うんどうエッセイ「猫なべの定点観測」

おもに運動に関して、気ままに話したいと思います。
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ウサイン・ボルト圧巻の9秒58!!

2009年08月17日 | 陸上
北京五輪の陸上男子短距離で3冠に輝いたウサイン・ボルト(22)=ジャマイカ=が16日、ベルリンで開催されている世界選手権の100メートル決勝を9秒58の驚異的な世界新記録で制した。ボルトはちょうど1年前、北京五輪でマークした従来の世界記録を0秒11も更新した。
ボルトは同日の準決勝を全体のトップとなる9秒89で楽々と通過。決勝は気温26度、湿度39%、追い風0・9メートルの条件下、苦手としてきたスタートをまずまずの反応で飛び出し、中盤までに早くもトップに立つと、最後まで力を緩めることなくゴールを駆け抜けて圧勝した。
2年前の前回大阪大会で優勝したタイソン・ゲイ(27)=米国=が世界歴代2位となる9秒71で2位。3位になった前世界記録保持者のアサファ・パウエル(26)=ジャマイカ=も9秒84をマークするハイレベルのレースだった。
ボルトは北京五輪で200メートルでも19秒30、第3走者を務めた400メートルリレーは37秒10の世界記録を樹立して金メダルを獲得しており、今大会もさらなる記録更新に注目が集まる。

〔共同通信 2009年8月17日の記事より 写真はロイター〕


陸上100m(wikiより)
10秒の壁(wikiより)


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今年は全国的に涼しい夏です。世界陸上も「変なキャッチコピーをつけるな!」という日本陸連からのお達しのせいもあり、TBSのお家芸である「煽り中継」が出来ずに手足が縛られた感があります(スポーツ中継ではこれが当たり前なんだけどね)。織田裕二のテンションもイマイチ低く、これでは山本高広も困ります(笑)。また、中学生の頃憧れだった中井美穂をテレビで見て、溜息とともに過ぎ去った年月を感じる今日この頃です。だけど、我らのボルト様は、そんなもどかしさを吹き飛ばすとんでもない偉業を達成しました。ちょうど1年前の北京五輪100mでは、余裕をぶちかまして世界新記録を作りましたが、ベルリンの地に馳せ参じたボルトは人類初の9秒5台に突入する離れ業を演じました。今回の記録は、過去にドーピングで抹消された記録や追い風参考記録も含めても世界新記録です。つまり、ボルトの走りを見た我々は、人類生誕史上最高の走りを目撃した事になります。

今回使用されているスタジアムは日本では珍しい青色のトラックです。このトラックは柔らかいと言われています。柔らかいと衝撃を吸収して弾力がでません。その為、記録が出にくいです。なのに、ボルトは、そんな事などお構いなしに颯爽と疾風の如く駆け抜けました。もし、硬い弾力のあるトラックだとボルトは一体どんな記録を出していたのでしょうか?おそらく、とんでもない記録を叩き出していたような気がします。北京五輪後に英紙に報じられた物理学者による分析だと、全力で走った場合、9秒55が出ていたと推測されましたが、ボルトは今回それを自らの力で実証しました。ボルトは、スタートは下手糞ですが、後半の加速力は規格外の馬力を保持するので、200mだと更に驚異的な記録を打ち出しそうな気がします。

一方、ライバルのタイソン・ゲイも世界歴代2位の米国新記録を更新しましたが、ボルトの活躍のせいで霞んでしまいました。ゲイにとっても今回は最高のパフォーマンスを発揮したにもかかわらず、ライバルの背中に追いつく気配すら感じませんでした。引き離されるライバルの背中を見つめながら、一体どういう気持ちで走っていたのでしょうか?「短距離王国米国」の威信を背負って戦うゲイは、精神的なダメージは結構大きいような気がします。ただ、ゲイはレース後、「彼が世界記録を更新できたのをうれしく思う」と祝福した姿勢は、とてもスポーツマンとして立派だと思いました。

なお、女子100mの福島千里は2次予選で敗退しましたが、日本女子が世界陸上で最初のラウンドを突破したのは今回が初めてです。ましてや、100分の3秒差での敗退ですから大健闘でしょう。また、五輪も含めると最初のランドを突破したのは、1928年アムステルダム五輪の人見絹枝(800mの銀メダリスト)、1932年ロサンゼルス五輪の渡辺すみ子に次いで3人目です。実に77年ぶりなので立派な快挙です。なにせ、今までの女子短距離は、五輪や世界陸上にはレベルが低すぎて選手を派遣すらできませんでした。100mに派遣するのも世界陸上では福島でわずか3人目です。だからこそ、女子100mでは56年ぶりに五輪に参加した福島は、昨年の北京五輪から数えて2度目の世界挑戦で最初のラウンドを突破したのはとても価値があります。世界的に見れば小さな一歩ですが、今後の日本の女子短距離界に勇気をもたらす大きな一歩です。この調子で200mと400mリレーで頑張ってほしいです。


▼1968年以降の男子100mの世界記録の変遷

9.95 ジム・ハインズ(米国)      1968/10/14 メキシコ五輪
9.93 カルビン・スミス(米国)      1983/07/03 オリンピック・スポーツ・フェスティバル
9.93 カール・ルイス(米国)       1987/08/30 世界陸上ローマ大会
9.93 カール・ルイス(米国)       1988/08/17 グランプリ・チューリヒ
9.92 カール・ルイス(米国)       1988/09/24 ソウル五輪
9.90 リロイ・バレル(米国)        1991/06/14 全米選手権(ニューヨーク)
9.86 カール・ルイス(米国)       1991/08/25 世界陸上東京大会
9.85 リロイ・バレル(米国)        1994/07/06 グランプリ・ローザンヌ
9.84 ドノバン・ベイリー(カナダ)    1996/07/27 アトランタ五輪
9.79 モーリス・グリーン(米国)     1999/06/16 グランプリ2・アテネ
9.77 アサファ・パウエル(ジャマイカ) 2005/06/14 スーパー・グランプリ・アテネ
9.74 アサファ・パウエル(ジャマイカ) 2007/09/09 リエティ・グランプリ
9.72 ウサイン・ボルト(ジャマイカ)   2008/05/31 リーボック・グランプリ
9.69 ウサイン・ボルト(ジャマイカ)   2008/08/16 北京五輪
9.58 ウサイン・ボルト(ジャマイカ)   2009/08/16 世界陸上ベルリン大会


☆意外と真面目に走ったボルト様(2009年8月16日ベルリン世界陸上 @ベルリン・オリンピアシュタディオン)



☆欽ちゃん走りで世界新のボルト様(2008年8月16日北京五輪 @国家スタジアム)

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