藤島華僊
嫦娥は羿という勇士の神の妻で美しい仙女だったが、ある日夫が西王母からもらった不死の薬を盗み飲み、月に逃げたため、その報いとして醜い蟇蛙に変り、今でも月に住んでいるという。
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西王母がくれた不死の薬は、本当は人間のためのものだったそうです。それを嫦娥が盗んだため、人間は不死ではなくなり、みな時期がくれば死ぬようになった。死の起源の説話でもありますね。人間は昔から死を恐れ嫌がっていた。できるなら永遠に生きていたいと思っていた。だがどうしようもなく死はやってくる。その苦悩のわけを知りたいと思った時、月が答えてくれたのでしょう。そのほうが幸せなのだということは、もうとうに人間にもわかっている。