ルイーズ・ブルジョワ「ママン」 2010年06月01日 | アーティスト 六本木ヒルズのランドマーク的存在となっている巨大なクモのオブジェ。パリに生まれニューヨークで活躍した美術家ルイーズ・ブルジョワの代表作です。男女の身体や性をテーマに数々の彫刻を制作してきましたが、AP通信により、昨日98歳でニューヨークで亡くなりました。 クモはわれわれを眼下に見下ろすように立っていますが、中央には卵を抱いています。尊敬する母への思いが込められています。
色が奏でる音の反響 2010年05月31日 | アーティスト 風光の美しい季節。空間に色彩のドローイングを描くようなカラーフィールドを展開しているのが曽谷朝絵(そや・あさえ)さんです。この作品は、今年の1月に資生堂ギャラリー(銀座)で開催された曽谷朝絵「鳴る色」展に出品された1作です。 カッティングシートを使って、ダイナミックにギャラリー空間を構成し、重層的で複雑な視覚をつくりだしています。曽谷さんは8年前に、平面作家の登竜門となっているVOCA展で「Bathtub」でトップの賞を受賞。窓に落ちる雨のしずくや飛行機の窓に映る視覚の面白さなど、日常的な一瞬の視覚の不思議なリアリティを絵画に映し出してきました。そこから発展して「一つの色を置くとそれに連鎖して次の色が生まれる」(曽谷さんの言葉)ように色は音を発していると感じてきたと言います。音を視覚化した空間構成により、現実と非現実のきらめきへと誘います。
三沢厚彦彫刻作品のリアリティ 2010年05月30日 | アーティスト 三沢厚彦さんの彫刻作品の続編です。ドローイングの即興的な1本の線から形のラインがつながっていく、その感性が彫刻の独自のフォルムを導いていきます。
愛すべきアニマルズ! 2010年05月30日 | アーティスト どこか愛嬌のある動物たち。擬人化でもなく、その存在感と野性味は抜群。「三沢厚彦 アニマルズinTochigi」今年の初め栃木県立美術館で開催されていた展覧会に出品した作品です。くすのきの大木から掘り出された力強いノミ跡をそのまま残し、そこに鮮やかに彩色されます。 ライオン、キリン、シカ、ウサギ、ゾウ、クマなど従来の塑像の作り方とは異なり、記憶やイメージの断片から骨格のラインがきまっていきます。彫刻はほぼ実物大に制作されます。そのイメージの元になるのが、ドローイングです。水彩画は下絵というより自由でリアリティにあふれもう一つの独立した作品となっています。
野村仁ー宇宙の時間 2010年05月23日 | アーティスト 今日は関東地方は雨模様で空を見上げても、太陽も月も見ることができませんので、それでは壮大な宇宙の時間を撮影した野村仁氏の「アナレンマ」シリーズの作品を。もう20年前の写真作品で、作家の原点となった作品です。空に現れた八の字は、合成写真ではなく、1年間にわたって同じ場所で定期的に太陽を撮影して得られた実写なのです。太陽と地球の交信、われわれが経験しえない断面で時間を切り取ることで、美しくシンプルな視覚化へと結びついたのです。
林茂樹ーセラミックアートの可能性 2010年05月21日 | アーティスト 一目見て気になる作品でした。材質感と独特の色合いとハイブリットな異種混合の感覚がある人体表現。SF的な世界とアニメチック。林茂樹さんはセラミックアートの素材と表現の可能性を広げようと、鋳込み表現という緻密な鋳造技術とパーツの組み合わせによるシリーズを展開しています。パーツ的な組み合わせが、現代のフィギュアに通じるものも感じさせ、今日的な視野が見出せます。4月に開催されたアートフェア東京に出品。伝統的な技法のもつ深く温かみのある肌理のもつ可能性が楽しみです。
