
居酒屋は、ベラミー海賊団による、ルフィとゾロの公開リンチの場となった。
二人は、どう殴られようとも、どう侮辱されようとも真っ直ぐ前を見て、決して抗うことなくされるがままになっていた。
そして二人は、何度倒れても何度でも立ち上がった。

二人のその姿にナミはたまらず叫ぶ。
「ルフィ!!ゾロ!!!何やってんのよ、こんな奴ら相手にっ!!戦ってよ、ぶっ飛ばしちゃえばいいじゃない!!」
だが、二人は頑として手をださない。
小心者の弱小海賊が、敵わない敵を前にプライドを捨て、ケンカを買うこともできずに無抵抗に殴られることを選んだ、そう見られて罵倒されても、それでも二人は無言を貫き、殴られるままに殴られ続けた。

サーキースはナミに「おい女!そんな奴についていても先の時代に進めねェぜ、おれがお前を買ってやろうか」と声をかけたところで、ナミはキレた。
「私を買うですって?お生憎!!あんた達みたいな小物チームに私は勿体ないわ!!!」と言い返した為、再び、酒屋は爆笑に包まれた。
ベラミーは雑魚すぎる"麦わらの一味"にトドメを指すことなく、ここから立ち去るように言い捨てた。
悔し涙を滲ませながら倒れた二人を引きずって店の外に出たナミに、声をかけた男がいた。
「"空島"はあるぜ・・・。」
驚いたナミは、足を止めてその声の主を見ると、先ほど酒屋でルフィと競い合っていた黒ひげの大男だった。
男は「何を悔しがるんだ、ねーちゃん。今の戦いはそいつらの勝ちだぜ。」と言う。

ルフィは、シャンクスとエースの事を思い出していた。
尊敬する彼らと約束してきた。海賊の高みへと昇り、いつか彼らを追い越し海賊王になることを。
だから、今ここで堕ちるわけにはいかなかった。

「おめェの啖呵もたいしたモンだったぞ!!肝っ玉の座った女だ!!ゼハハハ。あいつらの言う"新時代"ってのはクソだ。
海賊が夢を見る時代が終わるって・・・!?えェ!!?オイ!!!!人の夢は!!! 終わらねェ!!!!」

黙ったまま真っ直ぐにその男を見るルフィに、大男もまっすぐルフィを見て言葉を続けた。
「そうだろ!!? 人を凌ぐってのも楽じゃねェ!!!笑われていこうじゃねェか、高みを目指せば出す拳の見つからねェケンカもあるもんだ!!!ゼハハハ!!!」

ルフィは口を一文字に結んだまま、何も答えはしなかった。
大男は気にせず「行けるといいな、"空島"へよ。ゼハハハハハ」と愉快そうに笑いながら立ち去って行った。

男が背を向けると、ルフィとゾロもくるりと背を向けて、歩き出した。
ナミが「ねぇ・・あいつら"空島"について何か知ってたのかも・・・何者かしら?」とルフィに問うと、ルフィは「さァ・・・それに・・・"あいつ"じゃねェ・・・」とつぶやくと、ゾロが「"あいつら"だ・・・たぶんな」と付け加えた。
その頃、港でルフィ達の帰りを待つメリー号に、聞き覚えのある歌声が近づいてきていた。
♪サールベージー サルベージー サールベージーサルベージー・・・
ルフィとゾロは、ここで「黒ひげ」と出会い、黒ひげとその仲間から"何かただならぬもの"を感じているようです。
ルフィは黒ひげと食の好みはあわずとも、海賊として夢を持って生きる事、その器に関する思いは合うようです。
黒ひげの抱く「高み」とは「夢」とは何なのかはここでは現れませんが、「夢」を追ったその先で、ルフィと黒ひげがぶつかるのは必須の予感がします。
またゾロと、黒ひげの仲間がぶつかるの予感も含まれているような気がします。
夢を追うルフィと黒ひげ、その黒ひげを追うエース。黒ひげとエースのボスである「白ひげ」の展開に期待!!
再び「黒ひげ」とルフィが出会うのは、もう少し後になります。