坂野直子の美術批評ダイアリー

美術ジャーナリスト坂野直子(ばんのなおこ)が展覧会、個展を実際に見て批評していきます。

ホキ美術館 静物と風景画展①

2011年05月27日 | 展覧会
昨秋、日本初の写実専門美術館として、千葉市緑区にオープンしたホキ美術館。館長の保木将夫さんが、森本草介さんの女性像にほれ込み写実絵画に開眼されてコレクションの発端となっていき、中山忠彦さん、野田弘志さんら日本を代表する写実画家の常設展示へと発展しました。「トキを超えてー静物と風景画展」は、開館記念の第2弾で、静物画と風景画にテーマを絞り、新作を含め26作家の写実絵画60点が展覧されています。テーマは、花、果物、グラスや壺、生物、動物、日本の温和な風景や、イギリス、フランスの田園風景など、一口で写実主義といっても、オランダ17世紀の静物画を思わせる重厚な作品から、アメリカのハイパーリアリズムを思わせる精緻なものまで表現の奥行きは幅広く、画家それぞれの視点が生き生きと明確に伝わってきます。
写真は、自身の作品の前でトークを行う島村信之さん(1965年~)です。作品は、「ロブスター(戦闘形態)」(2010年)です。
島村さんは日常の時間を切り取った室内の女性像などで有名ですが、お子さんが興味をもつ虫やザリガニなどにもテーマが広がったようです。なんとも迫力ある構図と形態感で、写実は古典技法が基盤となっていますが、現代的なメカニック的なとらえ方にも魅力を感じました。自身もガンダム世代ということで、童心にかえってミリタリーのプラモデルを組み立てている気分で制作されたそうです。

◆トキを超えてー静物と風景画展/5月28日~11月13日/ホキ美術館 千葉市緑区(昭和の森隣接)
  TEL 043-205-1500