SOHO@軽井沢

仕事の話はほとんど出てきませんが、軽井沢でSOHO生活してます。

遠近宮

2008年05月21日 21時16分10秒 | 軽井沢の史跡
あれは4月になったばかりの日曜日のこと。
少し仕事しなくちゃと机に向かっていたのだが、その日はあいにくとすばらしくいい天気だった。ようやく暖かくなってきた軽井沢で、こんな天気のいい日曜日に仕事なんかやってられるわけがない。とりあえず自転車に乗って出かける事にした。
しかし、どこに行こうか、と自転車をこぎながら考えた。そうだ。前の記事に書いた師匠がブログで紹介していた遠近宮に行ってみることにしよう。

遠近宮はおちこちのみやと読む。この名前の不思議さから行ってみたいと思っていた場所だ。借宿の集落の国道18号の南側に残る中仙道の旧道沿いにある。



自転車をこぐこと20分。神社に到着。
中仙道の宿場町として栄えた場所にあるだけあって、立派な朱の鳥居が立っている。



境内脇には3つの石が立っていた。
石には御嶽神社、八海山神社、三笠山大神と彫られている。



磨耗した双体道祖神が、まだ早春の弱い夕日に照らされていた。

ところで、本殿に掲げられた宮司の書いた由緒書によれば、この神社の名は、伊勢物語や新古今和歌集に出ている在原業平の
信濃なる浅間の山に立つ煙 遠近人(をちこちびと)のみやはとがめん
がもとになっているという。

信濃の浅間山に煙が立っている。行き交う人はどうして見とがめないのか。
古代の人は、恋(こひ)と火をかけて、噴煙に隠せない恋慕の情を見いだしたらしい。業平も浅間に噴煙が上がっているのを見て、思わずそっち系の連想をしてしまったのだろう。

ただ、その歌がこの神社名に関係する直接の証拠があるわけではないようで、由緒書には「と思う。」で終わっている。
この神社の祭神は磐長姫命(いわながひめのみこと)。
父は大山祇命、妹に木花咲耶姫(このはなさくやひめ)がいる。

磐長姫命は、天孫である瓊瓊杵尊(ににぎのみこと)のもとに木花咲耶姫とともに嫁に出されるが、醜かったために磐長姫命だけは送り返された。
父の大山祇命は磐長姫命を差し上げたのは、天孫の寿命が岩のように永遠になるように、木花咲耶姫を差し上げたのは天孫が花のように繁栄するよう誓約を立てたためだったのに、これで天孫の寿命は短くなるだろうと告げ、以来、人は短命になったとされる。

そんな経緯を持つ磐長姫を祀る神社の名前が業平の歌に重ねられているというのは、なかなか面白い。



上のいわれのように長寿の守り神でもあるが、安産の守護神として慕われる神社でもある。安産祈願の布が奉納されていた。

遠近宮