Pの世界  沖縄・浜松・東京・バリ

もの書き、ガムランたたき、人形遣いPの日記

影が映らない影絵人形芝居

2016年09月05日 | ワヤン上演

 昨日は犬山のリトルワールドでのワヤンの上演。実は、13時と15時の野外での二公演のということで、当初はワヤン・ルマ(スクリーンを使用しない形態のワヤン)での上演を予定していたのだが、紆余曲折があって結局スクリーンを使用してのワヤンに変更になった。この時点で、まず影は映らないということがわかっていた。
 影が映らないがスクリーンを使用する人形芝居というのは、厳密にいえばジャワに存在する。もちろん一般的な上演でなく、特別な儀礼でしか上演されないワヤンである。しかし、今回のワヤンはもちろん普通のワヤンだ。影が映らないということは、観客は操る側(楽器のおいてある側)から鑑賞するしかない。つまり、重要なのは語りと人形の動きである。影絵芝居ではなく、牛皮の人形劇だ。これはもう影絵をともなうワヤンとは別物の世界である。
 数日前から、そんな上演で楽しんでもらえる方法をいろいろと考えた。といっても目新しいことができるわけではないので、ひたすら「語り」を磨くことに集中した。語りの稽古をしながら、それまでは「影絵」に甘えていたのかな、と思うようになった。影絵があるから、多少語りにうまくいかないところがあっても仕方がないという甘えがあったのではないかと。ところで、中部ジャワのワヤンの観客は、ほぼ人形を操る側から鑑賞する。いや、鑑賞するというよりは、語りを楽しんでいるのだ。そう考えると、ワヤンは人形劇であると同時に「語り物」なのである。今回の公演を通して、そんな当たり前のことを再確認する。
 
 


影をつくる難しさ

2015年11月23日 | ワヤン上演
 ワヤンでは人形の影をスクリーンに映すのだが、実はそれが結構やっかいである。まず、ワヤンのスクリーンの構造上、人形全体を影にぴったりつけるのは難しい。重要なのは顔から上半身の部分で、これはどのような動きをしたとしてもスクリーンから離れてはならない。それが複数の人形が登場する場面で、複雑な動きをするとなるとなるとこれまたたいへんである。人形を操る側が、いろいろ考えて動かしてはみても、影にはそれがほとんど反映されないことすらあるのだ。そのために重要なのは、操る側と影をチェックする側が連携した稽古なのだ。
 今日はその練習。私が操り手なので、画面側にはメンバーのK氏が陣取って影の動きや映り方をチェックする。
「右の人形はその位置だと、よくわからない。」
「もっと左の人形を傾けた方がいいなあ。」
「電球を揺らしてみたらどうだろう?」
とにかくいろいろな案を出し合いながら場面を作っていく。一場面ずつこれを繰り返していくのだ。
 さて、今回の自主公演の演目「乳海攪拌」では、須弥山に巨大な竜バスキが巻き付いて、神々と魔物が互いに引き合い、山を回転する場面があるのだが、演目の中心となるこの場面をしっかり作り込んだのだった。静止画であるが、この写真の場面である。いったいどうやって、この竜を引き合い、山が回転するのか?もちろん本番のお楽しみである。

渋谷光塾ワヤン公演のお知らせ(12月5日、6日)

2015年10月30日 | ワヤン上演




 12月5日(土)、6日(日)14時30分から渋谷の光塾で今年で5回目になった恒例のワヤン自主公演を行います。例年は金曜日、土曜日でしたが、今年は諸般の事情で、土曜日、日曜日としました。
 演目は「乳海攪拌」。全18巻で構成されるマハーバーラタの第1巻「アディ・パルワ」の中の挿話で、不死の聖水であるアムルタを神々と魔物が奪い合うお話。アルジュナやビマなどのマハーバーラタにおなじみのキャラクターは出てきませんが、たっぷりお楽しみいただけます。
 お申込みは11月1日からで、チラシに書かれたメールのみで受け付けます。今年は定員を減らして2回ともに40名のみにしました。とてもアットホームな空間の中で、ワヤンをお楽しみいただけます。
 料金は、一般2,000円、小中学生1,000円、未就学児は無料です。
 なお、今年は10名限定で、6日11時からダラン体験ワークショップを開催します。実際にスクリーンの前に座って人形を操る機会はまずありませんので、それを体験していただきます。なんと、料金500円。
 今年も、多くの方々と会場でお会いするのを楽しみにしています!

