うんどうエッセイ「猫なべの定点観測」

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大学ラグビーが全国リーグ設立を検討か?

2011年04月19日 | 団体球技(屋外)
日本ラグビー協会の矢部達三専務理事は18日、東京都内で記者会見し、大学のレベル向上を目的に、日本協会が全国大学リーグ創設を検討していることを明らかにした。
 4月1日付で就任した早大OBの新専務理事は今後の抱負などを述べる中で、現在の関東対抗戦や関西リーグなどを統合して1~3部に分ける全国リーグの私案を披露。「トップリーグとの差を埋めるため拮抗(きっこう)した試合を増やす」と話した。

〔共同通信 2011年4月18日の記事より抜粋〕


                           *  *  *  *  *


このニュースを聞いた時は、ラグビー界も随分と思い切ったことを考えるなぁ~と思いましたね。というのも、あらゆる大学スポーツの中で全国リーグを実施している競技なんて、殆ど聞いた事が無いからです。大抵の競技は、関東とか関西など地域ごとにリーグ戦を実施し、各地域リーグの上位何校かがトーナメント方式の全国選手権に進むレギュレーションだと思います。なので、全国から参加校を募って、実力によって分かれたカテゴリーごとにリーグ戦を実施するのは斬新なアイデアだと思います。もし、今回の全国リーグ構想が実現したら、実力のあるチーム同士による拮抗した試合が増えるので、日本ラグビー界にとって有効な強化に繋がります。

とはいえ、本当に実現可能なのかは、未知数のような気がします。やはり、全国リーグだと移動や経費が掛かり、授業にも支障が出ることが予想されます。しかも、大学ラグビー界は、名門校のブランドや学閥が今でも幅を利かせる世界です。なにせ、関東の大学ラグビーは、過去に名門校が新興勢力との対戦回避などが原因で対立し、名門校が主体の対抗戦グループと、新興勢力が主体のリーグ戦グループの2つに分裂した歴史があり、現在に至ってます。それに、早慶明は全国選手権で日本一を目指すよりも、ライバル校との定期戦で勝利することを重視してます。大学駅伝で例えるなら、11月に伊勢路で行われる全日本選手権よりも、関東ローカルに過ぎない正月の箱根駅伝を重視するのと同じ発想です。傍から見ると不思議なものですが、先輩から代々と長年受け継がれてきたこの伝統を変えるのは、決して容易くは無いと思います。名門校が伝統を放棄してまで、今回の話に乗ってくるのか正直疑問ですね。

人気に甘えて改革に及び腰だった大学ラグビー界が、今回大胆な構想を打ち出したのは、8年後の2019年に日本で開催されるW杯を見据えた強化策なのは間違いないです。現在の高校生から大学生あたりの10代後半から20代前半の選手を、今から徹底的に鍛えて強化しないと、絶対に本番までに間に合わないのは必至です。ただ、日本のこの世代の選手は、世界と比べても体格や身体能力はもちろんのこと、低レベルで貧困な競技環境の為、大学ラグビー自体が育成組織として機能しているとは言い難いです。しかも、下級生だと、試合経験そのものが明らかに不足してます。更には、実力上位校と下位校の対戦だと、力の差があり過ぎて一方的な展開となり、有効な強化に繋がりません。こうした影響もあり、同年代の世界の選手とは大きく差をつけられてます。なにせ、一昨年6月のU-20世界選手権では、自国開催にも関わらず、参加16チーム中ブービーの15位と惨敗を喫し、下部大会のジュニア・ワールド・トロフィーに陥落しました(なお、日本は今年も同大会に参加です)。「給料を稼いでいるプロ選手と、授業料を払っている学生」との埋め難い差をまざまざと痛感させられました。

さすがに、いきなり全国リーグの創設は難しいと思うので、まずは関東の2つのリーグ戦の統合から始めるべきですね。なにせ、全国から優秀な高校のトップ選手が集結する関東の大学リーグは、実質的な“全国リーグ”の様相を呈してますから。ただ、仮に全国リーグが出来て、実力が拮抗したカードを増やしたとしても、下級生の試合出場機会を増やさないと問題の半分は解決しません。更には、サッカーの「特別指定選手制度」のように、大学に在籍しながらトップリーグのチームに派遣させて試合に出場できる制度を作るべきです。また、日程的に難しいのかもしれませんが、かつてJFLに所属した大学サッカーの流通経済大学みたいに、大学チームがトップリーグの下のカテゴリーに所属するのもありだと思います。やはり、優れた選手は同年代の枠内だけだと強化に自ずと限界があるので、実力に応じたカテゴリーで鍛えるのが望ましいです。

アマチュア球界と同じく、カビの生えた差別思想のアマチュアリズムを今でも頑なに信奉する輩が多いラグビー協会の幹部が、私案だとはいえ、伝統をかなぐり捨てて大胆な構想を打ち出したのは、それだけ8年後のW杯本番に危機感を抱えている証拠なのでしょう。とはいえ、今の日本があらゆる手段を駆使して強化に本腰を入れても、世界の強豪国の一角を崩して開催国のノルマであるW杯8強進出はたぶん無理だと思いますね。なにせ、手でボールを扱えることが出来るラグビーは、番狂わせが殆ど無い競技だと言われてます。更には、日本の過去のW杯6大会の通算成績は、20戦1勝18敗1分と散々な成績ですから。つまり、ラグビー三流国に過ぎない今の日本は、W杯を開催すること自体が分不相応なのです。しかも、開催国は150億円以上もの巨額の保証金を国際ラグビー評議会(IRB)に支払う必要があり、政府保証の無い日本は自前で調達する必要があります。トップリーグよりも大学ラグビーに人気がある歪な日本が、本当にW杯開催を成功出来るのか今でも疑問ですね。


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☆一昨年6月に日本で開催されたU-20世界選手権決勝のニュージーランドvsイングランド
(2009年6月22日 @東京・秩父宮ラグビー場)

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2 コメント

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そうですね (こーじ)
2011-04-21 00:17:40
 現在の大学選手権は関西や東海に九州はカヤの外で、完全に対抗戦とリーグ戦グループの
独壇場になっているのが現状ですからね。

 2つのグループの統合が現実的だと思います。

 そして合間に関西の強豪と隔年開催の交流戦を行うというぐらいでしょうか。
 社会人との対戦は秋ではスケジュールが合わないので春先ぐらいしかできないでしょうし。

 ちなみにカーワンHCは今年のW杯で3勝すると
言ってますけど、果たして・・・・
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コメントありがとうございます (猫なべ)
2011-04-21 20:36:08
こんばんは、こーじさん

ちなみに、大畑も自身の著書でサッカーの「特別指定選手制度」のような、
20歳前後の伸び盛りの有望な学生選手をトップリーグに派遣させるシステムを導入すべきだと
主張してました。

やはり、日本は既にこの年代から世界のトップクラスと比較して明らかに遅れをとっているので、
今から何らかの手を打たないと、8年後の自国開催のW杯では厳しい結果が待ち受けるのは必至です。
ただ、国体と同じく、少数精鋭の「集中強化方式」を取ることが予想されます。
後先を考えないやり方なので、W杯が終わった後の方がむしろ心配ですね。

なお、今秋のW杯ですが・・・
1次リーグは奇数で編成されるので、弱小国の日本は明らかに日程が不利ですね。
なにせ、初戦がフランス、2戦目がNZですから、この2試合を“捨て試合”にして体力を温存しないと、
相手より休養日が少ない状態で対戦するトンガ戦とカナダ戦は厳しいですね。
さすがに3勝狙いの無謀な戦略だとチームが破綻するのは必至ですね(苦笑)。
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