うんどうエッセイ「猫なべの定点観測」

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鬼門の「2月のW杯予選」でまたも苦しんだ日本サッカー

2012年03月02日 | サッカー(全般)
◆サッカー・2014 FIFAワールドカップブラジル大会アジア3次予選 第6節(2012年2月29日)

・C組
 日本 0(0-0)1 ウズベキスタン  (@愛知県豊田市/豊田スタジアム)
 得点者:ウズベク)54分 アレクサンドル・シャドリン

 タジキスタン 1(0-0)1 北朝鮮


▼3次予選のその他の試合結果  (左側のチームがホーム)
・A組
 中国 3(1-0)1 ヨルダン
 イラク 7(4-1)1 シンガポール

・B組
 韓国 2(0-0)0 クウェート
 UAE 4(2-2)2 レバノン
(韓国とレバノンの最終予選進出が決定)

・D組
 豪州 4(1-2)2 サウジアラビア
 オマーン 2(1-0)0 タイ
(オマーンの最終予選進出が決定)

・E組
 イラン 2(1-1)2 カタール
 バーレーン 10(4-0)0 インドネシア
(カタールの最終予選進出が決定)


<3次予選の各組の最終結果>
A組:1位・イラク(15)、2位・ヨルダン(12)、3位・中国(9)、4位・シンガポール(0)
B組:1位・韓国(13)、2位・レバノン(10)、3位・クウェート(8)、4位・UAE(3)
C組:1位・ウズベキスタン(16)、2位・日本(10)、3位・北朝鮮(7)、4位・タジキスタン(1)
D組:1位・豪州(15)、2位・オマーン(8)、3位・サウジアラビア(6)、4位・タイ(4)
E組:1位・イラン(12)、2位・カタール(10)、3位・バーレーン(9)、4位・インドネシア(0)

※各組2位以内のチームが最終予選に進出、カッコ内は勝ち点。
  なお、最終予選は2012年6月3日~2013年6月18日に行われます。


アジアサッカー連盟の今大会の関連ページ
日本サッカー協会の今大会の関連ページ
今大会の日本代表23名(日本サッカー協会HPより)
今大会のウズベキスタン代表19名(日本サッカー協会HPより)

〔写真は時事通信より〕


                           *  *  *  *  *


2月の試合は、ホームであってホームでない

ブラジルW杯アジア3次予選の最終節となった2月29日に行われた第6節。C組の日本は、昨年1月のアジア杯で4位入賞したウズベキスタンを豊田スタジアムに迎えて戦いました。両国とも、既に第4節の時点で最終予選進出を決めていたので、本来ならただの消化試合のはずでした。ところが、今回はいささか事情が異なり、日本は本気モードで臨まざるを得ませんでした。なぜかというと、理由が2つあります。まず1つ目は、6月3日に開幕する最終予選までに行われる国際試合が、今回が唯一だったからです。しかも、今回の試合は、選手の招集に支障の無い国際試合日(IMD)での実施だったので、日本は最終予選に向けた準備を兼ねて、欧州のクラブに所属する主力選手の殆どを招集しました。

2つ目は、3月9日にマレーシアのクアラルンプールで行われる、最終予選の抽選会に備える為です。抽選は、参加10ヶ国を5チーム×2組に分けますが、実力が偏らないように「ポット」というものを予め作ります。このポットを作成する基準は、直近のFIFAランキングを使用します。現在の日本のFIFAランキングは、豪州(22位)に次いでアジアで2番目の30位です。しかし、日本がウズベキスタンに敗れて、アジアで3番目の韓国(34位)がクウェートに勝利すると、3月7日発表の最新のFIFAランキングでは、日本は韓国と順位が入れ替わる公算が大です。その結果、第1ポットに豪州と韓国が入り、日本はイラン(47位)とともに第2ポットに入ることが濃厚です。つまり、日本は豪州と韓国のどちらかと必ず戦わなくてはいけないことになります。本来なら、日本は昨年3月にニュージーランドとモンテネグロとの親善試合2試合と、7月の南米選手権(コパアメリカ)に参加する予定でしたが、いずれも東日本大震災の影響で中止になったことが、FIFAランキングを下げる要因となってます。先の戦いを少しでも有利にする為にも、今回は結果を求められました。

だが、結果はご存知のとおり、日本はウズベキスタンに0-1で敗北。しかも、内容がすこぶる悪かったです。ホームの日本は序盤から試合を支配するも、ウズベキスタンの組織的な守備に苦しみ、中々チャンスを作れずじまい。前半22分には、香川真司からのパスを受けた岡崎慎司が左足でシュートするも、ゴールバーを叩く不運に見舞われ、惜しくも得点にならず。日本は好機を作るも、肝心の決定力を欠き、前半はスコアレスで折り返します。後半も序盤から日本が試合を支配。しかし、後半9分、前がかりになったところをウズベキスタンにカウンターで突かれ、アレクサンドル・シャドリンに押し込まれて先制点を献上。その後、日本は乾貴士と李忠成を投入して反撃を仕掛けるも、堅牢なウズベキスタンの守備をこじ開けることが出来ず、どうしても得点には至りません。すると、日本が徐々に運動量が落ち始め、逆にウズベキスタンに鋭いカウンターを浴びて数的不利な状況を作られ、何度もピンチを招く始末。追加点こそ与えなかったものの、後半の日本は殆どシュートを打つことすら出来ず、タイムアップ。日本は首位ウズベキスタンに勝ち点で6差もつけられ、C組2位で3次予選を終えました。

