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子供の食事

2013-10-07 | 料理
ファストフード、コンビニ、中食……何がよくて、何が悪いのか?
子供のためには、愛情をこめた手料理がいいに決まっている。

わかってはいるが、忙しくて毎日、手料理とはいかないから、私たちはつい外食産業に頼っ てしまう……。
そこで、その弊害を女子栄養大学教授の武見ゆかり先生に聞いてみた。
武見先生は、食のあり方を社会環境も含めて考察し、よりよい食習慣の形 成と定着を目指す「食生態学」の研究者だ。

実際のところ、ファストフードやコンビニや中食の調理品(以下、「外食調理品」と表記)の何が問題なのだろうか?

「外食調理品は、そもそも不特定多数の人々に“満足してもらうこと”を目的につくって販売されています。
そのため、どうしてもより多くの人が手にと りやすいような人気の高いメニューが多くなります。
揚げ物や肉料理が中心で、野菜は少なめ。味付けは、冷めてもおいしく食べられるように濃いめです。
そし てボリュームは多め。結果、多くの人にとってカロリーの取りすぎとなり、個々人に合わせた栄養バランスが良い食事とはなりにくいのです」
バランスの良い食事と比較したとき、外食調理品で過剰摂取となるのは食塩と脂肪。
この2つを取りすぎると高血圧や脂質異常症となり、「動脈硬化」を招きやすくなる。
厚生労働省の調査によると、2008年の日本人の死因の1位はがん、2位は心疾患、3位は脳血管疾患だ。動脈硬化は、この死因の2位と3位を引き起こす主な要因となっている。
つまり、日本人が食事で最も控えないといけない食塩と脂肪を取りすぎてしまうことが大問題なのだ。
逆に、外食調理品で絶対的に不足するのが、野菜からの摂取が期待される食物繊維やビタミン、ミネラルなどの栄養素。食物繊維は余分なコレステロールなどの吸収を妨げ、体外に排出する働きがある。生活習慣病予防にもつながるといわれている。
ビタミンの中でも野菜にとくに多く含まれるのがビタミンAとC。ビタミンAは細胞分裂を助ける働きがあり、不足すると成長障害を引き起こす。
また、 ビタミンCはコラーゲンの生成を助ける働きを持つ。
丈夫な血管や筋肉、皮膚などをつくるにはコラーゲンが不可欠で、どちらも成長期の子供には欠かせない栄 養素。

成長に欠かせないミネラルの代表選手としては、骨や歯などを形成するカルシウムがある。しかし外食、とくに加工食品には、カルシウムの吸収を阻害するリンなどの食品添加物が使われている場合が多い。

「世の中には多種多様な食品添加物があり、健康への悪影響も報告されています。その一方で加工食品を安全に家庭に届けるために、食品添加物が重要な 役割を果たしているのも事実。使わないほうが、かえって食の安全が脅かされるという側面もあるわけです。ただ、家庭で料理をつくれば食品添加物を避けられ ますから、特に子供が小さいうちは、あまり外食調理品に頼らないことが望ましいでしょう」
しかし、外食調理品がここまで身近にあふれている現代において、まったく利用しないというのは、どだい無理な話。そこで武見先生が提案するのは、使 用の頻度を減らすこと。「栄養バランスが偏っていたり、食品添加物が入った食べ物を取ったからといって、すぐに悪影響が出ることはありません。そういった 食事が長く積み重なることで初めて健康に影響が出てくるのです。
ですから、頻度を減らせばいいのです」

どのくらいの頻度なら大丈夫なのか。武見先生の感覚では、「せいぜい週に1、2回くらい」が目安。基本的には毎日、手づくりを前提に努力する。だが、無理をしすぎて息切れしないように、週に1、2回くらいは手抜きをさせてもらう。
それがかなわない場合には、利用の仕方を工夫する。1男1女の子育てをしながら研究活動を続けてきた武見先生は、忙しいときには惣菜を買って食卓に 出すこともあったという。
しかし、利用する際は何かしら一手間を加えるようにしていたという。また、出すときには買ってきたままの容器では出さず、必ず皿 に盛り付けることも大事。
「とんかつならブロッコリーやキャベツ、空揚げなら大根おろしと切ったレモンを添えてみる。サラダもドレッシングの味が濃いと感じたら、キュウリや ブロッコリー、ニンジンなどを切って加え野菜量を増やして、味を薄めるように調整したり、おみそ汁だけはつくって出したり。一から手作りするよりは楽です し、栄養バランスも改善できます」

