
ワイパーは子供の頃、長老から一人だけ呼ばれて、ある話を聞かされていた。
ワイパー、お前の遠い先祖大戦士カルガラが、故郷をどうしても取り戻したかった理由がもう一つある・・・。
それこそが、カルガラにとって一番の無念。
いいか、大戦士カルガラには、1人の親友がいたのだ。
400年前、カルガラの許を訪れた彼の名前は・・・モンブラン・ノーランド。
むかしむかしの物語。
それは今から400年も昔、「偉大なる航路(グランドライン)」に「ジャヤ」という島があった。
その島には、怪物と恐れられた怪力を持つ男「シャンドラの大戦士カルガラ」と呼ばれる男がいて、容易に島に近付くことすら出来なかった。

だが、海円暦1122年頃のジャヤでは、原因不明の疫病が流行り、人が次々と病に冒されて死に、作物も枯れ果て、大地に血が流れるばかりであった。
ジャヤの「シャンドラ」の人々は、これは”大地の呪い”であると考え、呪いを収める為に「カシ神様」を通じて神に生贄を捧げる儀式を執り行うこととなった。
それが、偉大なる神官を通じた”神のお告げ”であり、その言葉を最後に神官は死んだ。
儀式の生贄には、村で一番美しい娘「ムース」が選ばれた。
ムースは、「私でお役に立てるのなら喜んでこの身を。泣かないでママ。私は太陽の神に迎えられるのよ。
生贄に選ばれるのは幸福な事、この命が村の人達の為になるなら私は嬉しい。今まで育ててくれてありがとう、ママ」と気丈に振舞った。

シャンディアの村の若者、セトも儀式を待たずして「悪霊のアザ」が体に浮かんだ。こうなっては助かる見込みはない。
村を飛び出したセトは、森の奥で一人死を恐怖して泣いていたところに、狩りから戻った大戦士カルガラに出会った。
セトは「おれもいつか・・・あなたみたいになりたかった・・・!!!勇気ある戦士になって、この地を守り、戦いたかった!!
こんなので、死にたくないよ!!!!」と訴えたが、島の守護戦士カルガラにも、病はどうする事もできなかった。
村は、死を食い止める為の儀式の準備を粛々と整えるばかりであった。
当時、「北の海・ノースブルー」の「ルブニール王国」の探検船提督であった「モンブラン・ノーランド」が率いる探検船が3度目の航海で、2年の航海
の後に、ジャヤの海域に到達していた。
グランドラインの航海は、ノースブルーの比ではなく、嵐に次ぐ嵐、大渦に急に天候変更に苦しめられながらも、新しい島を探していた。
この困難な航海を2年も維持できていたのは、屈強な精神と肉体を持つ「モンブラン・クリケット」のおかげであった。
食糧がなくなれば単身海に入って、巨大海獣を刀1本で仕留めくくるうような大胆で、反面、キチンと航海日誌をつける几帳面さも持ち合わせた頼れる人物であった。

海円暦1122年5月21日、その日も船はグランドライン特有の大嵐を見舞われていた。
ノーランドは、嵐の轟音の中に、なんとも美しい鐘の音を聞いて、その音に導かれるようにして新しい島を発見し、上陸に成功した。
その鐘の音を聞いたのはノーランドだけであったが、上陸してみると、島中に響き渡る荘厳で繊細、なんとも美しい鐘の音が響き渡っているのを皆が聞いた。
その鐘が、このジャヤの島の儀式の為の鐘の音であることを、ノーランドは知る由もない。
島に分け入ったノーランド達がで目にしたのは、疫病である「樹熱(きねつ)に侵されて瀕死となった人(セト)や畑、自然だった。
ノーランドは、船員達に船に積んである「コニーネ」という樹病のワクチンを打って、島の観察を継続した。
ノーランド達の上陸に対して、大戦士カルガラが現れなかったのは、くしくもその日が生贄を神に捧げる神事の日であったからであった。
ムースが生贄の祭壇に縛り付け、太陽の神、雨の神、森の神、大地の神に祈りを捧げると、巨大な大蛇であるカシ神様が祭壇に
近づいてきた。

村人達が見守る中、今まさに娘がカシ神様に飲み込まれようとした、その時・・!!!
モンブラン・ノーランドが生贄の祭壇に躍り出て、カシ神様をぶった斬った。

村人達は阿鼻叫喚、悲鳴にも似た叫び声をあげて、神殺しに驚愕し、神の怒りと呪いに恐れ慄き、すぐに娘を殺して祭壇に血を祭らねば、村人全員の命がない!!!とパニックに陥った。
ノーランドは、生贄の娘に「怖かったろう・・・もう大丈夫!!!死ぬ必要などない!!!」と抱き寄せると、娘ムースは恐怖と緊張の糸が切れて、大泣きした。
生贄を助け、神を殺したノーランドを、大戦士カルガラは鬼の形相で睨んでいた。

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