坂野直子の美術批評ダイアリー

美術ジャーナリスト坂野直子(ばんのなおこ)が展覧会、個展を実際に見て批評していきます。

今年のオルセー美術館展

2014年01月29日 | 展覧会
パリ・オルセー美術館展は人気があり、これまでも多様な切り口で日本で近代美術が紹介されています。
今年の夏から開催される当展は、印象派の殿堂である当美術館の中でも印象派の誕生をテーマに、油彩約80点が紹介されます。印象派の誕生、1874年の「第1回印象派展」開催から今年で140年。
近代美術の萌芽を代表する瑞々しい作品が並びます。
中でも、掲載の作品、マネの「笛を吹く少年」(1866年)は、本展の目玉であり、鼓笛隊に扮装した少年が、黒い輪郭線で画面に際立たせる描法で、ベラスケスや日本の浮世絵に影響を受けた作品と知られています。
そして、最愛の妻を描いた日本初公開の肖像など、マネの作品が11点公開されるのも本展の魅力の一つです。
マネに始まり、モネ、ルノワール、ドガ、セザンヌら印象派の立役者となった画家たちはもちろんのこと、同時代のコローやミレー、クールベのレアリスムから、カバネル、ブグローらのアカデミズム絵画まで幅広く紹介されます。
マネは実際は印象派展に出品することはありまでんでしたが、若い前衛画家たちの精神的な支柱となって、自らも近代美術の新しい視点の裸婦像「草上の昼食」などを発表し、パリジャンたちをあっと言わせました。
本展では、モネが印象派の技法に目覚めた北フランスの雪景色の「かささぎ」は、私も好きな1点です。雪に覆われた農家の一隅をとらえた作品は、日本的な詩情を感じさせます。
また、バジ―ルの「家族の集い」は、故郷をモンペリエに近い別荘に集ったバジ―ル一族の肖像で見ごたえがあります。若き天才と評されたバジ―ルは、兵役によって命を落とし、生きていれば、印象派の発展に寄与した画家であると惜しまれています。

◆オルセー美術館展 印象派の誕生/7月9日~10月20日/国立新美術館


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