日本は、一昨年8月にアルベルト・ザッケローニが代表監督に就任以降、初めてとなるホームでの敗戦でした。 しかも、昨年11月15日の平壌での北朝鮮戦に続いて、W杯予選で2連敗を喫しました。ちなみに、日本がW杯予選で2戦続けて未勝利に終わったのは、前回の南アフリカW杯アジア最終予選のカタール戦と豪州戦以来でした。また、日本がW杯予選のホームゲームで敗れるのは、1997年9月28日に国立競技場で行われたフランスW杯アジア最終予選の韓国戦以来、4大会ぶり。W杯予選で2連敗を喫するのは、1985年10~11月のメキシコW杯アジア最終予選の韓国戦以来、7大会ぶり。最終予選の手前のラウンドで2敗を喫するのは、1980年12月のスペインW杯アジア1次予選で中国と北朝鮮に敗れて以来、8大会ぶり。そして、日本は過去8戦5勝3分と相性が良いウズベキスタンに初黒星を喫しました。まさに、今回は記録ずくめの敗北劇でした。内容もさることながら、今回来日したウズベキスタンは、国内組が主体の実質的に2軍同然のチームだったので、相手に余計な自信を与えました。また、この日トップ下に入った香川があまり機能せず、本来ならこのポジションでプレーする本田圭佑の不在が、あらためて浮き彫りになった格好です。

正直、試合前は負けるとは思いもしませんでした。しかし、内容的に期待出来ない試合になるのは、ある程度は予想がつきました(とはいえ、ここまで酷い内容になるとは思わなかった)。理由は、2月にW杯予選を行っていることに尽きます。言うまでも無く、2月はJリーグのオフシーズンなので、国内組の体調が本調子から程遠いからです。たしかに、ウズベキスタンも国内リーグが3月15日に開幕するので、条件的にはお互いさまです。しかし、ウズベキスタンは、日本戦の4日前に韓国と敵地で親善試合を戦っており、時差調整を施してました。しかも、この時点での韓国はまだ3次予選突破を決めておらず、クウェートとの最終戦で敗れたら予選敗退する危機だったので、結果的にウズベキスタンは本気モードの相手とスパーリングをして鍛えられてました(ちなみに、試合は韓国が4-2で勝利)。更には、ウズベキスタンは1月に中東遠征をしていたので、日本よりもチームの活動時期が早く、仕上がり具合の差は歴然でした。

また、本来ならシーズン真っ最中でコンディションが良いはずの海外組の選手も、実は不安要素があります。現在の日本代表の選手構成は、欧州のクラブに所属する選手が主力になりつつあります。しかし、海外組の選手は、日本での試合だと時差や移動があるので、かえって疲労を抱えることになります。ましてや、所属クラブで常時試合に出場してないと、試合勘が鈍ります。更には、海外組の選手は、移動するだけで時間を割かれるので、代表チームとしてまとまった練習時間を確保出来ず、選手同士の連係面でも不安が生じます。日本は、国内組主体で戦った2月24日の大阪でのアイスランド戦のうち、ウズベキスタン戦にも引き続いて出場したのは、遠藤保仁・今野泰幸・藤本淳吾・駒野友一の4選手だけでした。ただでさえ、国内組は体調面で不安があり、海外組は移動と時差による疲労を抱え、更には十分な練習を出来ずに連係を深められないのだから、良い内容を期待出来ないのは致し方ないです。日本のサッカーは「歴史・体格・地理」の3大ハンディを抱えてますが、地理上のハンディだけはどうしても埋めようがないです。

そして、本当に極めつけなのは、今回のW杯予選の日程です。もちろん、今回の試合はW杯予選なので、IMDで実施されており、選手の招集に関しては基本的に支障はありません。しかし、IMDには、「公式戦用」と「親善試合用」の2種類があります。公式戦用は、試合開始の4~5日前から協会が選手を招集することが可能なので、各国のリーグ戦を1週空ける形で代表戦の日程を組み込むことが多いです。日程に余裕があり、その期間内に2試合行うことが可能なので、W杯予選や各大陸選手権予選の試合を組み込まれます。しかし、親善試合用は、協会が選手を所属クラブから拘束出来るのは、試合開始の48時間前からです。基本的に水曜日の1試合しかなく、週末のリーグ戦の合間に日程が組まれることが多いです。また、現在行われているロンドン五輪アジア最終予選のように、IMD以外の日に代表戦が組まれた場合、当然クラブ側に選手の招集を拒否出来る権限があります。ちなみに、IMDは、既に国際サッカー連盟(FIFA)が2010~2014年までの4年間分を作成してます(→詳細はこちら)。

