1年分のメモその他をパラパラ見ていたら、元々は観るつもりがなかったのに、友人知人の勧めやネットでの(観た方たちの)やりとりがきっかけで、観に行った作品が何本もあるのに気づいた。特に日本映画には、それが目立つ。そういう風に「何かを確認するために」映画館にまで足を運ぶのは、数年前までの私には殆どなかったことだと思う。
前知識なしに映画を観るのが好きなので、観るつもりのある作品についてはネットでもなるべく見ないようにしているけれど、観るつもりがないものについては、人の話を読むこと自体が楽しいので、最初から平気で読む。だから、内容をある程度知ってしまってから観に行くことになるのだけれど・・・それはそれで、全く別の面白さがあるのだと分かった。
今の自分は色々な意味で「映画を楽しむ」環境に恵まれているんだな・・・と、つくづく思う。
【2008年映画館で観た日本映画】
『椿三十郎』 先に観に行った10代が、帰宅早々口にしたセリフ。「オレは観てないけど、あれだったら原作の方が絶対!いい。」「なんでそう思うの?」「いちいち原作のシーンそっくりで、それなのに上映時間はずっと長いっていうんだから、そもそもダルくなってるってことだよ。ほんと、予想通りだった。」あまりにきっぱりと断言するのに興味が湧いて、私も後から観に行ってみたら・・・彼の気持ちがよく分った。(私は私で、自分も黒沢監督のオリジナルを観てないけど、それもかえって新鮮でいいかなと思ったのに。織田裕二サンのファンじゃないのが良くなかったのかな~)
『母べえ』 知人のネット上でのやりとりを観て、興味が湧いて観に行った1本。浅野忠信が大変身!! これまで自分が考えたこともなかったような、母べえの最期の言葉にも驚いた。ただ、映画自体がとても丁寧に(紋切り型を避けて)作られているのに、唯一「母べえ」に吉永小百合サンを起用しているのが、私にとってはむしろステロタイプに見えて残念。重いテーマを背負える人でないといけないのも、彼女がとても若くみえるのもわかるのだけれど、それでも60代の彼女には彼女にもっと相応しい役を演じてほしいし、この映画の「母べえ」も、その役柄に本当に相応しいと思えるような世代の女優さんに、演じてほしかったと思う。(メモには、「壇れいさんでは若すぎるのかなあ・・・」などとも。)
『歓喜の歌』 「小林薫サンが『もののけ姫』で、チャランポラン生臭坊主の声を担当して以来、この人のコメディアンぶりを一度実写でも観てみたいと思っていたので、夢が叶った~」などと、メモにある。終盤の筒井道隆サンとのやりとりが秀逸!(筒井サンが、笑いを堪えてるように見える瞬間も。)こういう楽しさ、あたたかさに映画館で出会うと、ものすごーく自分が元気になるのがワカル。
『マリと子犬の物語』 シネコンのフリーパスで観てきた10代が、珍しくも「まあ・・・行ってきたら~」と勧めて?くれたので、子どもと犬が出てくるのならまあいいか程度の気持ちで観に行った。で、観て思ったこと。「大地震」というものの怖さ!を、映画でこれほどリアルに感じたのは初めてかも。(山が崩れたり津波に襲われたり・・・といった大がかりな映像は、あくまで部外者から見た「地震」であって、被災した当事者にとっては地震はソウイウモノではないのだということを思い出した。)目の前で!とか、頭の上に!!とかいった、当事者にとっての地震の凄さをこの映画では描いているので、本当に身に迫るものがあって、現実にニュースで聞いた余震のモノスゴイほどの回数を思い出して、つくづく被災者の方たちの大変さを思った。(かつて山村で数年間暮らした時感じた、ああいった土地の人々の独特の温かさも思い出した。それもあって、「生きているかもしれない相手がいるのなら、(家族の死が判ってしまってる自分よりも)あなたがヘリに乗って確かめに行ったほうがいい。」とでもいうような、大事な人の生死の境を経験した人の優しさも、私には作り事には見えなかったのだと思う。)私にとっては、驚くほどリアルな映画だった。
