うんどうエッセイ「猫なべの定点観測」

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澤穂希と佐々木則夫監督がアジア人初のFIFA年間最優秀賞を受賞

2012年01月11日 | サッカー(女子)
世界のサッカー界の歴史に、日本が名を刻んだ。当地で9日(日本時間10日)行われた国際サッカー連盟(FIFA)の2011年世界年間最優秀賞の発表・授賞式で、女子日本代表(なでしこジャパン)の主将、MF澤穂希(33)=INAC神戸=が女子最優秀選手に、また佐々木則夫監督(53)が女子の最優秀監督に選ばれた。アジア勢として初の受賞となる栄誉に、澤は「先輩たちがいたから取れた。いろんな思いが詰まって、重みがある」となでしこジャパンの先駆者たちに感謝の言葉を述べた。

 澤、佐々木監督ともに、昨夏のワールドカップ(W杯)ドイツ大会で日本を初優勝に導いた実績が評価された。澤を「1位」とした各国代表監督、主将、記者は総数(294人)の約4割にあたる117人を数えた。

 男子の世界年間最優秀選手「FIFAバロンドール(フランス語で『黄金のボール』)」を獲得したアルゼンチン代表のFWリオネル・メッシ(24)=バルセロナ=は、欧州年間最優秀選手として受賞したミシェル・プラティニ氏(56)らと並ぶ最多の3度目の受賞。男子の最終候補に残ったポルトガル代表FWクリスティアノ・ロナルド(26)=レアル・マドリード=と、監督の最終候補だったレアル・マドリードのジョゼ・モウリーニョ監督(48)は試合を翌日に控えているため、式典に出席しなかった。ベストイレブンでは、メッシとロナルドがともに5年連続受賞を果たした。

 また、日本サッカー協会がフェアプレー賞を獲得した日本サッカー協会の小倉純二会長は「大変な名誉」とあいさつした。

〔毎日新聞 2012年1月10日の記事より、写真はAP通信〕

年間最優秀賞の各部門の投票結果
年間最優秀女子選手賞の投票結果の詳細
年間最優秀女子監督賞の投票結果の詳細
FIFAバロンドールの表彰式のダイジェスト(FIFAの公式サイトより)


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日本の穂希から、世界のHOMAREに

1月9日(日本時間10日未明)、スイスのチューリッヒで2011年の国際サッカー連盟(FIFA)の年間表彰式が行われました。日本からは、「年間最優秀女子選手部門」に澤穂希、「年間最優秀女子監督部門」に佐々木則夫監督がノミネートされ、見事に両名とも受賞しました。FIFAの年間最優秀賞を受賞するのは、もちろん男女を通じて日本人初ですが、アジア人としても初の受賞となります。2人とも、世界で最も競技人口が多い競技の頂点に立ったので、サッカー界の範疇を通り越して、日本スポーツ界においても歴史的な快挙です。余談ですが、「バロンドール」(フランス語で“黄金の球”の意味)の称号は男子のみであって、女子には使用しません。ただ、称号がどうれであれ、昨年夏に初優勝したW杯では、ボランチでありながら得点王とMVPを獲得した澤が世界一の女子フットボーラーなのは、今さら説明不要ですけど。また、「年間フェアプレー賞」にも、日本サッカー協会が受賞しました。男子が昨年1月のアジア杯で大会最多となる4度目の優勝を果たし、なでしこジャパンがW杯優勝とロンドン五輪の出場権獲得といったピッチ内での成功だけでなく、昨年3月11日に発生した東日本大震災以後の活動が評価されたのも受賞した理由です。日本はトリプル受賞の偉業達成となりました。