80年代ニューヨークを疾走したキース・ヘリング 2010年05月16日 | アーティスト バスキアとともニューヨークの地下鉄や路地の壁に描いたグラフィティで一躍脚光を浴びたキース・へリング。ジグソーパズルのように無数の人型が組み合わされた「無題(ピープル)」1985の作品です。山梨県北杜市、八ヶ岳を望む標高1000メートルに建つ中村キース・へリング美術館に所蔵されている代表作です。パンクロック全盛期の路上パフォーマンス的な落書きアートは閉塞しがちな若者の心をとらえ、キッチュ(俗)であること、バッドペインティングを生きる証しとしたのです。貧困ではあるが夢をアートへと爆発的なエネルギーをぶつけていきます。この絵も元は帆布に描かれた大作で、美術館や画廊に飾るためにキャンバスに移し替えられています。彼らの人気はニューヨークのアートマーケットの寵児へと押し上げられていくのです。
織田廣喜氏アトリエの思い出 2010年04月23日 | アーティスト もう20年近く前になるので、フリーライターとして始めた頃のこと、『美術の窓』の一井社長から、技法講座でアトリエ訪問の記事をシリーズで書かせて頂いた。『美術の窓』というと若手から中堅まで前線で活躍する作家の技法公開に定評があり技法講座は人気シリーズである。私が訪問させていただいた方々は、野田弘志氏、島田章三氏、奥谷博氏ら日本美術を牽引してきた先生方ばかりで、今思えば、本当に有難い経験をさせて頂いた。その中で二科会のリーダー織田廣喜氏のご自宅の2階の和室をアトリエにした部屋での取材は、本当に印象深いものであった。パリの抒情、女性を描いて人気作家であるが、本当に気さくな笑顔がすてきな方である。画架の周辺に積み上げられた小作品に埋もれながら手を動かし「色彩は常にパレットでつくってなまな色を使わないように」というのは、あのノスタルジックな独特の夕映えに似た叙情的色調をつくりだした錬金術の賜物であろう。技法と表現は一体化して一つの世界をつくる。そして最後に画面の女性像の位置が動いた。その修正が早かったこと。練達の技そのものであった。
彫刻家・保井智貴氏との出会い 2010年04月19日 | アーティスト 伝統的仏像彫刻の技法である乾漆による女性像にレトロタッチの洋服、彩色や螺鈿などこまやかな装飾とシンプルなデザイン、琳派を思わせたり、正面性を重視する立ち姿にプリミティヴな詩情が・・・。MEGUMI OGITA GALLERYでの作品との出合いは、作家に会いたいと思わせた。インタビュー記事を申込み、Okを頂きアトリエへ。昨年の夏であった。そこは一軒家にアーティストが数人アトリエとして部屋を借りている。「物静かな好青年という感じ」これが第一印象だが、やはりどこか作品と共通する神秘的な雰囲気が。気鋭のアーティスト(30代半ばが多い)の年代より(少し)上の(世代が違うでしょう)私はすでに年上女性の目線で初対面。ほとんどシナリオを頭に描きながら聞くことが多いのだが、保井さんは話してくれるかなとちょっと不安も覗いた。でもその語り口調は丁寧で優しく本当に実直そのものだった。(こういうときジャーナリスト冥利に尽きるのだ)今年の2月には"calm"という展覧会をファッションデザイナーとサウンドデザイナーとのコラボで東京・青山のBOOK GALLERY WALLでにおいて開催した。今後の動向を見守りたいアーティストの一人だ。
椿会展ー塩田千春氏と石内都氏対談 2010年04月17日 | アーティスト 石内都氏・写真家の名前は母の旧姓であるという。その母の遺品を撮り続けていることは有名であるが、近年では「ひろしま」の遺品、残像をわれわれに提示する。戦後65年経つが、現在も被爆者の方々の遺品に出合うと、不在であるはずの何かが作家の視線を誘う。デジタルは撮らない。写真は匂いや手触り感も表せるのではないか。個人の傷、被害、加害ではなく普遍的な負のエネルギーを作品化する二人の作家のトークは、現代という社会に積極的にコミットしていく人間の本質的なエネルギーを感じさせるものがある。