うんどうエッセイ「猫なべの定点観測」

おもに運動に関して、気ままに話したいと思います。
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関塚ジャパン、シリアに終了間際の失点で痛恨の敗北

2012年02月06日 | サッカー(年代別)
◆男子サッカー・ロンドン五輪アジア最終予選 第4節(2012年2月5日)

・C組
 シリア 2(1-1)1 日本 (@ヨルダン・アンマン/キング・アブドゥッラー・スタジアム)
 得点者:シリア)18分 オウンゴール、90分 アフマド・アルサリフ
      日本)45分+1 永井謙佑

 バーレーン 2(1-0)1 マレーシア


▼最終予選の他の組の試合結果 (左側のチームがホーム)
・A組
 サウジアラビア 1(0-0)1 韓国
 カタール 2(1-1)2 オマーン

・B組
 イラク 0(0-1)1 UAE
 ウズベキスタン 2(1-0)0 豪州


アジアサッカー連盟の今大会の関連ページ
日本サッカー協会の今大会の関連ページ
今大会のU-22日本代表21名
昨年11~12月にモロッコで開催されたU-23アフリカ選手権のセネガル代表21名

〔写真は共同通信より〕


                           *  *  *  *  *


五里霧中となったロンドンへの道

代表チームのユニフォームが新しいデザインとなってから、最初の国際試合となった今回のシリア戦。本来なら、今回の試合はアウェーゲームのはずでしたが、現在のシリア国内は政情不安の為、試合会場を隣国のヨルダンの首都アンマンに移し、中立地での代替開催となりました。昨年11月27日の第3節終了時点で、3戦全勝で勝ち点9を挙げてC組の首位を走っている日本は、このシリア戦に勝てば2位以下とは勝ち点差が6に開き、ロンドン五輪出場に王手が掛かります。また、引き分けであっても、当面のライバルであるシリアとの勝ち点差が3のままとなって、日本の五輪予選突破が大きく前進し、残り2試合は圧倒的に優位となります。なので、今回の試合は、負けなければ十分に御の字でした。

ところが、蓋を開けてみたら、日本は大苦戦を強いられます。試合の序盤は、絶対に勝つ必要があるシリアが最初から飛ばして主導権を掌握。日本は凸凹のピッチと相手の早い寄せに苦み、苦し紛れに前線に蹴り込む単調な攻撃が多く、試合のリズムを中々掴めません。前半15分、日本に思わぬアクシデントが発生。最終予選で初めて先発起用されたMF山崎亮平が、相手選手と空中戦で競り合った際にバランスを崩し、左手からピッチに落下。負傷で試合続行不可能となり、そのまま担架に乗せられて、FW大迫勇也と交代。その直後のシリアのFKが大迫の頭に当たり、シュートの軌道が微妙に変わってGK権田修一の手を弾きます。不運なオウンゴールとなって、シリアにまさかの先制点を献上。その後も、中々リズムを取り戻せない日本だったが、前半ロスタイムに大迫のキープから、裏に抜け出したFW永井謙佑が倒されながらも落ち着いて決めて同点。このまま1-1のまま前半を終えます。

後半になると、シリアも動きが落ち始め、日本は中盤の選手がより積極的なプレスを掛けるようになり、ようやくペースを掴み始めます。後半30分には主将のMF山村和也に代えてMF扇原貴宏を投入すると、攻撃の流れも次第に良くなります。しかし、肝心の決定機を全て外します。後半25分には、左CKからフリーになっていたDF鈴木大輔のヘディングシュートが枠を捉えられずに失敗。後半36分には、MF山口蛍を起点にMF山田直輝のパスから大迫が抜け出すも、相手GKに好セーブされて逆転ゴールはならず。ピンチを凌いだシリアが次第に息を吹き返します。日本はせっかくボールを奪うも、簡単に失ってはまた攻め込まれる事の繰り返しでした。試合は同点のまま進み、このまま引き分けるのかと思われました。ところが、終了間際に、ドリブルで攻め上がったシリアのDFアフマド・アルサリフが右足で強烈なロングシュートを放つと、ドライブ気味のシュートとなり、ジャンプしたGK権田の手をかすめて日本のゴールに突き刺さって、シリアが勝ち越しに成功。結局、このままタイムアップし、日本はシリアに1-2で敗れました。

