眺めのいい部屋

人、映画、本・・・記憶の小箱の中身を文字に直す作業をしています。

『恋人たち』

2017-03-01 16:35:12 | 映画・本

かなり偏った?「ひとこと感想」その18。(結末にも触れています)

メモには、「昨夜の熊本の地震(震度7)のことが頭から離れず、何も手につかない感じで、とにかく外に出て歩こうと」とだけ。気づいたら小さな映画館の近くまで来ていて、めぐり合わせ?で観た映画だったらしい。

タイトルから連想するような内容じゃないだろうというのは、予告編からも、これまでに観た橋口監督の作品からもわかっていたことで、元々この監督さんの映画は私は苦手な方だけれど、それでも「暗闇」で「現実以外の何か」を、そのときは見ていたかったのだと思う。(単純にカップルとは言い難い3組の群像劇を観ながら、なんだか自分がシオレテいたのを思い出す)

通り魔殺人事件によって妻を失い、喪失感が拭えないまま弁護士の間を奔走し、ほとんど自暴自棄な気持ちで、日々橋梁点検の仕事を続けている男。気難しい夫とその母親との息苦しい日常の中で、たまたま出会った男に心が揺れるパート主婦。学生時代からの友人(既婚)を想い続ける、ゲイのエリート弁護士。

彼らの想い人に対する「恋心」は 、三者三様に「叶えられない」ままに終わる。けれどその過程で、自分がどういう人間であるのかに、僅かながらも気づかせられたのかもしれない・・・とも思う。

「恋心」というのは他人から見たら、或いは時を隔てて後から思い返したら、決して見てくれのイイものではない・・・と、私などは思っているけれど、たとえどのような形で終わりを迎えようとも、「想い」は何らかの形で、どこかへ届くものような気もする。

この映画に描かれた「恋」についても、相手が既に亡くなっていようと、きれいさっぱり(でもないけど)熱が冷めようと、その後も叶わぬ思いに苦しめられようと、「どこか」「何か」に届いていくような気が、私はした。

この「不条理で苦しみに満ちた現実」だけを描いているかのような映画が、私はこの監督さんの作品の中では一番ロマンチックなものが感じられて、そのせいでちょっとだけ好きなのかもしれない。(どこがロマンチック・・・と思われたらゴメンナサイ)


 

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