『明日への遺言』 藤田まことサンは子どもの頃から見ていて、きっと真面目な人なんだろな・・・などと、なぜか思っていた。そういう人があまりにも真面目な映画に出演しているので、観てあげなきゃいけないような気がして観に行ったもの。「無差別爆撃は国際法違反だ」ということを、真っ向から扱った法廷物を、私はあまり観たことがなかったと思う。日本側を弁護するアメリカ人弁護士の主張なども含めて、日米双方に対して公平な描き方がされていて、戦争裁判を舞台にしていても「人間」を描こうとする姿勢に貫かれていると感じた。(妻を演じた富司純子さんの、その時々の表情が印象的。確か、セリフは一言もなかったと思うのだけれど、メモにも「この人のこういう楚々とした美しさ、優しさを久々に見たと思った。」などと。)
『転々』 「エンドクレジットで、藤田宜永サンの小説が原作と知ってビックリ。とにかく登場人物たちが全員(微妙に或いは本格的?に)ヘンというか、俳優さんたちがみんな怪演??というか・・・」などとメモにあって、笑ってしまった。(中でも三浦友和サンが凄い! もう「代表作!」と言ってあげたいほど。)
『スーパーカブ』 主演の若い俳優さん(斉藤慶太サン)が実にアッケラカンと愉しそうで、彼の個性に惹かれて観ていたようなもの。(映画館の帰り、宅配ピザのスクーターを見ても笑えてくる!くらい、楽しいトンデモ系作品だった。)
『ガチボーイ』 50代の知人が、珍しくも何度も(やんわり)勧めてくれたので、プロレスはちょっと苦手・・・と思いつつも、観に行った。でも、観て良かった!! 学生たちの雰囲気が所謂「体育会系」から遠く和やかで、プロレスのショウとしての魅力が上手く生かされていて、高次脳機能障害という深刻な前提なのに、それがロマンに昇華されたコメディーとして、とても上手く作られていると思った。(映画の最後、もう私もその場に参加しているような気になってしまったほど。)
『うた魂♪』 主演の夏帆サンのコメディエンヌぶりが良かった。 ただ、「合唱」を扱った映画としては、私は中年女性たちの『歓喜の歌』の方が好きかも。学校とか集団とかがチラつく?だけで、私はちょっと興味が削がれるらしい。(昔、よっぽどイヤだったのね(苦笑)。)
『人のセックスを笑うな』 永作博美サン、松山ケンイチさんが、もしかしてキチンとした脚本は無いんだろうか・・・と思うほど、ぶっつけ本番風のビミョーな会話をするのを、ぼんやりダラダラ聞いていた。永作サンは要するに魔女?の役で、ケンイチ君が本当に二十歳ソコソコの男の子!に見えるのにもちょっと感心。でも一番面白かったのは、ケンイチ君が魔女の夫(あがた森魚サン?)と和菓子を食べるシーンだったかも。
『アフタースクール』 いかにも『運命じゃない人』を作った監督らしく、後から事情が明かされる度に最初のこちらの理解(思い込み)が覆るという、もう驚きの連続!!で、とても面白かった。ただ、終盤中学校の先生(大泉 洋)が相手(佐々木蔵之介)に教壇から言った言葉が、私には興醒めだったけど。(そのシーンをどう思ったかは案外人によってさまざまで、私以上に興醒めした方もあれば、納得のいくセリフで良かったという方もあって、それも面白いと言えば面白かったかも。個人的には、堺雅人サンの演じたキャラが好き!(笑))
