
戦場はこの老兵の登場に驚きどよめいた。かの海軍の英雄ガープが守りに加わるのか!!
白ひげは「名前に惑われるな!ただの老兵だ!!!」と怒鳴った。
白ひげもまた、ガーブの世代であり、老兵である。
大混乱の戦場を見渡す処刑台の上で、エースは体を折り畳むようにして頭をさげていた。
ガープは、エースのその様子を気にかけた。

エースは昔を思い出していた。
山から降りて町へ出ると、どの人もこの人もゴールド・ロジャーの事を知っていて、世の中に海賊があふれ、人々が辛い生活を強いられているのは全て海賊王ゴールド・ロジャーのせいである、と口を揃えて言う。アレは生まれてこなければよかった人間なんだ、とんでもないクズ野郎、生きていても迷惑、死んでも大迷惑、世界最低のゴミだ・・・そんな話ばかりだった。誰一人としてゴールド・ロジャーをよく言う人なんていなかった。

自分の父親が、世界最低のクズだと言われた幼きエースは、自分の血に苦悩し、荒れた。
一人で悩むエースに声をかけたのは、育ての親ガープだった。
エースはガープに訊いた。
「ジジィには孫がいるんだろう?・・・そいつは・・・幸せそうか?」
「ああルフィか。元気に育っとるわい」
「・・・・ジジィ、おれは・・・生まれてきてもよかったのかな・・・」

大きな十字架を背負わされて生まれた子供に、ガープは「そりゃおめぇ・・・生きてみればわかる」としか答えてやれなかった。
この子が生きるその先に、もっと大きな苦難が待ち受けている事もガープには予測がついていたが、それでも強く生きる子になってほしかった。
エースを”生かした”張本人として、生かしたその先で、エースの処刑に立ち会うガープの心境は
誰の想像も及ばない。

今、海賊として、白ひげ海賊団の一員として生きたエースの目の前では大勢の海賊達が、弟がその命を懸けて救出に駆け付けてくれている・・・、皆が口々にエースの名を呼ぶ声が聞こえる・・。

エースは泣いていた。
「くそ・・・!おれは歪んでる!!!こんな時に・・・オヤジが!弟が!!仲間達が!!血を流して倒れて行くのに・・!!!おれは嬉しくて・・!!!涙がとまらねェ、今になって命が・・・惜しい!!!」

ガープはその言葉に目を閉じた。
今、処刑を目前にして、自分の命の大切さを、生きることの意義を、家族や仲間の大切さを知ったエースを、生きる喜びを知ったエースを生かしてやりたいのは家族として当然のこと、だがガープは海軍である。

戦況が一変したのは、白ひげがその病に体が耐えきれずに吐血した時だった。
白ひげの一番の敵は、大将達ではなく自分自身の病である。

マルコは、一番恐れていた事態に、目の前の黄ザルを放置して白ひげの元へ駆けつけようとしたが、戦いから目を逸らした隙を逃す大将黄ザルではない。マルコはその背を光ビームで刺され、不死鳥への変化を止めるべく海楼石の手錠で拘束された。
青キジと戦っていたダイヤモンド・ジョズも白ひげに気を取られた一瞬の隙にその身を凍らされて氷像と化して倒れた。
そして、白ひげ自身も赤犬のマグマの拳をまともに受けてその身を焦がした。

白ひげ海賊団がピンチに陥った頃、ルフィはイワンコフにもう一度テンションホルモンを打つよう頼んでいた。
だがイワンコフはそれを了承するわけにはいかなかった。テンション・ホルモンは治療ではなく、体を騙しているだけのこと、猛毒によって死の淵まで行き、何度もテンションホルモンを打っているルフィにこれ以上打つと、副作用で命を落とす可能性が高いのだ。
だが、ルフィは「やるだけやって死ぬならいい!!今戦えなくて、もしエースを救えなかったら、おれは後で・・・死にたくなる!!!今・・・戦う力をおれにくれ!!!!」と訴えた。

イワンコフは、ドラゴンの為にもルフィを死なせるわけにはいかなかったが・・・ルフィの強い意志の前に屈し「勝手にしやがれェ!!!」とテンション・ホルモンを打ちこむと、ルフィは立ち上がると雄叫びをあげた。

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