ちょっと遅れましたが…

2015年10月29日 | ワヤン上演
 25日に名古屋でのワヤン公演、終わりました。いらして下さった方、ありがとうございました。写真は、上演前に演奏者だけの記念撮影です。皆、青色のお揃いのバジュ。恰好いいですね。
 今月は大阪で公演が2回、名古屋で1回の合計3回でした。来月はワヤンはお休み。とはいえ、学会発表があり、次の週には神戸芸術工科大学でジャウクのお話しと演奏、翌週はバンケンと静岡大学での演奏とワークショップとまだまだ予定は続きます。12月の自主公演に向かって練習の一か月。12月もワヤンは三公演です。
 自主公演が終わると1年が終わるわけで、あっという間の2015年という気がします。進歩しているんでしょうか…。

名古屋公演の朝

2015年10月25日 | ワヤン上演
 本日、午後1時30分より名古屋公演。朝5時15分起床です。まだ太陽は出ていませんが、マンションのベランダから見る朝焼けが美しい朝です。
 筋もセリフも頭に入っていますが、「笑い」についてはほとんど考えていません。最近は、大抵その場に行っから考えるようにしています。やっぱり「ご当地ネタ」を拾う方が面白いし、私自身も新鮮味があるのです。
 お客さんは楽しんでくれるかな、といつもドキドキの朝。今日は早起きすぎて、開演前に眠くならないかしら、と心配な朝。本番の日はやはり朝から、自分の中の何かが違うのです。

大阪公演終了

2015年10月13日 | ワヤン上演
 昨日で二夜続いた大阪公演が終わりました。いらしてくださったお客様、お手伝いいただいたスタッフの方々には心から感謝いたします。両日ともお寺での公演でしたから、スタソーマ物語がとても合ったと思います。
 大阪公演というのはどこにもまして緊張感があります。ワヤンは「お笑い」ではありませんが、大阪の方は「笑いにうるさい」という感覚がどうしてもあるのです。誰も笑わなかったらどうしよう、という恐怖感のようなものもあります。
 今回は大阪のメンバーの方々からいろいろな、かつ貴重なアドヴァイスをいただき、なんとか二公演を乗り切りました。それが一番安心したことかしら。写真は昨日、新幹線の関係で打ち上げに40分だけ参加する前に撮影した通天閣。次にこの光景を見るのは2年後になるようです。それまでお互い元気でいないとね。

小原公演終了

2015年09月15日 | ワヤン上演
 愛知県豊田市の旧小原村の農村舞台でのワヤン公演、無事終わりました。天気にも恵まれ、火を使って上演することができました。昨年より2週間早かったので、夜の涼しさもほどほど。100名以上集まってくださった観客の方々も寒さに震えることはなかったと思います。おいでくださった皆様に心から感謝いたします。
 今回は2時間10分くらいの公演時間でした。最後まで大勢の方が残って見て下さっていましたが、あとで考えてみると、車の道までは7,8分の山道で電気がないので、帰りたくても帰れなかったのかもしれません。そう思うとちょっと悪かったかな、なんて思ったりもします。
 上演していて、ときどき聞こえる観客の笑い声が上演中のダランの活力。今回も子どもを含め、よく笑ってくださいました。それと遠くから掛け声もかかりましたし。上演場所はかつて集落ごとに存在した農村歌舞伎の舞台。昔は観客と演者は一体となって不思議な演劇空間を作っていたのでしょう。今回もそんな舞台を目指しましたが、どうだったかな。でも観客の方にも助けられて、とても素敵な上演空間が演出できたような気がします。