『相棒-劇場版-』 ドラマの方を観たことがなかったけれど、十分面白かった。映画の内容からの連想で、様々なことを思い出した作品。例えば、海外での日本人拉致事件の際、むしろ被害者やその家族が(私などには想像が及ばないほどの)凄まじいバッシングを受けることに、私は本気で腹が立ち、自分がそういう国の国民であることが悲しくなる。ある事件の後、バッシング騒動の最中に直接聞いた公務員である知人の言葉を、私は信じているから余計に。(「ああいう(例えば拉致といったような)緊急時には、直接実務を担当する人間は『なんでこんな馬鹿げたことの後始末をしなきゃいけないんだ』なんてことは、思わないものなんだ。勿論、忙しいし、自分たちの体もキツイし、経費もかかる。でも、自分たちはこういう時のために税金で雇われてるわけで、それがなんとか解決できたら、一緒に仕事した者同士『ほんとに良かった!』って口々に言うだけ。特別真面目でも『良心的』でもない人でも、あんなバッシングみたいなこと言うの、聞いたことない。あれは現実にタッチしてない、例えば政治家なんかが勝手に言うだけなんだ。なのにどうして一般の人まで、ああいうこと平気で言うのか・・・僕は日本人だけど、こういう時、日本人が本当に嫌になる。」)
* 『崖の上のポニョ』 その場に突然10代が現れて、一緒に観たアニメーション。直後に曰く「スタッフ・ロールに一番感動したって言ったらオコラレルかも(笑)。」(私も同意して握手~。)私自身は、全編手描きというのはこういうものなのかあ・・・と、その美しさにただただうっとり。ストーリーは、そもそも5歳児の世界なので、オトナの感覚でツジツマその他を考えるのもなんだかなあ・・・な感じ。ただ、裏にあるハヤオおじさんが抱えている材料というか蓄積というかは、5歳児になって観ている私にも感じられるトコロがあって、「死」の影や滅びの気配といったものを私が感知した途端、ポニョは寝てしまったり、形が崩れてきたり(わーん)・・・といった具合でに、なんだかボンヤリドキドキ?観ていた気がする。私からすると、ハヤオさんというのは要するにこういうヒトだ・・・という「結晶」を見た気がする作品。(あのクラゲの大群と波頭を裸足で疾走する少女が、どうしてももう一度見たくて、間もなく再度観に行った。そして、ストーリーを追う必要のない2度目の方が、もっと陶酔できてシアワセ~という、私としては本当に珍しい体験をした作品でもある。)
http://blog.goo.ne.jp/muma_may/e/7e710b7a1d51f6ad524606b58345399c
『スカイ・クロラ』 これはこれで、私としては長い時間「抱えて暮らした」作品かも。
http://blog.goo.ne.jp/muma_may/e/7a08e43e3bc7f359e52ba83443c50ea5
『おくりびと』 映画を観て帰宅すると、私はその時その場に(不運にも)居合わせた家族に、映画の説明も自分の感想もごちゃ混ぜで、ペラペラとまくし立てるらしい。たまたまこの日、居合わせた20代が、私の話が一段落したところで言った言葉を覚えている。「ひばあちゃんとじいちゃんと、(身内で)2つお葬式見て、お葬式には『笑い』が必要だって思った。もちろん大往生の人だけなんだろうけど。お誕生日おめでとう!で、大往生おめでとう!!っていうか・・・2回目の誕生日なんだと思う。」私はかつて父の死に顔を見て同じことを思った記憶があるので、邪気の無い、いつもの表情で言った彼の言葉に驚いた。この『おくりびと』という映画は、「死」はその本人の人生が完結する時であると同時に、家族や縁のあった人たち皆の中に生き続ける、その後のその人の姿の定まる機会でもあることを、納棺という儀式・仕草を通じて見せてくれる。そして、その人の姿が定まる時こそ、積年の蟠りについての『和解』もあり得るのだ・・・という風に。俳優さんたちも適材適所の好演で、私は本木雅弘サンの特別なファンではないけれど、こういう風にこの人の美しさ(様式美に親和性のあるような資質)に出合う時、貴重な俳優さんだな・・・と改めて思う。