このように手を加えることには、栄養バランスを整える以外にも大きな意味があるという。それは子供の“食事観”を健全に育成することだ。
どんな内容 の食事がいいか子供にイメージさせるとき、日本の伝統的な食文化である「一汁三菜」を思い浮かべるか、菓子パンと清涼飲料水のセットを思い浮かべるかでは 大きな違いがある。

「食事の絵を描いてもらう『食事スケッチ法』という調査を埼玉県の小学5年生を対象に行ったことがあります。
すると、おもしろい結果が出ました。子 供にはまず、『今晩はどんな夕食だったらいいと思う?』と理想のメニューを描いてもらいます。
次に、『では昨日の夕食はどんなだった?』と描いてもらう と、2枚の絵はとても似ているのです(笑)。
これは、人は自分が体験したこと以上のイメージは描けないということを示しています。

これまでの食事内容が、 その人の食事観を形成し、『何を食べたいか』という食事の選択にも影響を与えるというわけです」
子供はいずれ親元を離れて、自分で料理をつくり、あるいは外食を利用して食べるようになる。
そのときにきちんとバランスのいい食事を選択できるかどうかは、子供時代の食生活にかかっているのだ。
実際、こんなデータもある。武見先生は数年前、大正大学人間学部の長谷川智子先生らと共に、埼玉県内の市立中学生と、都内の私立大学に通う大学生の計40人に、1日3食何を食べたか食事の内容を撮影してもらう「写真法」と呼ばれる調査を行った。
その結果、たとえば1つの食事において「主食が2品以上のみ」という取り合わせの悪い食事をしていた者が中学生で30%、大学生で10%いた。これ に炭酸飲料など糖分が多い飲料を摂取していた者も合わせると、中学生の75%、大学生の40%もが不適切な食生活を送っていることがわかった。

「『いった い、これが食事といえるのだろうか?』と思うような写真がたくさんあって、正直驚きました。日本の食卓は、いまや荒廃の一途をたどっているのです」
その一方、武見先生はこうも言う。「私は東大で栄養学概論を教えているのですが、授業の中で学生に『実物大そのまんま料理カード』という教材を使っ て、自分が食べたい1食分のメニューを考えてもらったことがあります。すると、しっかり一汁三菜の絵を組み立てる学生が少なくないのです。

やはり家庭で しっかりと食べさせてもらってきた子たちが、成績優秀に育って東大に入ってきている。そういう印象を持ちました」
子供が料理上手になるかどうかにも、食事観が大きく影響している。
「外食調理品ばかり食べている子供は、食事は食材を調理して食べるものという発想自体が浮かびません。親が家庭で料理をしていると、子供は自然とそ れを見ながら観察学習をして知恵やスキルを習得する。

その反対に、外食調理品を買って食べていると、親が家庭で調理する姿を見せないことになります。つま り、それだけ学習の機会が減ってしまうのです」
それを裏付ける報告もある。

武見先生が女子栄養大学の駒場千佳子先生らと入学したばかりの女子大生を対象に行った調査では、調理が得意な学生は、小 学校時代に親が調理する姿を身近に見ていて、そばで会話をしたりしていることがわかった。自然と手伝いもたくさんする。また母親だけでなく、父親や祖母も 調理をするなど、料理に関わる人が多い家庭環境だったというのも特徴だ。
「調理力が低いと、当然のことですが加工食品を利用する頻度が高くなります。加工食品の利用頻度が高い人ほど、食事が不規則になったり、家族揃っての食事が少ないなど、好ましくない食習慣に陥りがちになるのです」
もう1つ、外食調理品にからむ問題として、「孤食」がある。外食産業の発展とともに1980年代ごろからクローズアップされてきた。習い事や塾に通 う子供と、共働きや残業などで帰宅が遅い親の生活サイクルがかみ合わないため、家族が揃って食事をすることが難しくなり、子供1人、あるいは子供だけの食 事が増えてきているのだ。
「孤食」になると何が問題なのだろうか。1つには、食品や料理の数が少なくなり、したがって体験する料理や味も単一になりがち、またコンビニ弁当やインスタント食品など簡便なものの利用も増える。

