発生します。ちなみに、大会運営費の約2割の36億円を「toto」から拠出することは既に決まってます(→詳細はこちら)。ただし、大会の赤字補填をtotoに頼るのだけは断固拒絶します。totoの収益は国内スポーツ振興の為に回すべきものだからです。世界で最も通用しない競技の不始末の為に、他の有望な競技の強化を犠牲にする事は絶対にあってはならないです。ラグビー協会は大見得を切ってW杯を招致したのだから、必ず自らが全責任を持たなくてはなりません。その覚悟が無いのなら、今すぐにでもW杯開催を返上をするべきだ。


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☆日本vsカナダのダイジェスト

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2 コメント

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トンガも遠くになりにけり (こーじ)
2011-10-06 00:38:52
 JスポーツのBSサービスチャンネルでトンガ-フランス戦を見る事ができましたけど、まさか
トンガがフランスに勝つとは思いませんでした。

 他にもイングランドースコットランドや、アイルランド-イタリアなど見る事ができましたけど、日本はレベル的に置いて行かれている感が強いですね。

 その象徴であるトンガですけど、強いのはヨーロッパでプレーしている選手達がレベルアップしたというのが理由の1つでしょうね。

 そのトンガに‘5連勝しているから相性がいい’と言って勝てると報道していたマスゴミも
ラグビーを知らないようですね。

 こうしてみるとアルゼンチンでもトンガでも
90年代までなら勝てる相手だったのに、今では
手が届かないぐらいのレベルになってます。

 これは選手のプロ化というのが最も影響してますし、プロ化前に‘世界に誇るアマチュアリズム’などと悦に入っていたラグビー協会の連中が いかに遅れていたかという事になりますし
プロ化への転換が最も遅れた国でしょう。

 ちなみに何かの記事でラグビーW杯が始まった時に協会幹部の連中は‘よけいなものを始めてくれたもの’とグチっていたそうです。

 またTBした記事にも載せてますけど04年秋に
スコットランドとアイルランドに遠征して145以来の惨敗を喫した事がありましたけど、こんな
事をやっていれば強豪とは強化試合など汲んでもらえませんよね。

 ホントW杯が今年だったら145に続く汚点を残してましたし、8年後も厳しいのではないかと考えてしまいますよ。
 
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コメントありがとうございます (猫なべ)
2011-10-06 22:02:31
こんばんは、こーじさん

今大会が日本で開催されなくて本当に良かったですよ。
思えば、6年前の招致選挙で日本がNZに敗れた時に、「IRBは旧態依然の閉鎖的体質」とか「IRB創設8協会だけでW杯をたらい回しするのか」などと批判をした人がおりましたけど、ハッキリ言ってこいつらは見る目が全く無い有害な連中ですね。
もし今回の醜態を国民の目の前でお見せしたら、間違いなく日本ラグビーは臨終を迎えましたから。

私もJ-SPORTSの無料放送で、アルゼンチンが決勝トーナメント進出を決めた対グルジア戦を見ました。
正直しょっぱい試合でしたが、アルゼンチンが前半にリードを許しながらも、後半はスタミナが落ちたグルジアを冷静に仕留めました。
両国の地力に差があるとはいえ、アルゼンチンは海外組が多いから試合運びが冷静で上手いと感じました。
しかも、アルゼンチンは休養日が3日も短いのにもかかわらずスコットランドには13-12で勝利し、イングランドには9-13と惜敗しているから、本当に強いです。
トンガにしても、宿沢監督時代に秩父宮で行われたW杯予選では28-16で勝利してますが、あれから21年経った現在は大きく水を開けられました。
これだけ日本が不様だと、いっそのことアジア単独枠は廃止して、レベルアップを図る為にもオセアニアと合同での予選を実施するべきですね。

やはり、日本は世界の現実から目を背けて、国内大会を必要以上に神聖視して鎖国体制を築いた結果が、このザマだと思います。
グローバル化とプロ化に最も遅れた日本ラグビーは全てを根本的に変える覚悟が無いと、何年経っても同じ過ちを繰り返しますね。
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