『パコと魔法の絵本』 観るつもりが無かったのに、時間の関係で偶々観たもの。(メモには「お金と手間ヒマをかけた、原色満載の大学芸会!」などと書いてある。)でも、誰が演じているのかワカラナイ登場人物が何人もいて、それをあれこれ推理するのは楽しかった。(病院長は最後まで判らずじまい。エンド・クレジット見てすごーく納得。胸のツカエが下りたというか、爽快な気分で帰宅。)
『ぐるりのこと』 美大の卒業生夫婦のその後の歳月を、とても繊細に?描いた作品。法廷画家という職業とか、リリー・フランキーさんの不思議さとか、木村多江さんの自分のひっくり返し方の見事さ!とか、観るモノが沢山あって、楽しんで最後まで観たのだけれど・・・困ったことに、私はこの橋口亮輔監督の映画にも(スサンネ・ビア監督の作品と同じような)ある種の「生々しさ」を感じて、曰く言い難い「居心地の悪さ」を感じるのだと判った。(『ハッシュ!』の時も、「とても面白かったけれど、この人は苦手」などと、どこかに書いた記憶がある。)それでも、法廷で各事件の被告を演じた俳優さんたちの演技の凄さ!や、最後にお寺の天井画の下で寝そべる2人を包む空気まで感じさせる映像など、見に来て良かったと思わせられた作品だった。(きっとこれから先も、この監督の映画を「なんかちょっと苦手やなあ・・・」と思いながら、私は最後まで観るのだろう。そういう監督、作品もあるのかもしれない・・・と、初めて気がついた。)
【2008年 ささやかなマイ・ベストテン】
順位は関係なく、1年間に観た映画108本の中から10本選びました。(今回書いた感想の中でも、この10本については、アタマのところに*印をつけてあります。)
以前にも書いたとおり、オススメ作品というのではなく、個人的に(ちょっと大袈裟に言うと)「私の人生に何かを付け足してくれた気がした作品」という意味なので、予想通りミニシアター系(或いはそれですらない?)作品ばかりになりました。ポニョだけが貴重な例外です(笑)。(この他にも、迷ったのは『ラスト、コーション』『宮廷画家ゴヤは見た』『ドラゴン・キングダム』『迷子の警察音楽隊』『4分間のピアニスト』『WALL・E/ウォーリー』などなど。)
『ミリキタニの猫』
『アレクセイの泉』
『崖の上のポニョ』
『4ヶ月、3週と2日』
『シークレット・サンシャイン』
『赤い風船』
『さよなら。いつかわかること』
『“人間を彫る”彫刻家≒舟越桂』
『トキワ荘の青春』
『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程』 (観賞順)
コンナモノをここまで読んで下さった方々に、心から感謝します。どうもありがとうございました。
前知識なしに映画を観るのが好きなので、観るつもりのある作品についてはネットでもなるべく見ないようにしているけれど、観るつもりがないものについては、人の話を読むこと自体が楽しいので、最初から平気で読む。だから、内容をある程度知ってしまってから観に行くことになるのだけれど・・・それはそれで、全く別の面白さがあるのだと分かった。
今の自分は色々な意味で「映画を楽しむ」環境に恵まれているんだな・・・と、つくづく思う。
【2008年映画館で観た日本映画】
『椿三十郎』 先に観に行った10代が、帰宅早々口にしたセリフ。「オレは観てないけど、あれだったら原作の方が絶対!いい。」「なんでそう思うの?」「いちいち原作のシーンそっくりで、それなのに上映時間はずっと長いっていうんだから、そもそもダルくなってるってことだよ。ほんと、予想通りだった。」あまりにきっぱりと断言するのに興味が湧いて、私も後から観に行ってみたら・・・彼の気持ちがよく分った。(私は私で、自分も黒沢監督のオリジナルを観てないけど、それもかえって新鮮でいいかなと思ったのに。織田裕二サンのファンじゃないのが良くなかったのかな~)
