【ストーリー】
黒船の大挙襲来に江戸を離れる者が相次ぐ中、貢は若年寄・松平玄蕃頭の娘に絵を教えていた。
開国派の論客として知られる松平に、日本の将来を担う人物として密かに期待を寄せる貢。
だが松平の本当の姿は貢の期待とは正反対の大悪党で「妾の寮から庶民の家が見えて目障りだ」という理由だけで庶民を立ち退かせ、結託している根岸屋に家を取り壊させていた(表向きは黒船対策)。
そんな中、飾り職人・鶴吉は立ち退き命令を断固拒否して家に居座り続けようとしたので、根岸屋の番頭たちによって阿片を大量に飲まされ殺されてしまう。
この一件が仕事になるか否か話し合う三兄弟であったが、突然貢は「仕事が嫌になった」と言い出す。
小難しいことを言う貢に腹を立てる大吉だったが、主水は貢の考えに一定の理解を示す。
そんな中、おきんが引き取っていた鶴吉の娘・おはつは父親の仇を探すべく根岸屋に行ってしまった。
おはつは仕留人への依頼を残していたが、松平の娘に絵を教えた縁、開国派の松平に寄せる期待など様々な思いを持つ貢はやはり仕事をやめると言う。
翌日、仲間たちから説得され、これを最後の仕事にするということを条件に、貢も仕事に参加。
松平の寮に乗り込んだ仕留人たちであったが、貢の身に悲劇が降り掛かろうとしていた。
【知ってるゲスト】
戸浦六宏、浜村純、武周暢、西崎みどり
【名シーン】
①西崎みどり初登場
↑ED歌手として、出演女優として、必殺シリーズではおなじみ西崎さんが初登場。
②貢の思い
鶴吉の一件が仕事になるか否か話し合う三兄弟。
貢「しかし俺は銭貰っても、今度の仕事は断るぜ」
主水「えっ!?」
貢「近頃何もかも嫌になってきたんだ。もう少し考えてみたい。
俺たち一体何のために生きてるのか。何のために今まで人殺しをしてきたのか」
外に出て行く貢。
主水「おい!」
大吉「けっ!何言ってやがんでぇ!
ちょいとばかり学があるかと思って訳の分からねえこと抜かしやがってよ!
何のために生きる?決まってるじゃねえか、食うためだよ!なぁ!」
主水は小屋を出て貢を追う。
主水「よう、糸井」
貢「すまん…だがな、前から考えていたことなんだ。
なぁ八丁堀、俺たちは今まで何をしてきたんだい。
世の中動いてる。
この川だってオランダやアメリカやイギリスの都・ロンドンのテームズ川にだって繋がってるんだ」
主水「なるほどなぁ…だからどうだってんだ」
貢「だから俺たちは何をしたかって言ってるんだ。
少しでも世の中よくなったか?
俺たちに殺られた奴らにだって、妻や子がいたかもしれないし、好きな奴があったかもしれないんだ」
主水「う~ん…」
↑娘を通じて松平と接点を持ったことが、貢に心の変化をもたらす。
--------------------------------------------------------------------------------
おはつは仕留人へ依頼を残していた。
主水「どうする?やるんだな?…どうなんでい?」
貢「前にも言ったろ?やめる…」
おきん「何だって!?」
貢「この仕事はもうやめだ」
大吉「どうしてだよ!?」
主水「相手が松平玄蕃頭だからか?娘に絵を教えたからか?
なぁ糸井…人にはそれぞれ生き方がある。そりゃまぁそれでいいだろう。
だがな、おめえがこの稼業に足を突っ込んだ時に、どんな腹のくくり方をした?
まぁ俺たちは人間のカスだ。しかしカスはカスなりに生き方がある。
それがこの稼業だと、おめえそう腹に決めなかったのかい。
糸井、この銭は受け取ってもらうぜ。
おめえ今日まで無事に生きてこられたのは、この銭のおかげなんだ。
おめえの体の骨の髄まで、この銭のにおいが染み込んでること忘れんなよ。
おめえ一人が格好つけようとしたってな、傍から見りゃそりゃお笑い種だぜ。えっ?」
貢「そりゃそうかもしれん。
しかしな、今度殺ろうという相手、松平玄蕃頭-
その身辺は確かに清廉潔白であると言いきれんものがあるかもしれん。
しかしな、彼の幕閣における見識、国を開こうとする勇気は今の幕府にとっちゃあ
なくてはならんものなんだ。
その人の一面だけを捉えて糾弾するのは間違ってるとは思わんか?」
大吉「何言ってやがんでい、この野郎!
