漫筆日記・「噂と樽」

寝言のような、アクビのような・・・

「でんち」とは、「殿中羽織」の略訛なり

2016年11月02日 | 言葉遊び
ニ・三日前からめっきり寒くなって、
夕べはとうとう押し入れからダウンベストを引っ張り出した。

着ながら、我が同居人ドノに、
「コレ、なぜ、ダウンベストと言うの?」と訊いたら、

「なかに鳥の羽が入ってるからでしょ、
でも、それは買った時の値段からみて、綿じゃないの」とのご託宣。

なら、今書いた文章は訂正し、
「夕べ、押し入れから綿入りのチョッキを引っ張り出した」とする。

ウン、待てよ、
「綿入れ」に対し「チョッキ」では、言葉としてバランスが悪いから、

「綿入れのでんち」か。

あ、「でんち」は私の田舎、滋賀の言い方で、
関東の方にも分かるように言うと、「ちゃんちゃんこ」です。

辞書で【ちゃんちゃんこ 】を引いてみると、
「袖なし羽織。綿入れが多い。」とある。

そうかぁ、でもこれ、羽織じゃないよな、
なんたって、前の合わせがファスナーだからな、やっぱりベストか。

ちなみに、
【でんち】は、

ネット辞書には無かったけど、
手元の「上方語源辞典」にはありました。


  ~~~~~~~~~~~~~~~

【でんち】
袖なし羽織。多く子供用にいうが、大人用にもいう。
ちゃんちゃんこ。

  ~~~~~~~~~~~~~~~~

{ 語源 }として、
「殿中羽織の略訛」とあり、

美濃・三河および徳島ではデンチューという
、ともあります。

「略訛」と云うのは、
「なまりを伴う言葉の省略」のことですから、

殿中羽織を縮めて言ううちに「でんち」となったものらしい。

ついでに「殿中」も引いときましょうかね。

  ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

【殿中】でんちゅう

1 御殿の中。
2 江戸時代に流行した木綿の袖なし羽織。
  殿中羽織。

  ~~~~~~~~~~~~~~~~~~

なるほどね、

要するに「でんち」、「でんちゅー」とは、
「部屋着用、綿入れの羽織」のことなんですね、

そう云えば、
むかし着てた「でんち」は前を紐で結んでましたね。

もちろん部屋着ったって、
それで庭に出て、雪だるま作ったっていいんだけど。

昔、童謡紹介の絵本で、
雪やこんこと歌う「ゆき」や「たき火」のような冬の歌には、

でんちを着た子供らが
雪遊びをしている挿絵が多かったような記憶がある。

尚、蛇足を承知で付け加えれば、

「袖なし羽織」と云うのは、
吉川英治原作、宮本武蔵で、ライバル役の佐々木小次郎が着てるアレです。

映画やテレビで佐々木小次郎は二枚目が演じる役、

昔なら、鶴田浩二や高倉健、
大河ドラマでは、たしかTOKIOの松岡君がやってたかな。

二枚目の役ですからネ、
袖なし羽織と云っても、豪華な絹製、デザインもしゃれてます。

木綿製で、
おもに子供や農婦が着るような「でんち」とはだいぶ違う。 

形式としては同じでも、印象は全く異なりますね。 (笑)








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