『母べえ』 知人のネット上でのやりとりを観て、興味が湧いて観に行った1本。浅野忠信が大変身!! これまで自分が考えたこともなかったような、母べえの最期の言葉にも驚いた。ただ、映画自体がとても丁寧に(紋切り型を避けて)作られているのに、唯一「母べえ」に吉永小百合サンを起用しているのが、私にとってはむしろステロタイプに見えて残念。重いテーマを背負える人でないといけないのも、彼女がとても若くみえるのもわかるのだけれど、それでも60代の彼女には彼女にもっと相応しい役を演じてほしいし、この映画の「母べえ」も、その役柄に本当に相応しいと思えるような世代の女優さんに、演じてほしかったと思う。(メモには、「壇れいさんでは若すぎるのかなあ・・・」などとも。)
『歓喜の歌』 「小林薫サンが『もののけ姫』で、チャランポラン生臭坊主の声を担当して以来、この人のコメディアンぶりを一度実写でも観てみたいと思っていたので、夢が叶った~」などと、メモにある。終盤の筒井道隆サンとのやりとりが秀逸!(筒井サンが、笑いを堪えてるように見える瞬間も。)こういう楽しさ、あたたかさに映画館で出会うと、ものすごーく自分が元気になるのがワカル。
『マリと子犬の物語』 シネコンのフリーパスで観てきた10代が、珍しくも「まあ・・・行ってきたら~」と勧めて?くれたので、子どもと犬が出てくるのならまあいいか程度の気持ちで観に行った。で、観て思ったこと。「大地震」というものの怖さ!を、映画でこれほどリアルに感じたのは初めてかも。(山が崩れたり津波に襲われたり・・・といった大がかりな映像は、あくまで部外者から見た「地震」であって、被災した当事者にとっては地震はソウイウモノではないのだということを思い出した。)目の前で!とか、頭の上に!!とかいった、当事者にとっての地震の凄さをこの映画では描いているので、本当に身に迫るものがあって、現実にニュースで聞いた余震のモノスゴイほどの回数を思い出して、つくづく被災者の方たちの大変さを思った。(かつて山村で数年間暮らした時感じた、ああいった土地の人々の独特の温かさも思い出した。それもあって、「生きているかもしれない相手がいるのなら、(家族の死が判ってしまってる自分よりも)あなたがヘリに乗って確かめに行ったほうがいい。」とでもいうような、大事な人の生死の境を経験した人の優しさも、私には作り事には見えなかったのだと思う。)私にとっては、驚くほどリアルな映画だった。
『明日への遺言』 藤田まことサンは子どもの頃から見ていて、きっと真面目な人なんだろな・・・などと、なぜか思っていた。そういう人があまりにも真面目な映画に出演しているので、観てあげなきゃいけないような気がして観に行ったもの。「無差別爆撃は国際法違反だ」ということを、真っ向から扱った法廷物を、私はあまり観たことがなかったと思う。日本側を弁護するアメリカ人弁護士の主張なども含めて、日米双方に対して公平な描き方がされていて、戦争裁判を舞台にしていても「人間」を描こうとする姿勢に貫かれていると感じた。(妻を演じた富司純子さんの、その時々の表情が印象的。確か、セリフは一言もなかったと思うのだけれど、メモにも「この人のこういう楚々とした美しさ、優しさを久々に見たと思った。」などと。)
『転々』 「エンドクレジットで、藤田宜永サンの小説が原作と知ってビックリ。とにかく登場人物たちが全員(微妙に或いは本格的?に)ヘンというか、俳優さんたちがみんな怪演??というか・・・」などとメモにあって、笑ってしまった。(中でも三浦友和サンが凄い! もう「代表作!」と言ってあげたいほど。)
『スーパーカブ』 主演の若い俳優さん(斉藤慶太サン)が実にアッケラカンと愉しそうで、彼の個性に惹かれて観ていたようなもの。(映画館の帰り、宅配ピザのスクーターを見ても笑えてくる!くらい、楽しいトンデモ系作品だった。)
