いや~、ここまで「キャラが立ってる」ヒロインは、実写の映画じゃなかなか見られないと思った(感嘆!)。
あっちこっちで、「ここまでイタイ主人公って・・・」「究極の勘違い女~」「眼のやり場に困る」あるいは「私もあんな風に見えてるのかと(汗)」などなど。(パンフレットでは共演俳優さんが、「(モンスターに化けたりせずに)自分自身の姿のままで、“史上最悪”の女性を演じるシャーリーズ・セロンはすごい」。)
なんでそこまで言われるかというと・・・
主人公メイビスは37歳、バツイチで恋人ナシ。故郷の田舎町から大都会ミネアポリスに出てきて、自称「作家」、実はティーン(ヤングアダルト)向け小説のゴーストライターをしているんだけれど、執筆中だったシリーズは人気が落ちて終了間近~。目下最終作を書いているものの、新作の予定は全くナシ。
鬱憤晴らしに酔いにまかせて男とつきあったりしても、目覚めたときには見るのもウンザリ。理解者は愛犬のポメラニアンのみ。慰めてくれるのはまたまたアルコール~。
そんなある朝、二日酔いで最悪気分の彼女の元へ、高校時代の元彼バディとその後結婚した妻のベスから、突然「誕生パーティ」へのお誘いメール(赤ちゃんの写真付き~)が届く。
何よこれ。
しばらくは無視して放置~を試みたものの、やっぱり気になる。気分良くない。
メイビスは突然荷物をまとめて、愛犬共々ミニクーパーに乗り込み、故郷を目指す。その昔バディが作ってくれた、90年代のヒット曲を集めた古いテープをガンガンかけながら。
バディと再び恋に落ちて、輝かしい青春時代を取り戻すんだ!
・・・と、ここまでが物語の冒頭部分。
この後も、メイビスの「周囲(つまりは現実)」の見えなさ(というか見る気がソモソモない)、トンチンカンな自己中ぶりがエンエン続く。
誰が何と言おうと、「バディは赤ん坊の世話なんかしたくない。」「結婚生活にもウンザリで、今も私のことを愛してる。」「ホントはこの町を出て、もう一度私とやり直したがってる!」と譲らない。観ている方としては、メイビスの計画の突飛さがだんだん本物の妄想?に見えてきて、薄々心配になってくる。
メイビスはなぜ、こんな「妄想」に取り憑かれているのか。
演じるのがシャーリーズ・セロンというくらいで、30代後半の今も、気合いを入れてヘアー・マニキュア・メイクしてドレス・アップすれば、彼女は人目を惹く「美女」だ。
高校時代も、美しくて何でもできる(推測)彼女は男子生徒にモテモテ?で、スター扱いされたのだろうと思う。女生徒たちは、自分勝手で他人に辛辣、情け容赦のない言い方をする彼女を嫌っていただろうけど、もしかしたら内心は彼女のようになりたいとも思っていたのかもしれない。(アメリカの典型的な“普通のティーンエイジャー”がドンナコト考えているものなのか、日本人の私にはイマイチわからないので、断言は出来ないけれど。)
その後歳月が過ぎ、彼女以外は皆それなりの社会人になっているのに、メイビスだけが今も「ヤングアダルト」のままなのは、彼女の高校時代があまりに輝いていたから。それなのにその後の人生が思ったほど甘くなかったから・・・ほんとにそれだけ?。
女子高生のような部屋のあちこちに酒の空瓶、脱ぎ散らかした服、着ているTシャツには大きなキティちゃん、長身を折りたたんで乗るのはミニ・クーパー。キメたファッションも場に合うような合わないような・・・でも手間ひまかけて着飾った分、一見「上等の女」には見えてしまう。
そんなメイビスが元々「空気を読む」気がないのはわかる。彼女は少なくとも高校時代は、そういう必要性を感じなかったのだろう。美しければ、外向的で物怖じしなければ、それだけで周囲から羨望の眼差しで見られ、「憧れの的」扱いされてしまう・・・メイビスのような女の子は、私の眼には「美の神話」の後遺症が残った人みたいに見えるのかもしれない。
一昔前(今でも?)の「女の子は美しくなければならない」という圧力は、ほとんど「神話」レベルになっていて、たまたま美しく生まれたことで、若いうちに自分を「女神」と思い込んでしまったメイビス。大人になってもそれを軌道修正できない彼女を置き去りにして、自分たちはソコソコ小さな幸せを見つけて、落ち着いてしまう大多数の人々。
でも・・・彼女にそう思い込ませた人間たち、そういう神話を用意した社会って、何なのかな~などと私は思ってしまうのだ。もちろん、いい歳して未だに(はた迷惑な)ヤングアダルトやってるメイビスもメイビスなんだけど。
映画の終盤、赤ちゃんの誕生パーティをメチャクチャにしたメイビスを、人々は痛ましそうに見つめる。私がそこに至るまでずっとバディに訊きたかったことを、メイビス自身が口にする。
「(私に気がないのなら)どうして私をここに呼んだの? どうして招待状なんてよこしたのよ!」
すると、招待しようと言ったのはバディではなく妻のベスだと判る。
ベスは、ひとり周囲から浮いて敬遠されているメイビスを「気の毒に思って」声をかけたのだと。ベスは「私の勝ちよ。」といった眼差しではなく、むしろ人の良さを感じさせる表情で「あなたのことを心配しているのよ」とでも言いたそうだった。
もちろん、それを聞いたメイビスは怒る。
見ている私は私で、善良そうなその場の人々の顔、顔、顔・・・に、曰く言いがたいモノを感じた。メイビスを見下しているとか、揶揄しているとかいった感じじゃなかったから、余計にタチが悪いと思った。