W杯での活躍を考えれば、2人とも取れるだろうとは思ってましたが、過去に男子で本命視されていた選手が受賞を逃したことが何度かあったので、実際に決まるまでは結構ドキドキしましたね。ちなみに、宮間あや(2011年度のアジア最優秀選手)は4位で最終ノミネートを逃すも、3位のアビー・ワンバック(米国)とは僅差でした。歴史が浅い女子だとはいえ、日本がFIFAの女子の各部門で総なめにして、世界的に高く評価される時代が到来するとは、数年前までは全く考えられませんでした。2004年アテネ五輪前までの日本女子サッカー界は、成績不振に喘いでいただけでなく、経済不況も追い討ちを掛けて企業チームの撤退が相次ぎ、国内リーグが消滅寸前に陥ってました。なにせ、当時の代表選手が、自分の知り合いが妊娠した時、生まれて来る子供にサッカーを勧めるどころか、「サッカーはやめた方がいいですよ。苦労ばかりですから」とまで言い放つほどでした。(→詳細はこちら)。澤は、女子サッカーに対する偏見があった時代や、先が全く見えなかった暗黒時代を含めて、18年間もの長きに渡って日本代表を支え続けてきただけに、人知れず大変な苦労を強いられたはずです。それだけに、今回の受賞は本当に感慨一入でしょう。それにしても、澤は和装がよく似合いますね。

女子の年間最優秀選手賞は2001年に制定され、今回で11回目の表彰となりますが、澤を含めて受賞者はまだ4人しかおりません。過去の3人の受賞者いずれも連続で受賞しており、2001~2002年がミア・ハム(米国)、2003~2005年が男子のセリエAのペルージャにもスカウトされたことがあるビルギット・プリンツ(ドイツ)、2006~2010年が“スカートを履いたペレ”の異名を持つマルタ(ブラジル)となってます。ちなみに、ミア・ハムの夫は元MLB選手のノマー・ガルシアパーラです。過去の3人の受賞者と比べると、澤は明らかに異質な存在です。というのも、過去の3人はいずれもポジションがFWの選手です。ミア・ハムは並外れた決定力、プリンツは優れた体格、マルタは卓越した技術など、圧倒的な個人能力で相手を捻じ伏せるようなタイプの選手です。一方、ボランチの澤はそういったタイプの選手ではなく、味方を上手く使って、自分も使われるタイプの選手です。本人が認めるように、女子サッカー選手としては体格と身体能力は平均点だが、数多くのピンチを未然に摘み取り、時には前線に飛び出して攻撃に絡むなど、優れた戦術眼を駆使して攻守両面で大活躍してます。つまり、今回の澤と佐々木監督の受賞は、世界の女子サッカーが戦術を駆使した組織的な戦いに移行し、個人能力だけに頼る時代が終焉した象徴的な出来事だとも言えます。

世界最優秀選手を擁して、世界最優秀監督が率いるなでしこジャパンは、7月のロンドン五輪では、間違いなく世界中から包囲網を形成されるはずです。早い話が、日本のやり方がライバルに徹底的に研究(=粗探し)されて、尚且つ模倣されることを意味します。現在は情報通信手段が格段に発達しており、世界のトップ選手やチームの試合映像の入手は一昔前に比べると遥かに容易です。しかも、新興国は若年層を中心に強化に本腰を入れ始めているので、地域間格差が着実に縮まりつつあります。たしかに、今の日本は新しい世界の潮流を築いたが、世界各国が本格的に強化して競争が激化するこれからが、本当の戦いの始まりとなります。1970年代に世界のトップクラスだった男女バレーや女子バスケを見て分かるように、体格と身体能力に恵まれない日本は、世界に先んじてあらゆる高度な戦術や技術を編み出しても、欧米勢や黒人に一旦真似されると、優位性が失われて相対的に地盤沈下する傾向があります。これは日本スポーツ界の永遠の課題なだけに、女子サッカーも胡坐をかくと、同じ運命を辿るのは必至です。今後も世界から高く評価される選手や監督を生み出す為には、競技環境を整備して、今以上に競技人口を増やす努力をする必要があります。決して、今回が最初で最後の受賞であってはなりません。



☆佐々木則夫監督の受賞スピーチ



☆小倉会長の受賞スピーチ



☆澤穂希の受賞スピーチ




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