眺めのいい部屋

人、映画、本・・・記憶の小箱の中身を文字に直す作業をしています。

2011年に観た映画 (オフシアター外国映画編) の続き

2012-04-27 10:30:42 | 映画1年分の「ひとこと感想」2006~

『ベンダ・ビリリ!~もう一つのキンシャサの奇跡』(監督:ルノー・バレ、フローラン・ドラテュライ)

ここまで行くと、もう何も言えない・・・。

http://blog.goo.ne.jp/muma_may/e/40ce9194a68937cb96cc825af10286e3

『太陽の雫』 (監督:イシュトヴァーン・サボー 1999 ドイツ・オーストリア・ハンガリー・カナダ)

親子三代にわたる物語なので登場人物たちの顔を見分けたり、関係を思い出したりするのに集中力が必要だったけれど、それでも3時間を長いとは思わなかった。(レイフ・ファインズが祖父・父・息子の一人三役で、演技力と役者魂の両方に圧倒されたけれど、別々の俳優さんが演じた方が自然だっただろうな・・・とも思う。)
個人的には、ある種の単純さ、清々しさのようなものを終始感じたのが自分でも意外だった。思い過ごしかもしれないけれど、それでも「母と娘」 という糸を注意深く切ってあって、女性たちは「養女」とか「妻」とか、直接の「血縁」は無い関係に設定されていることが、関係しているような気がした。
ハンガリーのユダヤ系家族の100年は「差別」の歴史でもあり、その苛酷さに呆然となるようなシーンもあるのだけれど、それでも「男同士って単純でいいな・・・」と思った自分は、よほど「(血縁のある)女同士」に疲れていたのかも(苦笑)。

『木漏れ日の家で』 (監督・脚本:ドロタ・ケンジェジャフスカ 2007 ポーランド)

モノクロ映像で見る古い木造家屋の美しさ、人懐っこいワンちゃん(フィラデルフィア、通称フィルって名前もいいな♪)の名演技、そして91歳のヒロインを演じる女優さんの少女のような魅力・・・。今思い出しても、なんだか夢の中にいたような気がするくらい、老いる(そして死を迎える)ことを「美しく」描いてくれた作品だったと思う。

http://blog.goo.ne.jp/muma_may/e/87319f733cbf2af2927efc08707ae277
 

『ショパン 愛と哀しみの旋律』 (2002 ポーランド)

当のショパンの顔さえ思い出せなくて・・・サンドは魅力的だった記憶が。メモには、「サンドがこれほど『所帯の苦労を味わった』『若きマザコンたちに(恐らくは好きこのんで?)振り回された』人だったとは~。」とか、「ピアノの響きがあまり美しく聞こえなくて残念だったけど、チェロの音色が印象的で、エンディングロール見てたらヨーヨー・マだった~。」などと。


以下の7本は、高知県立美術館での「フレデリック・ワイズマンのすべて」(シネマテーク・プロジェクト)で上映された作品の一部。

http://blog.goo.ne.jp/muma_may/e/15abc7b1a055a1070526a5dfbec8f88a
 

『ボクシング・ジム』(2010) 91分

ワイズマン監督のドキュメンタリーを観るのは初めてだったので、ただただじっと「眼」になったつもりで観ていた。
大体、私は本物のボクシング・ジムには入ったことがなくて、映画(『ミリオンダラー・ベイビー』とか)くらいでしか知らないので、イメージも「プロを目指す人のための場所」みたいな感じだった。ところが、この映画で映し出されるのは、「さまざまな人種・年齢・職種・性別・目的の人たちが出入りする」場所で、トレーナー(女性もいる)は必要に応じて付くけれど、基本的には何かの道場のように「一人で黙々と修行(トレーニング)に励む」場所だったのに驚いた。(しかも、そんな姿がまるでダンサーたちの練習のように美しかったりするのだ。)
「実際に(現場へ行って)見てみないとわからない」というのがドキュメンタリーの基本なのだとしたら、私はそれを体験させてもらったのかも・・・などと思っていたら、その後の監督本人の講演で、「撮りっぱなし」のような映像がどれほど時間と手間をかけて編集されているかを知って・・・と言う風にして、私の「ワイズマン体験」が始まった。


『基礎訓練』(1971) 89分


最初から、「入隊志願者」を「兵士」にするにはそれなりの「洗脳」?が必要なんだろな・・・と思って見ていたせいか、むしろ「結構フェアーで親切なんだぁ。」などと思ってしまった。(『愛と青春の旅立ち』(1982)に出てくる訓練教官の鬼軍曹ぶりは、士官養成コースだったからなのかなあ。何にせよ思い込みはいけないと反省・・・って、これも「ワイズマン体験」かな。)