それに加えて、家族団らんの食卓が持つ教育機能が失われる危険性もある。
たとえば、ご飯茶わんは左、みそ汁わんは右に置く。
食べるときは、みそ汁、ご飯、おかずを交互に食べて、おかずなど単品だけ先に食べ終えない。よく かんで食べる。肘をついて食べてはいけない――。これら昔からよく言われていた体にいい食べ方や食事のマナーは、一緒に食事をすることで、自然に観察学習 され伝わっていた。

それが親から子へ伝わらなくなってしまうのだ。
「米ミネソタ大学の研究で、中高生を対象に、家族と一緒に食事をする頻度と食物摂取内容の関連を調べたものがあります。
家族と一緒に食事をする機会 が週7回以上の子と週3~6回、1~2回、0回の子を比べると、回数の多かった順に野菜や果物など健康にいいといわれている食べ物の摂取量が多いことがわ かりました。

さらに5年後に追跡調査を行ったところ、やはり中高生の頃に家族との共食回数の多かった子のほうが、相変わらず野菜と果物の摂取量が多いとい う結果が出たのです」
アメリカでは、高校を卒業すると親元を離れるのが一般的だ。追跡調査をした時期は20歳前後なので、親元を離れていたと考えられる。

つまり、自分で 栄養バランスのいい食事を選択できているということだ。親が「野菜を食べなさい」と子供に言っていたかどうかはわからないものの、一緒に食事をすることで 好ましい食習慣が身に付くようになるというわけだ。
「お父さんもお母さんも忙しいので、みんなが揃って食べるのは難しいかもしれません。ただ、誰かしらが一緒に食べる。

子供1人で食べさせることは避けてほしいと思います」
そして、みんなが揃う食事は、とびきり楽しい時間にする。「みんなで一緒に食べるとおいしい」「楽しい」と思えるような“共食観”を育てることが大切だという。
「20年くらい前になるのですが、子供の共食観を調査したことがあります。するとやはり、毎日のように家族で食べている子は『一緒に食べたい』と言 うのです。一緒に食べる頻度が減っていくと、だんだん『どちらでもいい』と回答する子が増えてくる。

しかし、週に1回くらいしか食べていない子の中にも、 『一緒に食べることは大切だから、なるべく毎日揃って食べたい』という子がいるのです。その子に詳しく理由を聞いたら、『一緒のときは楽しいから』『めっ たに一緒に食べられないから、大切にしたい』と話してくれました。回数ではなく、質が大切なのです」
では、質を上げるために必要なこととは何か? 武見先生はこう言う。
「まず、家族団らんの食卓では小言をやめる。学校や勉強のことなど親から聞きたいことがあっても、そこはグッと我慢。親は聞き役に回り、子供が自然 と話したくなるような雰囲気づくりに努めるのです。これを私の研究室では『自発的コミュニケーション』と言い、助教の衞藤久美先生が研究していますが、彼 女の調査によると、子供が食事中に自発的にコミュニケーションを取っていると、栄養の摂取状況や、食事づくりの手伝いなどの食行動、家族関係、QOL(ク オリティー・オブ・ライフ=生活の質)も良好であることがわかりました」
食卓での会話を楽しいものにするには、「料理づくりから子供を参加させるのも1つの手」。たとえばギョーザだったら、包むのを手伝ってもらう。

食べ るときに「これは○○ちゃんが包んでくれたのよ」と言えば、会話のきっかけになるし、子供にとっても思い入れのある食事になる。
材料を一緒に買い出しに 行って選ばせたり、配膳を手伝わせたり、子供が関われることはたくさんある。
「野菜嫌いの子でも、自分が調理した野菜はおいしく食べられるという話をよく 聞きます。
食事はつくる過程も含めておいしいと感じるもの。外食調理品を利用すると、せっかくのチャンスを失います。
それは本当にもったいないことなんで すよ」

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