『ガチボーイ』 50代の知人が、珍しくも何度も(やんわり)勧めてくれたので、プロレスはちょっと苦手・・・と思いつつも、観に行った。でも、観て良かった!! 学生たちの雰囲気が所謂「体育会系」から遠く和やかで、プロレスのショウとしての魅力が上手く生かされていて、高次脳機能障害という深刻な前提なのに、それがロマンに昇華されたコメディーとして、とても上手く作られていると思った。(映画の最後、もう私もその場に参加しているような気になってしまったほど。)
『うた魂♪』 主演の夏帆サンのコメディエンヌぶりが良かった。 ただ、「合唱」を扱った映画としては、私は中年女性たちの『歓喜の歌』の方が好きかも。学校とか集団とかがチラつく?だけで、私はちょっと興味が削がれるらしい。(昔、よっぽどイヤだったのね(苦笑)。)
『人のセックスを笑うな』 永作博美サン、松山ケンイチさんが、もしかしてキチンとした脚本は無いんだろうか・・・と思うほど、ぶっつけ本番風のビミョーな会話をするのを、ぼんやりダラダラ聞いていた。永作サンは要するに魔女?の役で、ケンイチ君が本当に二十歳ソコソコの男の子!に見えるのにもちょっと感心。でも一番面白かったのは、ケンイチ君が魔女の夫(あがた森魚サン?)と和菓子を食べるシーンだったかも。
『アフタースクール』 いかにも『運命じゃない人』を作った監督らしく、後から事情が明かされる度に最初のこちらの理解(思い込み)が覆るという、もう驚きの連続!!で、とても面白かった。ただ、終盤中学校の先生(大泉 洋)が相手(佐々木蔵之介)に教壇から言った言葉が、私には興醒めだったけど。(そのシーンをどう思ったかは案外人によってさまざまで、私以上に興醒めした方もあれば、納得のいくセリフで良かったという方もあって、それも面白いと言えば面白かったかも。個人的には、堺雅人サンの演じたキャラが好き!(笑))
『相棒-劇場版-』 ドラマの方を観たことがなかったけれど、十分面白かった。映画の内容からの連想で、様々なことを思い出した作品。例えば、海外での日本人拉致事件の際、むしろ被害者やその家族が(私などには想像が及ばないほどの)凄まじいバッシングを受けることに、私は本気で腹が立ち、自分がそういう国の国民であることが悲しくなる。ある事件の後、バッシング騒動の最中に直接聞いた公務員である知人の言葉を、私は信じているから余計に。(「ああいう(例えば拉致といったような)緊急時には、直接実務を担当する人間は『なんでこんな馬鹿げたことの後始末をしなきゃいけないんだ』なんてことは、思わないものなんだ。勿論、忙しいし、自分たちの体もキツイし、経費もかかる。でも、自分たちはこういう時のために税金で雇われてるわけで、それがなんとか解決できたら、一緒に仕事した者同士『ほんとに良かった!』って口々に言うだけ。特別真面目でも『良心的』でもない人でも、あんなバッシングみたいなこと言うの、聞いたことない。あれは現実にタッチしてない、例えば政治家なんかが勝手に言うだけなんだ。なのにどうして一般の人まで、ああいうこと平気で言うのか・・・僕は日本人だけど、こういう時、日本人が本当に嫌になる。」)
* 『崖の上のポニョ』 その場に突然10代が現れて、一緒に観たアニメーション。直後に曰く「スタッフ・ロールに一番感動したって言ったらオコラレルかも(笑)。」(私も同意して握手~。)私自身は、全編手描きというのはこういうものなのかあ・・・と、その美しさにただただうっとり。ストーリーは、そもそも5歳児の世界なので、オトナの感覚でツジツマその他を考えるのもなんだかなあ・・・な感じ。ただ、裏にあるハヤオおじさんが抱えている材料というか蓄積というかは、5歳児になって観ている私にも感じられるトコロがあって、「死」の影や滅びの気配といったものを私が感知した途端、ポニョは寝てしまったり、形が崩れてきたり(わーん)・・・といった具合でに、なんだかボンヤリドキドキ?観ていた気がする。私からすると、ハヤオさんというのは要するにこういうヒトだ・・・という「結晶」を見た気がする作品。(あのクラゲの大群と波頭を裸足で疾走する少女が、どうしてももう一度見たくて、間もなく再度観に行った。そして、ストーリーを追う必要のない2度目の方が、もっと陶酔できてシアワセ~という、私としては本当に珍しい体験をした作品でもある。)
