昼間、ずっと降っていた雨がいつのまにか止んで夕焼けになっていた。
そう思った瞬間、甲高いカナカナという虫の音が一瞬聞こえた。
あれはヒグラシ?
それとも幻聴か?
と思っていると、再びその虫の音が聞こえた。
確かにヒグラシだ。
こちらの林で聞こえたかと思うと、別の林でもそれに応えるようにして鳴き始めた。
しかし、それぞれ1小節だけで終わり、あとは沈黙となった。
昔はこの声を聞くとひどく物寂しい気持ちになってくるからヒグラシの声は嫌いだった。
いまは違う。何だか心に沁み入ってくる。
長い間、このヒグラシの鳴き声を聞いていなかったから、軽井沢にもこのセミがいるんだと思うと嬉しくなった。
明日も聞こえるかな、ヒグラシ。