ガムラン・アンクルンでワヤン

2015年03月03日 | ワヤン上演
 東京の音の森ガムランスタジオで1年以上前からガムラン・アンクルンを伴奏楽器にして上演するワヤン(「ワヤン・アンクルン」)の曲を教えてきたが、とうとう人形とともに上演ができるようになってきた。四音音階の行ったり来たりの複雑な旋律をよく覚えてくれたと思う。講座生には本当に頭が上がらない。
 演目は「アノマン使者に立つ」。この演目は私も初めてである。ちなみにジャワではハノマン Hanomanと発音するし、インドでも同様だが、バリではAnomanである。たとえHanomanと書いてもバリのダランは「アノマン」と発音する。昔からしつこくそう教えられてきたので、バリ風に「アノマン使者に立つ」というタイトルにした。
 さて公演だが、実は今回はスタジオでの上演なので、ほぼ関係者のみでの公演になってしまう。講座なので「発表会」といった方が正しい。ただ、これで終わりにするのはあまりにももったいない。アンクルンを使ったワヤンの上演はかつて沖縄でやったことはあるが、曲も短くしたり、簡略化したバージョンだった。しかし今回はほぼ完全バージョンなので、できれば多くの方に見ていただける機会を作りたいと思っている。演奏者も多いし、皆忙しいし、夢で終わっちゃうかもしれないのだが。

再び沖縄へ

2015年02月06日 | ワヤン上演
 今晩から沖縄です。この2週間で3回目。昨年の秋からしばらく沖縄に行っていませんでしたから、なんだか急に住んでいたころに戻っていたような生活になりました。今日は中部国際空港から出発です。新幹線に乗らなくてすむのですが、それでも浜松からだと2時間以上かかります。もっと静岡空港が沖縄便、いっぱい飛ばしてもらうとありがたいんだけど。
 今週撮影した那覇の緋寒桜。2泊しましたがデジカメで撮影したのがこれ一枚。ちょっと撮影、というときにはどうしてもスマホになってしまいます。
 土曜日に練習し、日曜日が舞台です。南風原文化センターでのワヤンは4年ぶりでしょうか?沖縄公演はやはり自分の中で特別な舞台です。皆さんに来てよかったといわれるような公演になるようにがんばらないと。

心頭滅却すれば…

2015年01月11日 | ワヤン上演
 昨晩のワヤンでトゥアレンがムルダにこういいました。
 「心頭滅却すれば冬空のワヤンの上演もまた、南国にいるかの如し」
 必死にダランである私もそう念じて上演しました。気温を測ったわけではなりませんが、たぶん5度くらいだったんだと思います。上演する方はもう防寒して、ホカロンを数か所に貼り、私は4枚服を重ね着して上演してなんとか乗り切りましたが、観客は本当にたいへんだったと思います。それでも多いときには70名くらいの人が一座の上演を取り囲んでいたそうです。
 ありがたい、の一言です。それもたくさんの子どもたちがスクリーンを見つめていたそうです。今の子どもは、テレビ、コンピュータゲームが当たりまえの世代。それにもかかわらず、寒さの中、一枚のスクリーンを見つめてくれているなんて本当にうれしい限り。今の子ども、捨てたもんじゃない。
 私たち一座は「無事」です。終演後はしっかり片付けて、ちゃっかりわが家で反省会兼新年会で盛り上がりました。「本当に寒かったね」「でもやればできるもんだね」「チャレンジだね」なんて言葉が飛び交いました。ただ誰一人こういう言葉を発するメンバーはいませんでした。
 「また、この寒空のもとでワヤンをやりたいね」
 もちろん、私も同じような依頼が来たときは、メンバー全員で熟慮したいと思います。