http://blog.goo.ne.jp/muma_may/e/7e710b7a1d51f6ad524606b58345399c
『スカイ・クロラ』 これはこれで、私としては長い時間「抱えて暮らした」作品かも。
http://blog.goo.ne.jp/muma_may/e/7a08e43e3bc7f359e52ba83443c50ea5
『おくりびと』 映画を観て帰宅すると、私はその時その場に(不運にも)居合わせた家族に、映画の説明も自分の感想もごちゃ混ぜで、ペラペラとまくし立てるらしい。たまたまこの日、居合わせた20代が、私の話が一段落したところで言った言葉を覚えている。「ひばあちゃんとじいちゃんと、(身内で)2つお葬式見て、お葬式には『笑い』が必要だって思った。もちろん大往生の人だけなんだろうけど。お誕生日おめでとう!で、大往生おめでとう!!っていうか・・・2回目の誕生日なんだと思う。」私はかつて父の死に顔を見て同じことを思った記憶があるので、邪気の無い、いつもの表情で言った彼の言葉に驚いた。この『おくりびと』という映画は、「死」はその本人の人生が完結する時であると同時に、家族や縁のあった人たち皆の中に生き続ける、その後のその人の姿の定まる機会でもあることを、納棺という儀式・仕草を通じて見せてくれる。そして、その人の姿が定まる時こそ、積年の蟠りについての『和解』もあり得るのだ・・・という風に。俳優さんたちも適材適所の好演で、私は本木雅弘サンの特別なファンではないけれど、こういう風にこの人の美しさ(様式美に親和性のあるような資質)に出合う時、貴重な俳優さんだな・・・と改めて思う。
『パコと魔法の絵本』 観るつもりが無かったのに、時間の関係で偶々観たもの。(メモには「お金と手間ヒマをかけた、原色満載の大学芸会!」などと書いてある。)でも、誰が演じているのかワカラナイ登場人物が何人もいて、それをあれこれ推理するのは楽しかった。(病院長は最後まで判らずじまい。エンド・クレジット見てすごーく納得。胸のツカエが下りたというか、爽快な気分で帰宅。)
『ぐるりのこと』 美大の卒業生夫婦のその後の歳月を、とても繊細に?描いた作品。法廷画家という職業とか、リリー・フランキーさんの不思議さとか、木村多江さんの自分のひっくり返し方の見事さ!とか、観るモノが沢山あって、楽しんで最後まで観たのだけれど・・・困ったことに、私はこの橋口亮輔監督の映画にも(スサンネ・ビア監督の作品と同じような)ある種の「生々しさ」を感じて、曰く言い難い「居心地の悪さ」を感じるのだと判った。(『ハッシュ!』の時も、「とても面白かったけれど、この人は苦手」などと、どこかに書いた記憶がある。)それでも、法廷で各事件の被告を演じた俳優さんたちの演技の凄さ!や、最後にお寺の天井画の下で寝そべる2人を包む空気まで感じさせる映像など、見に来て良かったと思わせられた作品だった。(きっとこれから先も、この監督の映画を「なんかちょっと苦手やなあ・・・」と思いながら、私は最後まで観るのだろう。そういう監督、作品もあるのかもしれない・・・と、初めて気がついた。)
【2008年 ささやかなマイ・ベストテン】
順位は関係なく、1年間に観た映画108本の中から10本選びました。(今回書いた感想の中でも、この10本については、アタマのところに*印をつけてあります。)