今回のブラジルW杯アジア3次予選は、前回南ア大会よりも5ヶ月も早く前倒しされ、昨年の2011年9月2日から開始してます。ちなみに、昨年9~11月のIMDは全て公式戦用になっており、9月2~6日に2試合、10月7~11日が2試合、11月11~15日2試合の合計6試合です。今年のIMDは全11試合です。公式戦用は、6月1~5日に2試合、同月8~12日に2試合、9月7日~11日に2試合、10月12~16日に2試合の合計8試合。親善試合用は、2月29日と8月15日と11月14日の合計3試合です。これを見て分るのは、アジアは、親善試合用のIMDにW杯予選を組み込んでいる日があるのに、逆に公式戦用のIMDには肝心のW杯予選を組まない日があるなど、歪な日程になっていることです。もし、昨年10月7日の公式戦用のIMDにW杯予選の日程を組み込んでいたら、3次予選は昨年のうちに全て消化しており、なにも親善試合用のIMDだった今回の2月29日に実施する必要はなかったです(ちなみに、日本は昨年10月7日にはベトナムと親善試合を実施)。こんなあべこべなやり方では、予選を前倒しをした意味が全くありません。あらためて、今回の予選の日程を作ったアジアサッカー連盟(AFC)の不見識さを感じると同時に、前回W杯予選で全滅した中東勢の政治力を嫌でも痛感させられます。

2月に行われるW杯予選の日本の不振は、代表選手の海外進出が本格化したジーコ監督時代から指摘されており、国内リーグで「春秋制」を採用する日本にとっては常に頭を悩ませている問題です。2月のW杯予選は、日本というより東アジア勢にとってあらゆる面で不利な要素が揃っているので、もし日本が今回の試合で最終予選進出を賭ける状況だったら危なかったと思うので、早めに決めておいて正解でした。ちなみに、最終予選は鬼門の2月に試合を組まれてないものの、やはり歪な日程になっております。9月と10月と来年3月は公式戦用のIMDにも拘らず、予選の試合はそれぞれ1試合だけしか組んでおらず、逆に親善試合用のIMDである11月14日(第6節)と来年2013年6月4日(第8節)に予選の試合を組み込んでます。チーム数が奇数で構成される最終予選は、来年6月15~30日にブラジルで開催されるコンフェデレーションズ杯と日程が重複するので、日本は最終の第10節を戦わない予定です。しかし、この第6節と第8節の2試合は、日本は試合をする予定なので、今から留意してしっかりと対策を練っておく必要があります。



▼ブラジルW杯アジア最終予選の日程
第1節:2012年6月3日(日)、第2節:2012年6月8日(金)、第3節:2012年6月12日(火)
第4節:2012年9月11日(火)、第5節:2012年10月16日(火)、☆第6節:2012年11月14日(水)
第7節:2013年3月26日(火)、☆第8節:2013年6月4日(火)、第9節:2013年6月11日(火)
第10節:2013年6月18日(火)
※10チームを5チーム×2組に分けてH&A方式で戦い、各組上位2位までが本大会の出場権を獲得。
  各組3位チームがアジアプレーオフへ回り、勝者が南米5位と大陸間プレーオフに進出。
  ☆が親善試合用のIMD(第6節と第8節)、それ以外は全て公式戦用のIMD。


▼ジーコ監督以降、2月に行われたW杯予選の結果
(全試合、親善試合用のIMDで実施されてます)

・ドイツW杯アジア1次予選
 vsオマーン ○1-0 (2004年2月18日 @埼玉スタジアム2002)

・ドイツW杯アジア最終予選
 vs北朝鮮 ○1-0 (2005年2月9日 @埼玉スタジアム2002)

・南アフリカW杯アジア3次予選
 vsタイ ○4-1 (2008年2月6日 @埼玉スタジアム2002)

・南アフリカW杯アジア最終予選
 vs豪州 △0-0 (2009年2月11日 @日産スタジアム)

・ブラジルW杯アジア3次予選
 vsウズベキスタン ●0-1 (2012年2月29日 @豊田スタジアム)


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☆日本vsウズベキスタン



☆タジキスタンvs北朝鮮



☆前節でレバノンに敗れて予選敗退の危機に瀕した韓国は、地元でクウェートを2-0で退けて、無事に最終予選に進出



☆本大会に過去4度出場経験のあるサウジアラビアは豪州に2-4で逆転負けを喰らい、まさかの3次予選で敗退



☆オマーンはホームでタイに2-0で勝利し、最終節でサウジアラビアを逆転して、3大会ぶりに最終予選に進出



☆バーレーンが最終予選に進出する為には、最下位インドネシアに9得点以上で勝利した上で、カタールがイランに敗れることが条件でした。試合は、開始僅か2分でGKが退場処分を受けたインドネシアを一方的に攻め立て、2つのPKを含め10点を奪ってバーレーンが圧勝。だが、イランとカタールは引き分けた為、勝ち点があと1点届かず、3次予選で無念の敗退。ちなみに、あまりにも不自然な大量得点での勝利だった為、のちにFIFAがこの試合を調査したそうです(笑)。




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