トヨタカップでのあの「幻のスーパーゴール」
あのゴールにまつわる、あるサッカー少年とプラティニの話を聞いたことがある・・・
題して「将軍と少年の無言の約束」とでも言おうか・・・
来日早々の練習場での出来事だった。練習を終えて、バスに乗り込むユベントスの面々。
メンバーがお揃いのチームジャージ姿であるのに、1人だけロングコートに身を包み
「オーラ」を放つプラティニがそこに居た。
近づきがたい雰囲気に、集まったファンもサインを求めたいのに求められない
状況だったという。ただ、そこは「プロ」ファンの要望に応え、サインをするも
終始無表情であったらしい。
宿舎に戻る準備が整い、いざ、バスが走り出そうとした。
プラティニはバスの最前部の位置に、今は無きガエタノ・シレアと席を並べていた。
少年はプラティニを見送るかのように、バスの正面に立っていた。
少年は、プラティニに向かって、親指を立てるポーズをしてみせた・・・
そう、そのポーズは、EURO84年の準決勝ポルトガル戦で勝利した後
控え室に戻る、プラティニがファンの前で「決勝での勝利を約束した」
あのポーズだった。
「僕のために、あなたのゴールで勝利を導いて欲しい!」
少年は、そのポーズに願いを込めていたのだという・・・
その瞬間!
それまで表情1つ変えなかったプラティニが、にこりと笑い、
少年に向かい「Vサイン」を掲げたのであった。
「約束しよう!僕のゴールで勝利を約束するよ!」とでも伝えているような・・・
Vサインであった。
プラティニが約束を果たす瞬間がやってきた。
その少年の話によると、プラティニが胸でボールを止めた瞬間に
「全身に衝撃が走った!」という。
プラティニが胸トラップをし、相手ディフェンスを浮き球で交わし
左足でシュートを打つというあの一連の動作がイメージできたというのである。
プラティニが発した「テレパシー」といったら良いのだろうか?
スタンドでは座席に座りながらの観戦が当たり前の時代に、少年は
誰よりも早く席を立ち上がり、ボールの軌跡を追いかける前に
「入った~ぁっ!」と叫んだという・・・
ご存知の通り、ゴールは記録されなかったが、プラティニ自身も後に
「生涯最高のゴール」と語ったという最高の形での約束を果たしたのだ。
あのプレーの裏側には誰も知らないこのような話が隠されていたのだ。
♪だ~れも知らない、知られちゃいけ~ない~ この少年はだ~れ~なのか~
ホント、この少年、うらやましいですね。
雅104