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眺めのいい部屋

人、映画、本・・・記憶の小箱の中身を文字に直す作業をしています。

『サン・セバスチャンへ、ようこそ!』(録画)

2025-05-05 16:46:03 | 映画・本

(監督・脚本:ウディ・アレン 2020 スペイン=アメリカ=イタリア 原題:Rifkin’s Festival)


ウディ・アレン監督の映画は、わたしはこれまで「苦手…」と思うことが多くて…

でも、この映画は好き! 昔観た『世界中がアイ・ラブ・ユー』も珍しく自分が気に入った映画だったけれど、これで2本目が現れたわけで、ちょっと嬉しい~(^^)


今回気に入ったのは2点。

ひとつは、超有名なクラシック映画の中のシーンを、見せてくれたり思い出させてくれたりすること。


といっても、わたしなどにはどういう作品へのオマージュか、わからなかった部分も多かったのですが。(後で調べてみたら、そういうのはブニュエルやベルイマン作品からのもので、わたしがわからなくても当然と(^^;)

『市民ケーン』『8 1/2』『突然炎の如く』『男と女』『勝手にしやがれ』辺りは、わたしでもなあんとなくワカル。(わかるように演出されているので)

そんな昔の名画シーンは、主人公(大学の映画学の先生で、永遠に未完?の小説を執筆中)の見る夢としてモノクロ映像で現れるのですが、それらがどれも、とても美しいのです。

スペインの観光都市サン・セバスチャンの風光明媚もきれいに撮られているのですが、夢の白黒モノトーンにかなわないと感じてしまったのは、「さすが(昔の)名画!」なのか、「(この映画の)演出の妙」なのか…


しかも、そういうオマージュ・シーンが、アレン流のコメディとしてアレンジされていて、思わず笑ってしまった箇所がいくつもありました。


そして2点めは…


映画の大部分で、主人公は(いつもながらの)ジタバタドタバタ。思い込みや勘違い、それを人に気取られぬ工夫。格好を気にしないように見せながら、格好を気にするインテリ風に見えます。

仕事・結婚生活・ラブアフェアー(本気?)… 彼も周囲の人たちも、人生は困難やアタマがいたくなることの連続のようなんですが…

終盤、妻に離婚を切り出された後、夢の中で「死神」と対話した主人公は、自分の人生の「見直し」が出来たんですね(エライ!マジで)

自分がそんな大した人間じゃなかったのを認めることができて、離婚して出直す?ことになった彼は、なんだか肩の力が抜けて、ほんのちょっとしあわせそうでした。

でも… その後がビックリ!(わたしだけかなあ)


映画のラスト、サン・セバスチャン映画祭でのコトの顛末(つまりこの映画全体)を聞いたはずのインタビュアーに向って

「ねえ、それで…どう思った?」

ニッコリ笑って感想を聞きたがる彼は、やっぱり「終始自分にしか興味が無い」ナルシストのままに見えて、わたしはつい笑ってしまいました。

でも、(昔と違って)わたしの方も「微笑ましい」という笑いでしたが。


人はいくつになっても、変わらないものなんですね。仕切り直しをしても、別に人間が変わるわけじゃない。(だから人生を続けられるんでしょうし)


夢の中で、死神が言っていたように

「人生という容器を何かで埋めるしか(人間には)できない」 

でも「それが無意味だとしても、空っぽじゃない」


何かで埋めて、それがダメで(後悔して)苦しんで… 神話のシジュフォスのような繰り返ししかないんだとしても、それが生きるということ…なんでしょうか。



とにかく「深刻にならず」「突き詰めず」「思いつめず」、あくまで「ゆる~い(大人の)コメディ」になっていて、しかもその心地よさが「わざとらしくない」ことに、わたしは(勝手に)この作り手の円熟(映画監督としても、長く苦しんできた?ひとりの人間としても)を感じました。


どこまでもナルシストのままの主人公(ここまで来ると、ほんとアレン監督ソックリ…って気がする(^^;)を「微笑ましい」と思うようになるくらい、自分の上にも歳月が降り積もった?ような気がして、久しぶりに「アメリカのコメディーを観るしあわせ」を感じさせてくれた映画でした。

 



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