『シナイ半島監視団』(1978) 127分


特殊な話?みたいなのでパスしようかと思ったけれど、観て良かった~。(今回私が観た中で、最も「意表を突かれた」作品かも。)
 シナイ半島監視団という組織の存在をそもそも知らなかった?こともあるけれど、それにしても、「第四次中東戦争の戦略目標で(当然)激戦地ともなった」などという峠2カ所の出入りを、いくら「第三者に監視させる」ためとはいえ、まったくの民間人(米国国務省の職員もいるけど少数で、大半はテキサスの民間会社の契約社員!)に委せる・・・というやり方には、呆気にとられて暫し呆然。
職員さんたちはほんとに納得して来てるのかしら・・・という私の疑問には、終盤パーティーの場で余興?として、ギター片手に責任者??と覚しき人が、「最初からコンナトコロと判っていたら、僕は絶対来なかった~♪」(ウロ覚えの意訳~)と、ユーモアともヤケっぱちともつかない風情で歌ってくれたのが答えだったのだろうと思う。
それでも、こういう任務(業務)には元々は素人?の筈の彼らが、 勤務中に見せるきめ細かな配慮・対応には眼を瞠った。例えば、「国連軍との連携」といっても相手はケニアから来ていたりする。全員が英語や外国人とのつき合い方に慣れているわけではないので、大
きなトラブルは互いの努力で避けられても、些末なところで摩擦は起きる。それを、相手の面子を傷つけずに解決していく、気配りと忍耐強さ・・・。
アラブの真っ只中にミニ・テキサスが出現したような光景より何より、そういった「困難な仕事」をする「ごく普通の人々」の情景に、なんだか感動してしまった。(「私の知らないアメリカ人」を見せてもらった気がして。)

『パナ運河地帯』(1977) 174分

その日3本目の作品で、3時間近い長尺・・・というわけで、途中何度も夢うつつ~。でも、「ワイズマン作品は居眠りしてもいいんですよ~。」と言われた意味も、なんとなく解る気がした。うたた寝の間も鑑賞体験が途切れない感じは、私の錯覚だけでもないと思う。それにしてもパナマは遠いな~。アメリカの人にとってはもっと近い国なんだろな~などなど。

『DVードメスティック・バイオレンス』(2001) 195分


今記憶を辿ろうとしてもロクに思い出せないのは、3時間以上も長さでも、「知らなかった!」というショックを感じるような場面があまり無かったということなのだろうか。(メモも残っていない。)
この映画に出てくる「スプリング」(フロリダ州)のような規模の大きい「DV被害者保護施設」が、日本にあるのかどうかも私は知らないけれど、警察が駆けつける「家庭内暴力」の風景も、被害体験を話してくれる人たちの言葉や表情も、なぜか自分が見知っているもののような気がした。・・・それほど(文化の違いを問わず)人間のカップルや家庭にはついて回る、解決が困難な問題ということなのかな・・・と。
☆『霊長類』(1974) 105分

 
この上映会より少し前に、『猿の惑星:創世記』を観たせいなんかじゃない。
私は元々霊長類に限らず、動物と自分(人間)との間に、従来言われてきたほどの高い敷居?を感じないので、このドキュメンタリーは見ているのが非常に苦痛だった。別に「動物愛護」の精神があるわけでもないし、そういう活動とも無縁で、そもそも「動物好き」ですらないけれど、(私から見ると)そういうこととは別の話なのだ。
「研究」に「実験」は付き物で、どこが境界か、どこで(人為的にとはいえ)線が引けるのか・・・というのは、「科学の時代」を続ける以上、どこまでも問題であり続けるだろうとは、私も思う。それでも・・・
その昔、理系の学部の学生だった頃、生きもの(カエルやマウス、時に犬、もしかしたら人間も?)を使った実験をする(或いは「見せられる」)際に感じた疑問に、よりショッキングな形で再会させられた時間だった。

『チチカット・フォーリーズ』(1967) 84分

「やりたくもないピエロの役を無理矢理させられるなら、せめて“恐ろしげ"なピエロを演じたい。」(なあんてコトを、怖がりで気の弱い自分が思うとは・・・。)

 http://blog.goo.ne.jp/muma_may/e/61fc8db18a8a508944ece890376783c7



『誰がため』 (監督:オーレ・クリスチャン・マセン 2008 デンマーク・チェコ・ドイツ)

