「ジキルとハイド」の映画と言えば、サイレント映画の白黒を学生時代に見たような記憶があるのですが、スペンサー・トレイシー主演の映画(1941年)くらいしか観ていないような気もします。
結構制作されているんですね。
どの『ジキルとハイド』かと思って見ることにしたら、何とジュリア・ロバーツとジョン・マルコヴィッチ主演(1995年制作)だったので、ちょっと驚愕。
★監督 スティーブン・フリアーズ(1996年制作)
ジョン・マルコヴィッチ、ジュリア・ロバーツ主演
ジュリア・ロバーツって、イマイチタイプじゃないせいか、ノーチェックでしたけれど、こういう映画にも出ているんですね・・・・
前髪を垂らすとこうなるのね・・・(何と言うか、映画『チャーリー・ウィルソンズ・ウォー』の彼女とは180度違う地味ィ~なお顔になります)という発見もあったけれど、
家政婦メアリから見たジキルとハイド・・・・
映画はそういう視点で作られているせいか、その家政婦は字が読める知的関心が高い家政婦ということで、他の使用人や奉公人たちとの違いがアピールされ、ハイド博士の目に留まったきっかけにしています。脚本が先だったのかジュリア・ロバーツの配役が先行しての配慮なのか、ちょっと興味がありますね。
けれど、彼女を過去に父親から性的虐待を受けた娘という役柄にすることでジキルとハイドに象徴される男性の二面性や二重性と女性の側のそれを対比させる形にした構図は、何だか「ジキルとハイド」の面白さを台無しにしているように思えました。
それにしても、高級娼婦の娼館経営者のグレン・グロースには、驚愕させられました。きっと楽しんで役作りをしたに違いないと。
笑えました。この口元をご覧下さい。大きくはみ出して塗っている口紅の朱色の凄さ!まさに19世紀高級娼婦館の、無教養で強欲なだけの女経営者というイメージのメイキャップ!
ジョン・マルコヴィッチ主演なので、当然原作とはかなりラインが違う映画になっているだろうなァと了解しつつ見たわけですけれど、その彼もイマイチだったなあと。
(魂の抜け殻のようなジキル博士)
(生を謳歌するエロいハイド氏)
映画では19世紀のロンドンといったイメージの街ながら、ジキル博士の屋敷の研究室(敷地内の地下から入る)は、中がモダンな印象で、そういうところにも拘りを見せているのは分かるのですが・・・・魂の救済物語=愛の物語に作り変えたかったらしい意図のせいで駄作に終わってしまったようです。欠伸が出てしまったほどで・・・・
ちなみに、『ジキルとハイド』の映画がなぜ繰り返し作られるのかと言えば、創作意欲を刺激する素材だということ以上に、やはり面白いからなのだと思います。その面白さを大事にしてもらいたかったなあと。
以下、いくつか挙げてみましたが、
ストレートに「ジキルとハイド」というタイトルにしたものだけでも、まだあるようで、TVドラマやジキルとハイドをモチーフにしたようなものならきっと数え切れないくらいあるのではないでしょうか。
★巨匠ヴィクター・フレミング監督(1941年制作)
スペンサー・トレイシー主演、ラナ・ターナー、若い頃のイングリッド・バーグマンも。
(名優スペンサー・トレイシー)
★ルーベン・ムアーリン監督(1931(32?)年制作)
フレデリック・マーチ主演
(2枚組みDVD)
(左がフレデリック・マーチ、右はスペンサー・トレーシー)
★モーリス・フィリップ監督(2002年制作)
ジョン・ハナー、デヴィッド・ワーナー主演
★BBCでも制作版。
★チャールズ・J・ヘイドン監督(1920年制作サイレント映画)
ジョン・バリモア主演
★ジョン・S・ロバートソン監督(1932年制作サイレント映画)
ジョン・バリモア主演のリメイク版でしょうか。
ホラー系、サスペンス系、幻想怪奇系、サイコ系、どんな映画になっているのでしょうね・・・・。こうしてアップしているうちにいつか見比べてみようかなという気になってきました。ホラー映画は好きですが、実は『ジキルとハイド』をホラー映画だと思っていないのかもしれませんね。