その松平や根岸屋に殺された鶴吉や、犬みたいに追い立てられた連中の恨みはどう思ってんだ、おめえは!
いつからそんな腰抜けになりやがったんだよ!?」
主水「やめるんならやめるんでいいんだ。
今夜一晩ゆっくり考えてもらうぜ。
もし考えが変わらなかった時は…分かってるな…」
↑書くのも大変な長台詞を長回しで撮影。俳優さんはすごいな。
--------------------------------------------------------------------------------
一晩経ち、おきんと大吉は貢に返事を聞きに来る。
おきん「あのおはっちゃんは、やっぱり今夜松平の屋敷へ上げられる。
根岸屋はね、あの娘を貢物にするつもりなんだよ。
あの娘だけじゃない、今まで何人もの娘が上げられて…」
大吉「おきん!」
おきん「あの松平の慰み者になってるんだ」
大吉「無駄だ、もうこの野郎は…」
おきん「貢!」
貢は何も答えない。
おきん「…そうかい、行こう!」
おきんと大吉は怒って行ってしまおうとするが、それを貢は呼び止める。
貢「おい、待てよ…俺も行くよ。
だがな、八丁堀に言ってくれ。これが最後だ…最後にさせてもらうってな」
↑仕留人としての役目を果たそうとする貢。だけどその心の中はまだ揺れていた。
③貢斬られる
大吉が根岸屋を始末した物音で、松平が襲撃に気付く。
襲い掛かる松平を倒し、とどめを刺そうとする貢であったが…。
松平「分からんのか!わしを殺せば日本の夜明けが遅れるぞ!」
松平の言葉に思わず動きが止まってしまう貢。
松平「バカ者めがぁ!!」
立ち尽くす貢に、松平の刃が振り下ろされる…。
↑貢の脳内で繰り返される松平の言葉-それが貢の動きを止める。
同じ言葉を投げかけられた時、蘭兵衛さんはどうしただろうか。
↑自分が期待していた松平に斬られる貢。
期待なんかしていなければ、こんなことにはならなかったのに…。
④貢の最期
貢を運び出した仕留人達。
主水「石屋、やるんだ」
大吉「何を?」
主水「何とか生き返らせるんだ!」
大吉「そんな…」
困惑する大吉であったが、意を決して貢の心臓をマッサージする。
しばらくすると心臓が動き始め、貢が目を開けた。
主水「糸井!」
大吉「しっかりするんだ!」
貢「すまなかったな…」
その一言だけ言うと貢は絶命した。
↑深い傷を負い、意識不明の貢。
↑最後の命を使って仲間に謝罪の言葉を残す。
↑主水チーム初の殉職者・貢。
それは主水や仲間たちの心に深い悲しみを残した。
⑤貢の旅立ち
主水たちは貢に別れを告げるため、海にやって来た。
主水「糸井…みじけえ付き合いだったな…」
おきん「八丁堀…」
主水「俺たちもここで別れようぜ…今が潮時なのかもしれん。
糸井がそれを教えてくれたんだ」
大吉「八丁堀…」
主水「さあ、糸井を送ってやろうぜ。
糸井はな、これ(オランダ語の辞書)と一緒に海の向こうへ行きたかったんだ」
主水は辞書を貢の遺体の胸元に入れ、その顔を布で包む。
主水「行って来いよ、海の向こうへな…」
主水たちは貢の遺体を大海原へ放った。
⑥ラスト
主水は日米会談の警護に行くことになった。
先祖伝来の鎧兜を装備させられる主水。
せん「馬子にも衣装と言うけれど、これじゃまるで山賊じゃありませんか」
↑一話で出てきた足軽の鎧をまさか最終回で装備するとは!
↑決める時はものすごく格好良いのに、なんという不細工な顔だろう^^;
--------------------------------------------------------------------------------
↑降りしきる雪の中、おきんは何処かへ旅立った。
↑引き留める妙心尼を振り切って旅立つ大吉。
↑貢の遺体も海を漂い、旅を続けている。
↑ただ一人残った主水は今日もまた奉行所へ向かう。