原題の“Flammen &Citronen”は、主人公2人のレジスタンス活動上のコードネームだとか。実話に基づく・・・と聞いていたこともあって、メモには「何というか・・・私にとってはとても辛い映画だった。2人はチーム組んで、レジスタンスとはいえ、要するに“暗殺要員”として活動する。たとえどのような「大義」があったとしても、一旦“人を殺す”という領域に踏み込んでしまったら、結局その人自身も壊れていってしまうんじゃないか・・・そんなことを思いながら観ていた。」とある。
私は単なる観客(それも後世の)なので、どうせあちこちから利用されるだけなのに・・・と初めから思っていたし、実際そういう展開になる。それでも私は、彼らのことを愚かだなどと言う気になれなかった。たとえ最初は比較的緩やか?なやり方でだったとしても、他国に占領されているという現実を日々経験しながら、人は何を思い、どう生きようとするのか・・・。第二次大戦当時を描いた映画では「よくある」話に見えること自体が、私には「とても辛かった」のかもしれない。
(青味を帯びた冷たい色調が美しいのと、若いフラメンを 演じるトゥーレ・リントハートという俳優さんがとてもカッコいい!のと、シトロン役のマッツ・ミケルセンに共感するものがあったのとで、なんとか自分をゴマカシて、最後まで観ていた気がする。)

☆『ヤコブへの手紙』 (監督:クラウス・ハロ 2009 フィンランド)

喫茶店の3階という小さな会場で、来ているのはほんの2,3人・・・という状態で観たのもラッキーだったと思う。スクリーンと自分との間には誰もいない。登場するのはたった3人(というか、ほとんどはヤコブ牧師と、刑務所を出たばかりのレイラだけ)。クラシック音楽が使われていたと思うけれど、今こうして振り返っても、自然な音の中でポツリポツリと交わされる会話以外の、「余計な音響」は無かった・・・という印象が残っている。
とにかく画面上の「光」と「空気」が素晴らしかった! (「素晴らしい」なんて言葉は、めったに使えるものじゃない。)フィンランドの夏って、あんな景色を見せてくれるんだろうか。
物語は、見る人によってあれこれ想像させる余地が(意図的に)残されていたけれど、「人は人によって支えられていて、それはいつも双方向なもの」という気持ちが、静かに満ちてくる映画だったと思う。

『ワンヴォイス~ハワイの心を歌にのせて~』 (監督:リゼット・マリー・フラナリー 2009)

創立120年の伝統校「カメハメハ・スクール」で「90年間継承されてきた」合唱コンクールでは、4学年2000人の生徒たちが学年ごとに分かれて、「ハワイ語」の歌を歌う・・・それだけでも、私には十分珍しいものを見せてもらっている気がしたけれど、そもそもハワイ語は1987年に公用語として認められるまでに、100年ほども「使用を禁じられた」言語だったということを、私は全く知らなかった。それほど長い間「禁じられた」状態が続くと、言語としては「消滅の危機に瀕した」状態になる。伝統的な歌も、「言葉の発音がよくわからない部分が今もある」という。
それでも(というか、だからこそ一層?)「言語」というものが人のアイデンティティーにどれほど深く関わってくるものなのかが、丁寧に語られている作品だと思った。(1グループの人数が多いこともあって「合唱」の迫力は圧倒的。色とりどりのレイに埋まる、コンクール当日の華やかさにもビックリ~。)

『127時間』 (監督:ダニー・ボイル)

ほとんどSF並みに、私からは遠い世界の話ではあったけれど・・・。(ほんとにあんなこと出来るものなの?!なんて。)

http://blog.goo.ne.jp/muma_may/e/0ddce2439425004ddd7e317af78c4f09

『海洋天堂』

メモには、「知的障害のある自閉症という男の子(といっても21歳)がとても可愛い~。純で繊細な感じがよく出ていて、水族館で生きものたちが泳ぐのをガラス越しに見る風景も美しくて、ただそれだけで私も心地良かった。見ている、泳ぐ、男の子の気持ちよさが伝わってきた。」「ジェット・リーはメガネをかけて、ごく普通の、地味な、でもとても誠実で責任感のある父親を好演。」などなど。
控えめな演出で、ドラマとしての面白さより現実としてのリアルさを優先しているように見えたのは、作り手が長年実際に自閉症の人たちの施設でボランティアをしてきたことも関係しているのかなあ・・・などとも。でも、私はこういう「言葉でははっきり言わない」「強く表現しようとしない」のも好きなので、これはこれでいいと思った。現実は、この映画のラストよりもっと厳しいものなのだろうから。
(「天堂」というのは天国のことらしい。ラスト近く、手作りのカメの甲羅をつけて、重病の父親が息子と泳ぐシーンは切なかった。でも、ふたりが路上で「親ガメ子ガメ~」をして笑っているシーンがチラシに使われていて、それを見るたび、「父親の伝えたかったことは、どこかで息子に伝わったんだろうな・・・」とも思う。息子の幸せそうな表情がすごくいいので、そう思いたくなる。)

