Blog満賊亭

少欲知足をモットーに日々の満足を追求していくブログ

良いにおいのする一夜

2011年11月19日 | 池波グルメ
その日。

いつものように駿河の熊猫はつとめを終え、新幹線に乗り込み、東京へ向かった。
新宿西口の蕎麦や〔桂花〕で仲間といっぱいやったのが宵五つ半。

明日のつとめを考えれば宿に戻っても良い時刻ではあった。

(さて・・・どうしたものか・・・)

つなぎを付けたはずの旅仲間との合流が叶わぬと悟った駿河の熊猫は、一度は今晩宿をとった穴森稲荷へ向かったのだが、ふときびすを返し、新橋へと出た。

先日なめておいた「鬼平料理 池波」
熊猫はこの小料理屋の名が気になって仕方がない。

(おかしらの名を語るにせものめ、こいつの鼻をあかさねぇうちは寝るに寝れねぇ)

仕込んだスマホに導かれ、客の呼び込みに一瞥をくれながら、目的地に躍り出た。

「あっ・・・」

そこに居合わせたのは眼鏡をかけた初老の男。
白装束に身を包み、片手に杖を持ってはいるが、堂々の体躯の持ち主である。

(げぇ・・・カーネルサンダース・・・)




・・・鬼平風に書きはじめたけれど、なかなかに真似するのは難しいネェ(苦笑)

んん・・・先日の続きです。

「鬼平料理 池波」に突撃してきました。

リーマンのメッカ新橋はこの日も盛況。ナビに頼ったのになぜかケンタッキーにたどり着いてしまい、お店に電話。おかみさんに道先を聞き、出来上がった千鳥足のおっちゃんたちをかき分けてようやく目的地に到着!



はっはー!ここか盗人酒屋は。 ようし押し込むぞ!
ほんと、そんな感じで押し込んだわけですよ。


・・・ところがね、威勢が良かったのはここまで。

「お電話くれた方ですか?」

・・・ん?

隣の店に間違えて入りかけた私を呼び止める。

赤面しながら店内に滑り込むとそこは・・・三畳あるかないかの小さなお店。カウンター五席しか座れないところに先客が三名。

出来上がった大滝の五郎蔵親分のような常連さんをたしなめながら着物着たおかみさんがにっこりあたたかく

「いらっしゃい」

バツ悪く腰を下ろしぐるりと見渡すと・・・

壁には一面著者の作品が陳列し、テレビでは剣客商売のビデオが流れている。
ここまでは、それほど驚かなかったのだけど、目の前にあるお品書きを見て瞠目!


わかります?このお品書き。ファンであれば思わず唸ってしまうラインナップ。
鬼平代表料理「軍鶏鍋」
藤枝梅安に出てくる「大根と浅蜊の小鍋立」
そして・・・作者が大好物の「葱入りの煎り卵」まであるなんて

この夢のクリーンアップはまるで池波食エッセイの宝石箱や~!

やぁやぁ・・・これはすごいぞ!

聞けば、このお店の名前もきちんと池波婦人にも許可を取って使用しており、安堵。更に更に作者の友人で弟子である方が監修されていることも知り、こよなく池波作品を愛するおかみさんということがわかった。



これは・・・楽しすぎる。
出されるお酒もうまい。付け出しもいうことなし!
そして、料理以上のつまみとなる池波フリーク同士の会話の数々。

「私はね、忍者者から池波作品に入ったのです」

「とすると・・・丹波大介ですか?」

「いいえ、蝶の戦記からなんです。丹波大介、大好き。あの匂ってくるような男の若さが」

「蝶の戦記だから・・・武田信玄ね!信玄といえばオレは真田太平記から入ったんだよ」
(常連さん)

それぞれの大好きな作品を持ち出してその良さを分かち合う。
作品だけではなく、作者の生き様、思想、考え方に至るまで共感し傾倒している者同士なので意気投合しないわけがない。

お酒をひやとぬる燗で二本いただき、
「かぶの吸い物」「葱入りの煎り卵」「小鯛の梅香煮」と食べ進める。



どれも、作品に登場する食べ物だし、良いお酒とともにやるから本当に旨い。

軍鶏鍋は仕込みに時間がかかるらしく要予約らしいので、それは次回の楽しみにとっておくと告げ、気持ちよく店を後にした。

女将さんがわざわざ店の外まで出て送ってくださるのが嬉しい。

時を忘れて呑んだものだから・・・終電逃してしまったけど、こんな日は拾ったタクシーの運転手までご機嫌な方でね、気持ちよく眠りに付く。

本当に 良いにおいのする一夜でしたよ。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。