navikuma のブログ 陽炎のようにゆらめく景色のなかを走行中です。

ユーラシア大陸の端っこからのたわごとです。

不思議な体験-1

2011年09月02日 | 日記

余談として話すような些細なことですが、8月25日の日記にも書いた先々週休暇中の山歩きの途中であったちょっと不思議な体験です。

その避暑地の滞在最終日に SZPIGLASOWYA PREZELという標高2110mの山頂に登頂したのち、実はそのためにこそその山へ登ったとさえ言えるこんどは下山に歩みを移しました。

午後になっていましたが、夏山のあかるい陽光があふれていました。
きれいな岩肌の山の斜面を周囲の山々とそれらが織り成す峡谷や深緑のヒスイのように山影を落とし光り輝く湖の湖面を眺めながら、延々と続く壮大な九十九折の下り坂なぞるというルートを歩いていました。

そのときは前後の視界には人影人っ子一人も見えませんでした。
そこにある大小の自然岩石をつかって組んだ麓までつづく石段を一歩一歩下っていった時です。

とつぜん20mほど先の折り返し点になっている所を何か大きな動物らしきものが一匹すっと横切ってそしてすぐに見えなくなりました。

自分がその折り返し点まで降りて行ったとき、すぐまた進行方向眼下20メートルほど先の岩陰からその動物の半身が見えました。

なにやら岩のあいだに生えている草を食べているようでした。
驚かさぬように、逃げていってしまわぬように静かにゆっくりゆっくり一歩一歩近づいていきました。
しばし立ち止まっては持っていたカメラで幾枚か写真を撮りながら、そしてまたふたたび静かに一歩一歩近づいて行ったのです。
そしてあと5mぐらいの距離まで近づいてそれからはずっとそこで立ち止まってその動物を眺めていました。

身体はちょうど日本鹿ぐらいで容姿も良く似ている動物が草を食べ食べ頭を上げ下げしながらひと時そこにとどまっていました。
どうやら三日月のような短い角が映えているカモシカのようでしたが、そのときはまだ名前は判りませんでした。

わたしもそこに立ち止まってそのカモシカを眺めながら、そのカモシカ(後で調べたらシャモアでした)にささやくように自然に出てくる次のような言葉を語りかけていました。

”いい子だな、よしよし、美味しい草があって良かったな、ありがとうな、その姿を見せてくれて、こんな素晴らしい山を守ってくれていて、おおっいい子だ!
きれいな角だな、ありがとうな貴重な写真を撮らせてくれて、ありがとうな、よしよし、いい子だ!!”
とまあこんな具合にです。
時間にして約2分たらずでした。

どうやらもうそこの美味しい草がなくなってしまったのだろうか、すっとその身を反転してそこの石段を横切って荒々しい岩石が転がる山肌をまるで滑るように一気に20mほど駆け下りていきました。
そして一瞬立ち止まり私のほうを振り返って短く”フッシュウッ- ”とまるで語りかけるように一啼きしました。

あのときのそのカモシカの表情から判ったのですが、何か確かに意味のある言葉(メッセージ)を語りかけてくれたと思います。

そしてまたさらに20mほどほんとうに一気にこんどは斜面を斜めに登るように滑ってすぐに視界から小さな姿になってやがて岩石のあいだに消えていきました。

私は、そこで”あああのカモシカに出遭えてとっても幸運だった、よかった嬉しかった!”という満たされた思いでいっぱいになっていました。

そしてふたたびその場所からはるか視界の先まで続く荒い石段を下りはじめたのです。
そのときすぐになにかが違うことに気がつきました。
その前までは充分気遣いしつつも下りの石段をそれこそ一歩一歩確かめるようにゆっくりしか歩くことができなかったのです。

なぜなら、そこにたどり着くまでに1499mの峠と2137m峠と2110mの三つの大峠を越えてきてずいぶんと体力を消耗してその下山している時はほとんど余力で歩いていたからです。
正直言って歩みは頼りなく脚を労わりながらすこぶるゆっくりの態でした。

いったい何が違ったのかというと、とつぜん体が軽くなり脚がしゃきっとしてその石段の下りをまるで鼻歌を歌いながらステップを踏むような調子で歩いて下ることができるようになったのです。
脚の軋みや痛みはウソのようになくなっていました。
まるで不思議な魔法にかかったような具合でした。
標高約1950m地点からふもとにあるMORSKIE OKOの山小屋1406mまで一度も休まず歩き通しですからもちろん時間も予定よりずいぶん早く着きました。

その魔法は、人が大勢群れる麓の山小屋に着いた時点で消えてしまったようでした。
その山小屋には立ち寄らず、素通りしてさらに宿泊しているホテルのあるザコパーナのまちまで帰る乗り合いバスがでる地点(約2時間半かかる)に向かって歩いていきましたが、そこからはまた脚の疲れと痛みが重く現われてごくごくゆっくりした歩みになってしまいましたから。

思うに山道で出遭ったあのカモシカに助けてもらって、”ひと時カモシカのような脚を授けてもらったのでは。”というような気がします。
私にとっては、とっても不思議な体験でした。
今でもときどきあの時写した写真のなかのカモシカに”ありがとうな、助かったよ、また行くからね、また会おうな、元気でな、ありがとうな、”と語りかけたりしています。

ああいう場所ではこんな不思議なことが起きても”さもありなん”だと実感しています。

*(山)**(山)**(クローバー)**(!?)**(汗)**(コメント)**(驚き)**(ハート)**(びっくり2)**(びっくり1)*