『ミケランジェロの暗号』 (監督:ウォルフガング・ムルンベルガー 原作・脚本:ポール・ヘンゲ)

「ナチス・ドイツが探し求めるミケランジェロの絵をめぐるサスペンス・ミステリー」で、幼なじみの2人の男(ユダヤ人と親衛隊員)の駆け引きは、一転また一転、「誰が観ても面白い」映画になっていると私も思った。なのに、
観た直後のメモには、「ミステリーとしては簡単に謎が解けてしまうので、人間ドラマとして観ればいいのだろう。ただ・・・その“人間ドラマ”が、私にとってはあまり観ていて気分のいいものじゃなかった。リアルというなら、とてもリアルな感情の行き来なのだけれど、今の私はこういう人間関係を眼にすること自体、苦痛なのかもしれない。」などと書いてある。人間同士の間で起きるさまざまな成り行き、その間の摩擦・・・といったことが、映画を観ている間ずっと、必要以上?にヒリヒリと感じられて「苦痛」だったのを今も覚えている。
ちょうど私がこの映画を観ていた頃、母は慌ただしく入院したことになる。今思うと、宙ぶらりんの精神状態で映画なんか観ちゃいけない・・・っていう見本だったのかも。映画に悪いことしちゃった。)
 


 

【2011年高知オフシアター・ベストテン選考会の結果 (外国映画の部)】

   
   1位 『メアリー&マックス』 (監督:アダム・エリオット 主催:県立美術館)

    
   2位 『127時間』 (監督:ダニー・ボイル 主催:シネマ・サンライズ)

   
   3位 『100歳の少年と12通の手紙』 (監督:エリック=エマニュエル・シュミット 主催:シネマ・サンライズ)
   
   4位 『冬の小鳥』 (監督:ウニー・ルコント 主催:こうちコミュニティシネマ)
   
   5位 『イリュージョニスト』 (監督:シルヴァン・ショメ 主催:こうちコミュニティシネマ)

   5位 『霊長類』 (監督:フレデリック・ワイズマン 主催:県立美術館)

   7位 『マイレージ、マイライフ 』(監督:ジェイソン・ライトマン 主催:市民映画会)

 

   8位 『アンチ・クライスト』 (監督:ラース・フォン・トリアー 主催:県立美術館)

   9位  『黄色い家の記憶』 (監督:ジョアン・セーザル・モンテイロ 主催:県立美術館)

   10位 『ようこそ、アムステルダム国立美術館へ』 (監督:ウケ・ホーヘンダイク 主催:県立美術館)

  同10位 『ヤコブへの手紙』 (監督:クラウス・ハロ 主催:こうちコミュニティシネマ)



 自分が推薦票を投じた作品10本のうち、7本がベストテン入り!(わーい)。泣く泣く10本から外した?『100歳の少年と12通の手紙』が上位に入ったのも嬉しかった。(『ようこそ、アムステルダム美術館へ』は、その後録画して観たけれど、予想とは全然違う内容にビックリ。美術館の「所蔵品」じゃなくて、改築の際の「騒動」の顛末?だった~。)

それにしても、この記事は1月(母の突然の入院の後)に書き始めたらしいので、アップするまでに4ヶ月ほどかかったことになる。その時の気分次第で長かったり短かったり、いつも以上にカチカチ・グダグダ~の感想が多いのは、その後の出来事(お葬式、納骨、相続・・・そして結局、姉とは没交渉になったこと等々)で、私のヒコーキがとうとう迷子になってしまったから。

それでもこうして1年越しの作品名を眺めていると、なんとなく慰められるのもがあるから不思議・・・。ヒコーキの方も、とりあえずは高度を維持して飛べるようになってきた(かな?)。




というわけで、今週末(4月29日)の「高知オフシアター・ベストテン上映会」のことをちょっとだけ。

外国映画部門1位の『メアリー&マックス』と、日本映画部門1位の『その街のこども 劇場版』に加えて、高知未公開作品として『エリックを探して』(ケン・ローチ作品~♪)の3本が、県立美術館ホールで上映される。

「高知では毎年、こんな楽しい催しがあるんですよ。」ということで、興味のある方は雰囲気だけでも見てみて下さい。

   http://cc-kochi.xii.jp/index.html (チネチッタ高知)



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