終わってみれば、勝ち点を得るどころか、悪い内容でまさかの敗北。敗因は色々あるが、この2月の時期は日本にとってシーズンオフなのが最も大きいでしょう。対するシリアはシーズン中なので、体調面のハンディは否めませんでした。更には、試合直前にMF清武弘嗣が直前で負傷し、ドイツのボルシアMGに所属する大津祐樹の招集を失敗したことも追い討ちを掛けました。ただ、協会が大津(もしくは欧州組)の招集を失敗ことを批判されている方がおりますが、それは全く持って筋違いです。なぜなら、今回の最終予選は国際試合日(IMD)に実施されてないので、元々協会には選手を拘束する権限が無いからです。クラブとの同意があれば可能だが、仮に招集出来たとしても、それはクラブ側から戦力として見なされてない事を意味します。批判をするなら、協会やクラブや選手ではなく、目茶苦茶な日程を作成したアジアサッカー連盟(AFC)に矛先を向けるべきです。基本的に最終予選には出場できない欧州組の選手は、まずは所属チームでレギュラーを奪取して、試合に出場することを最優先すべきです。高いレベルで揉まれて実戦を積み重ねることが、選手本人の為であり、日本サッカー界の為でもあるのです。協会や関塚隆監督も、最終予選の期間中は、彼らはいないものだと思って、試合に臨むべきです(ただし、大陸間プレーオフに回ったら、欧州組の招集は考えた方がいい)。

今回の敗戦で2位に転落しただけでなく、自力での五輪予選突破が消滅したこともあって、案の定メディアが蜂の巣をつついたように大騒ぎしてますが、決してそれに惑わされて浮き足立ってはいけないです。なぜなら、現時点では、このC組は既に予選敗退が決定したマレーシアを除いて、どのチームも他力本願の状況だからです。あくまでも、五輪切符の行方が、最終節にまで縺れ込む事が確定したにすぎないのです。たしかに、日本が総得点でシリアに1点劣っているが、残り2試合でなるべく得点を奪って連勝すれば、挽回はまだ可能です。それに、3位のバーレーンにも首位通過の可能性が数字上はあります(ただし、得失点差では不利)。シリアは次節でバーレーンと敵地で直接対決するので、一筋縄とはいかないはずです。また、最終節が中東勢同士にならなかったことも、同じ民族同士による談合を防止する上では、日本にとってはせめてもの救いです。もしかすると、最終節は日本とシリアで同時刻でキックオフする可能性があるので、まだ肌寒い3月の夜に東京で戦うバーレーンにとっては不利に傾くはずです(ただ、マレーシアのモチベーションはかなり怪しいけどね・・・)。

とはいえ、もし2位通過すると、かなりの遠回りを余儀なくされるので、今回の敗北が痛いのは事実です。最終予選各組の2位が参加するアジアプレーオフは3月25~29日にベトナムで開催され、そこで首位になった上で、4月23日に英国のコベントリーで開催されるアフリカ予選4位のセネガルとの大陸間プレーオフを戦わなければならないからです。最終予選の他の組も混戦状態となっており、どの国が2位通過するのか全く予想がつかないです。韓国はロスタイムに金甫の同点ゴールで辛うじて追いつき、オマーンは終了間際にPKを外して勝利を逃し、豪州に至っては未勝利どころか4戦連続無得点で 最下位に喘いてます 3位に沈んでます。もしかすると、思わぬ強豪国がプレーオフに回ってくる可能性が十分にありえます。しかも、3ヶ国による短期決戦なので、日程面による運不運が大きく左右されます。また、大陸間プレーオフもIMDでの実施ではないが、セネガルは欧州組が主体なので、1試合限定なら招集は不可能ではないです。ましてや、中立地での一発勝負だから、何が起きるのか分らないです。それに、プレーオフに回ると、クラブやフル代表の活動にも支障をきたすので、何としてでも最終予選で決着して回避しなくてはなりません。

余談ですが、五輪予選で試合終了間際のロングシュートというと、今から45年前の1967年10月7日に国立競技場で行われたメキシコ五輪アジア予選の韓国戦を思い出されたオールドファンの方がきっといらっしゃるでしょう。あの試合は、日本が宮本輝紀と杉山隆一の得点で前半を2-0でリードするも、後半に韓国の猛反撃に遭い、2-2の同点に追いつかれます。その後、釜本邦茂の得点で一旦勝ち越すも、すぐさま追いつかれます。試合終盤は体力で勝る韓国が試合の主導権を掌握し、日本は完全に劣勢。そして、3点目を決めた金基福がロスタイムにドリブルで日本陣内へ駆け上がり、約30mの位置から強烈なロングシュートを放ち、横っ飛びでジャンプしたGK横山謙三の頭上を通り越えてクロスバーを直撃。得点には至らなかったが、金属音が国立にこだまして、バーにはボールが当たった痕跡が鮮明に残り、観客の肝を冷やしました。結局、壮絶な死闘の末に3-3の同点のままタイムアップ。日本は3日後の最終戦で南ベトナムに1-0で辛勝して、得失点差で韓国を上回って五輪切符を獲得するも、もしあのロングシュートが決まっていたら、日本はアジア予選で韓国に敗れていたので、メキシコでの銅メダルは幻に終わってました。おそらく、日本サッカー界は現在とは相当違った姿になっていたので、まさに運命を分けるシーンでした。