何のことはない。私もメイビス側のヤツなのだ。(容姿はこの際関係ない。)過去、痛ましそうな表情で「イタい人」を見た記憶はあんまりなくて、「痛ましそうに見られる」側の人間だったと思うけど、当然だったんだな~と(なぜか)納得した。
物語はその後も一転、また一転で、思いがけない(でも、もしかして予想通りの?)結末を迎える。ラスト直前、さすがのメイビスもギョッとするようなエピソードもあるけれど、それでも次の瞬間には「それがどーした」とでもいうように、メイビスは行動し続ける。
あらゆる「しみじみ~」に取り込まれないストーリー展開は、そういう感情を本能的に避けているメイビスという女性に相応しく、「ある種の人間は、そんなに簡単には(というか、おそらくは最後まで?)変わらないものだ。」というリアルさが、私は気に入った。
それにしても、こんな映画をエンタメとして観られる人っているのかなあ。
ヒロインを別の女優さん(たとえばキャメロン・ディアスと言った人も)が演じていたら、もっとカラッと明るいハリウッド作品になったのかもしれないという声もあったけれど、私はセロンが演じてくれて本当に良かったと思う。(私は、この女優さんの見せる表情の多彩さが好き。辛辣さ、冷酷さ、身勝手さ、バカっぽさ(笑)、寄る辺なさ、繊細さ、聡明さ、真面目さ、野暮ったさ、はたまた色っぽさ・・・。空っぽのようでいて、その実沢山の人格が隠れているような透きとおった瞳も。)
その後の展開が気になる~!
ムーマさん、ここ、同感。笑えないし、あんまり楽しくなかったです。
この映画、観た人の賛否が極端とのことですが、私はどちらでもなくて、面白いのはメイビスのキャラと単なる成長物語にしなかった結末だけじゃんと覚めていました。
>メイビスを見下しているとか、揶揄しているとかいった感じじゃなかったから、余計にタチが悪いと思った。
憐れみですかねぇ。あんな自己中、不愉快に思われて怒られて当然と思うのですが、皆さん、言葉を失っていましたね。「まあまあ」と言うような人もいなかったし。かつての女神に対して、手のひらを返したような接しよう。メイビスは、これまでにもそんな経験があっただろうと思います。
S・セロンについてのカッコ書きのところ、そのとおりだわ~(拍手)。
書いてくれて、ありがとう。
また、色々考えさせられました。
>何のことはない。私もメイビス側…過去、痛ましそうな表情で「イタい人」を見た記憶はあんまりなくて、「痛ましそうに見られる」側の人間だったと思う
ここんとこ、実はもっと突っ込んだところで拝読したかったのですが、これでも充分以上に刺激的でした。多少なりとも自意識を強めに持っていれば、かなりの人が、そこに誇張を感じながらも一様に「メイビスの側」だと感じるはずの作品だったと思います。
だから、エンタメ作品などではなく、シリアスものなんだろうと思いますよ。イタさが自分に返ってくるところがあるからこそ、彼女を突き放しきれなかったりしてくるのだろうと思います。モノは、才色兼備であろうが、市民ケーン的富であろうが、名家名門であろうが、同じことで、要は自意識と自己実現のギャップと葛藤なんだろうと思うわけです。
どうもありがとうございました。
もう大変なヒロインなの~(笑)。
もし私が同級生で、彼女を通りで見かけたら、即Uターンか避けて横道に入りたい(笑)。
でもね、「その後の展開」は面白かったです。。
彼女とは合わせ鏡?みたいな同級生(男性)が出てきたりして・・・。
メイビス(というよりシャーリーズ・セロンの、かな?)のカッコ良さ!に圧倒されるシーンもありました。
でもカラッと明るい娯楽作とは言い難い(と思う)ので、ちょっとでも元気のある時に、どうぞご覧になって下さい。
上映会でお喋り出来て満足しちゃったので、もう感想は書かないつもりになってたんですが、『ラビット・ホール』のことを考えていたら、ソッチは全然整理がつかなくて・・・。
で、気分転換に思いつくままこちらを書いてみようと(ホントえ~かげんや~)。
というわけで、なんか言葉足らずな感想でスミマセンです。
ほんとに気の向くままに書いてます。
「色々考えさせられました。」と言って頂けて、ホッとしました。
メイビスのキャラについては、私はお茶屋さんの分析・説明で、目の前がパ~っと開ける感じがしました。
こちらこそありがとうございました。
ヤマさんとこに「満腹したので書くのやめます~」って書き込もうかと思ってたんですが(ホント)
行き当たりばったり、軽~い気分で、なんとか書きました。
「もっと突っ込んだところ」を書かなくてスミマセン。
もう少し説明したかったんですが、ムーマ流ワヤクチャで収拾がつかなくなりそうで・・・(汗)。
ところで、映画とは直接関係ないんですが、昔々学生の頃、美人だったり可愛かったり・・・っていう同級生の女の子たちは、「近づいてくる(言い寄る・コクる・チヤホヤする等々)」男性たちを、普通は「迷惑(というと言葉がキツ過ぎますが)」に感じていたようでした。
「モテる」ことをソモソモあまり望まないし、名誉にも勲章にも感じない人が多かったのかもしれませんが。
なので私は、少女マンガやアニメやハリウッドの青春映画に出てくる高校クィーン?みたいな女の子の存在が、なんかヨクワカラナイんです。
ヤマさんは、高校時代人気があった女の子見てても、外見だけじゃなかったと思う・・・って言っておられたでしょ?
