院長のへんちき論(豊橋の心療内科より)

毎日、話題が跳びます。テーマは哲学から女性アイドルまで拡散します。たまにはキツいことを言うかもしれません。

週刊朝日がPTSDを取り扱った

2011-05-10 22:49:52 | Weblog
 時宜に合わせるように、今日発売の週刊朝日がPTSDを取り扱っていた。週刊朝日はむろんPTSDについては素人の集まりだから、このたびの災害とPTSDを結び付けたかったようだ。

 専門家としてコメントを求められた飛鳥井望医師(東京都医学総合研究所副所長)は、週刊朝日が望んだようなコメントをしなかった。つまり、いろんなトラウマの中でPTSDを発症しやすいのはレイプで、50%にも上る。しかし、天災では9%に過ぎないと述べた。

 週刊朝日はがっかりしたことだろう。でも、飛鳥井氏はPTSD概念そのものを批判することなく、自らが熱心に取り組んでいる「認知行動療法」が効くと宣伝した。いまのところ、文献的には認知行動療法は有意に効くとのエビデンスがあるけれども、認知行動療法は、言ってみれば教育のようなものであり、療法と呼べるのかどうか、私は疑問に思っている。

 久留米大学病院精神神経科准教授の前田正治医師は、えひめ丸事故で生還した高校生の治療に2年間かかったという。おぼれそうになった少年は毎年ゴマンといるのに、何故えひめ丸事故だけがクローズアップされるのか、ご自分で分かっていないようである。

 前田氏はPTSDには薬物療法が効くという当たり前のことを言っているが、この当たり前が通らないのがマスコミの世界である。よく言ったと賞賛したい。

 もっとも前田氏は、PTSDに効く薬があるが、まだ承認されていないとも言う。PTSDという疾病概念自体に疑問を持っている私としては、そんなものに選択的に効く薬なぞないと明言しておきたい。

 同じ記事でコラム発言を求められた重村淳医師(防衛医科大学校病院・精神科)は、救護チームで仙台にはいった。彼が言うに、PTSD発症率は被災者より救護者のほうが高い。この時点で、重村氏はPTSDを真性の疾患単位と認めてしまっている。

 ただ、原発内の職員は、国民のために任務を遂行しているのに、非難をあびる。自尊心が満たされない状態は心に大きな負担を与えると、重村氏はまっとうにも述べている。これこそベトナム帰還兵がアメリカ国民から受けた仕打ちではないか??ベトナム帰還兵が原因不明に無気力状態となる病態に対して、補償するために無理矢理考え出された概念がPTSDであるとは、ここで何度も言ってきたことである。

 精神医療の専門家にしてこうだもの、週刊朝日編集部にもっと真相と深層を追えといっても無理だと諦めるしかない。

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