以前にも書いたとおり、オススメ作品というのではなく、個人的に(ちょっと大袈裟に言うと)「私の人生に何かを付け足してくれた気がした作品」という意味なので、予想通りミニシアター系(或いはそれですらない?)作品ばかりになりました。ポニョだけが貴重な例外です(笑)。(この他にも、迷ったのは『ラスト、コーション』『宮廷画家ゴヤは見た』『ドラゴン・キングダム』『迷子の警察音楽隊』『4分間のピアニスト』『WALL・E/ウォーリー』などなど。)
『ミリキタニの猫』
『アレクセイの泉』
『崖の上のポニョ』
『4ヶ月、3週と2日』
『シークレット・サンシャイン』
『赤い風船』
『さよなら。いつかわかること』
『“人間を彫る”彫刻家≒舟越桂』
『トキワ荘の青春』
『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程』 (観賞順)
コンナモノをここまで読んで下さった方々に、心から感謝します。どうもありがとうございました。
もう一回落ち着いて読みたいです。
ムーマさん、ジャッキーがお好きとは知っていましたが、ファンだったのね~。
『相棒』のコメントは全く同感。あのときは、心底驚きました。今までで一番驚いたと言ってもいいくらい。どうして仲間の味方をせずに、お上の方につくんですかねぇ。多分、そういう自覚もないのでしょうが。
ムーマさんのベストテン、私は半分しか観てないです。
『4ヶ月と、3週2日』、TSUTAYAで探したけどなかったです(涙)。時を置いてまた探してみます。
『あさま山荘への道程』は日本映画史に残しておきたい作品でしたね。若い人の感想を読んでいると、思想ではなく集団が問題なのであって、思想にかかわらずどんな集団にも起こりうる事件というとらえ方が多かったように思います。
バラバラとまとまりのないコメントで失礼(^_^;。
毎年、その時々で3本から5本くらい、良かったと思う作品が自然に挙がるんですが、今回10本選んでみて、正直自分でも「呆れた~」。なんでこんなのばっかになるの~(笑)。(作品を貶してるんじゃ勿論ないんです。ただ、あまりの片寄り方に・・・。)
後から、やっぱり『ドラゴン・キングダム』と『ウォーリー』入れれば良かった・・・なんて思うのにぃ(笑)。
『4ヶ月、3週と2日』は探して下さったんですね。どうもありがとう。でも、ああいう映画はやっぱり無いんだ・・・残念でしたね。
あ、それと、『あさま山荘への道程』の若い人の感想聞けて良かったです。むしろそういうとらえ方の方が健康な気がします。
いつも読んで下さって(そして書き込んで下さって)本当にありがとう!!
『レボリューショナリー・ロード』の感想も、ベストキャラも、とっても楽しみにしています。(でも、12時までに寝るの優先!で、どうぞ無理せずになさって下さい。)
私は1年間で10本くらいしか見てないような・・・(苦笑)
それでも、ムーマさんのおかげで観るようになった方です。感謝です。
「歓喜の歌」を観たかったなぁ。
あれは、チラシの絵がとっても素敵だったんです。
ムーマさんの感想を読んだら、見逃したのがとても残念に思えてきました。DVD買おうかな(^o^)v
DVDと言えば、ついに「ウォーリー」を見逃してしまいまして、さらに黒滝が「DVDの方がいいかもよ」と言うので、DVD化されるのを待っているところです。
私も、数年前までは年10本くらいでした。(長年?ずっと「おうちでビデオ」派だったんです。)
私も、chonさんから面白い映画教えて貰ってますよね。(『キッチン・ストーリー』とか、『ナイトメア・ビフォア・クリスマス』とか。あ、『ミリキタニの猫』も。)
DVDとかでいいのがあったら、また教えて下さい。
『歓喜の歌』、面白かったですよ~。
登場人物みんな、どこか可愛げがあって、chonさんには特にオススメかも(笑)。(ほんと、あの絵の雰囲気なんです。)
『ウォーリー』は思ったより早く終わっちゃった感じで、残念でしたね。(10代の友人も、ギリギリに観に行ってました。)
早くDVDが出るといいですね。
ご覧になったら、また感想教えて下さい。