私は大学時代、逆に「ほんとに外見だけで人は興味持って、そのまま近付いてくるんだな~」って、可愛く見える?女友達の話聞きながらちょっと驚いたりしてました(笑)。
だからこの映画のメイビスみたいな「勘違い」っていうのも、ほんと言うとヨクワカラナイ。
そういう意味では、作り物(コメディ)っぽく見えたりもします。
なのにここまで、あーでもないこーでもないと考えたり喋ったりしてしまうのは、これもある種の普遍性を持った作品・・・っていうことなのかな~なんて、書きながら思いました。
ともあれ「大変興味深く」と言って頂けて嬉しかったです。
どうもありがとうございました。
>昔々学生の頃、美人だったり可愛かったり・・・っていう同級生の女の子たちは、「近づいてくる(言い寄る・コクる・チヤホヤする等々)」男性たちを、普通は「迷惑」に感じていたようでした。
男女問わず、モテる人は必ずそう言いますよね(笑)。
それは実際のところ迷惑に思うことが多いからでもありますが、同時に、ただ迷惑なばかりではなかったりもします。現実には、人の言葉がその言葉どおりの意味と感情しか持っていないことのほうが稀で、この場合も、迷惑なのは間違いないけれども、だからと言って「ソモソモあまり望まないし、名誉にも勲章にも感じない人が多かった」とは言えないように思いますよ。
おそらくメイビスにしても、ハイスクール時代は自ら、「モテることをソモソモあまり望まないし、名誉にも勲章にも感じない」と公言していたのではないかと思いますもん。
それと、僕が「外見だけじゃなかったと思う」と言ったのも、一番人気はっていう話であって、外見的見映えが忌避されていたわけでは決してないんですよね。ま、造作うんぬんよりもハツラツ感とか明朗さが伴ってこそというような意味合いなんですが、それにしたって、それでは一番人気にまでは至らなかったような気がします。
こういう話はやっぱりムズカシイですね。
私は世間一般をあまりに知らないし、ヤマさんは男性だから「言われる側の女の子」の実情(舞台裏?)を、そこまで間近でご覧になってたかどうか・・・(よくご存知だったらゴメンナサ~イ)。
私が知ってるのはソモソモほんの数人の話ですから、大した意味はありません。
女の子も、ひとそれぞれ感じ方は違うでしょうし。
私が先のコメントで言いたかったのは、自分はメイビスのような立場になったことがないし、身近でもほとんど見ることがなかったっていう、ただそれだけのことなんです。
だから、ハリウッドの青春ものってまったく実感が伴わない部分があるんだと。
>おそらくメイビスにしても、ハイスクール時代は自ら、「モテることをソモソモあまり望まないし、名誉にも勲章にも感じない」と公言していたのではないか
想像するとなんとなく可笑しいですね(笑)。
それにしても映画と関係ないコトに深入りしすぎました(チョット反省)。
チョットとのことなので、さして気にしてませんが、深入りしすぎなんですか?(笑)
ま、僕にしても誰にしても、「一般」などという大海を知悉しているわけではないので、当否正誤のほどは判らないのですが、僅かに知っているいくつかの事例からそんなふうなイメージを抱いているに過ぎません。
意見交換などというのは、それぞれの抱いているイメージの交換であって、必ずしも、当否や是非を問題にしているわけではないんですけどね。
ここんとこについて、男女差はないと僕が感じている部分もまた、一般化できるものとは限りませんよね。誤解を与えたのかもしれないと「チョット反省」(たは)。チョット、です(笑)。
私の「反省」はいつもほんの一瞬なので、どうぞお気になさらずに(笑)。
ヤマさんの言われた内容のせいじゃあないんです。
自分の書いたことの意味を、自分はちゃんと把握してなかったんだな・・・って、後から気づくときが私は珍しくなくて、そういうときにチョットだけショゲるというか、もうちょっと日本語が上手になりたいな~とか思うのね。
それが「反省」なんて言葉になっただけです。
お騒がせしました。
でも、お気遣い下さってどうもありがとうございました(^o^)