漫筆日記・「噂と樽」

寝言のような、アクビのような・・・

火事と喧嘩は江戸の華

2016年10月01日 | 歴史
昔の講談によく出てきた言葉、
「火事と喧嘩は江戸の花 」を辞書で引くと、

「江戸は大火事が多くて火消しの働きぶりがはなばなしかったことと、
江戸っ子は気が早いため派手な喧嘩が多かったことをいった言葉」
と出て来る。

まぁ、公式見解としてはそうかもしれないが、
私自身は、昔の江戸の町はあまりに火事と喧嘩が多かったため、

当時の人々が自虐的に言っていたのかな、と思っていた。

処が、故・山本夏彦氏の随筆の中にこんな件(くだり)がある。

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福沢諭吉の処へ来た客人のいわく。

火事は災難ではなく仕合せである。
九尺二間の裏だなに住んで車ひきをしている男の暮しは楽でない。

半鐘ひとたび鳴ってまる焼けになったろころで、
もともと長屋は借家で夜具は貸蒲団屋のもので、人力車は親方の、半天は旦那の仕着せ何一つ自分のものはない。

それでいて焼ければ罹災救助の金がもらえる。
仕事は湧くようにある。

灰かき地ならし仮普請の手伝い、
そこに握りめしあり、かしこに酒あり、たまっていた家賃、米屋の払いなどは火事とともに消えうせる。

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これは、明治の東京の話だが、

「火事と喧嘩は・・・」が、
ヤケクソから出た言葉でなく、庶民の生活実感から出ている、と、

これを読んで納得したのです。






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