はたして、今回の試合終了間際のロングシュートによる失点は、今後の日本にとって一体どのような影響を及ぼすのでしょうか? 今はとにかく、敗北の精神的なショックから立ち直ることを心から祈りたいです。


〔追記〕
2011年11月27日に行われたロンドン五輪アジア最終予選B組のUAEvsイラク戦で、イラクが警告累積で出場停止だった選手を出場させていたことが、のちに判明。2月8日、アジアサッカー連盟(AFC)はこの試合を没収試合として扱い、イラクの2-0の勝利から、UAEの3-0の勝利に変更する決定を下しました。また、イラクには7000スイスフラン(約60万円)の罰金も科せられました。この結果、第4節終了時では、UAE(勝ち点8・得失点差+4・総得点4)はウズベキスタンと並んでB組の同率首位となり、イラク(勝ち点1・得失点差-6・総得点0)の予選敗退が決定。豪州(勝ち点3・得失点差-2・総得点0)は3位に浮上するも、UAEとウズベキスタンとの勝ち点差が5に開いたので、予選突破がかなり苦しくなりました。



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☆シリアvs日本のダイジェスト



☆バーレーンvsマレーシアのダイジェスト



☆サウジアラビアvs韓国のダイジェスト



☆カタールvsオマーンのダイジェスト



☆ウズベキスタンvs豪州のダイジェスト



☆アフリカ予選を兼ねたU-23アフリカ選手権の3位決定戦のエジプトvsセネガルのダイジェスト
(試合はエジプトが2-0で勝利して五輪出場権を獲得し、セネガルが大陸間プレーオフに)




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2 コメント

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相も変わらずマスゴミの報道ときたら・・・ (こーじ)
2012-02-08 23:02:33
 試合の数日前にNHKのBSで‘ロンドン五輪への道’などという女性&お笑いタレントを使ったノーテンキな番組が垂れ流されていたので‘まだ出場権を獲得したわけでもないのに・・・’と思っていたら、案の定この体たらく。

 どうも日本は引き分けの文化がないのか、引き分けOKの状態で戦うと負けるケースが多々あるのが気になります。

 今回も見てませんが民放だと勝つか負けるかという話ばかりで、引き分けだと・・という話は皆無ですからね。

 今回の試合は一筋縄ではいかないだろうな・・と思っていたら、やはりでしたからね。

 どうもロンドン世代は子供の頃から整備された芝の上でばかり試合をしているので、今回のような酷いピッチでの試合には力が発揮できないのでしょうかね。

 たしかU19のアジア予選でも中東で負けてますし・・・・

 こういう体たらくを見ていたら‘出場したらなでしこよりもメダルに近い’とスポーツ紙に書いていた高名なライターの見識を疑います。

 ちなみに4年前の予選の時も4試合目でカタールに逆転負けを喫して総得点で2位に後退という
ケースがありましたが、次節でカタールはアウェーでサウジに敗れて出場絶望になりました。

 その時のカタールを思わせるシリアの喜びぶりを見れば、案外シリアはアウェーでもあるので勝ち点を落とす可能性があると思いますけど
マスゴミの報道は‘大量点を奪って連勝’の一くくりになってます。

 本当に歴史に学ばないという言葉は彼らのためにあるような感じですね。
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コメントありがとうございます (猫なべ)
2012-02-09 19:02:03
こんばんは、こーじさん

金○氏がスポーツ紙に書いた文章はこちらですよね。
http://www.sponichi.co.jp/soccer/yomimono/column/kaneko/2012/kiji/K20120105002370200.html

世間を挑発させるような“釣り記事”ではないので、金○氏らしくなくてあまり面白くないのですが(笑)、言っている事は概ね間違ってないですね。

ただ、男子は広州アジア大会で優勝しているけど、U-20W杯では2大会連続でアジア予選で韓国に惨敗して出場を逃しているし、主力世代となる1989年生まれに至っては香川以外は世界大会の経験は皆無なので、世界女王のなでしこよりもメダルを取る確率が高いという根拠があまりにも薄弱ですね。
なでしこに比べて世間の注目とプレッシャーを背負わないので、男子の方がメダルを取りやすいというなら、女子バレーの方が遥かに高いと個人的には思いますけど。

ちなみに、私はNHKのその番組を少し見ました(笑)。
たしかに、ゆる~くてチャラチャラした雰囲気の番組でしたね。
傑作だったのが、「五輪本番での成績は?」を街角でアンケートしてましたが、一番多かった答えが「ベスト8」でした。
渋すぎて、かなり現実的な予想だったのが、番組制作者の期待と思惑に反して笑えました。
たしかに、今の関塚ジャパンは選手の知名度が低く、人気も高いとはいえないので、試合を中継するTV局が景気良く盛り上げたい気持ちは分るが、ファンの目は肥えているので、ごまかされないですよね。
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