日本列島旅鴉

風が吹くまま西東、しがない旅鴉の日常を綴ります。

最後のランチ - 唐人飯店

2021-06-15 21:18:49 | B級グルメ
先日少し切ない場面がありました。八重洲界隈の再開発がいよいよ進み、前の職場が入居していた建物も解体工事の囲いに覆われていたのです。さらに愕然とさせられたのは、昼休みの主戦場だった一帯が根こそぎ破壊されたことでした。前の職場に勤めた二年余りの年月が、自分にとっては遅い青春だったと今も思います。その頃の面影が破壊される光景を目の当たりにして、いいようのない切なさを感じずにはいられなかった次第です。しかし全てが失われたわけではありません。当時こよなく愛用していた一軒が、新天地で再出発したと風の便りに聞きました。それも、自宅から難なく行ける神保町です。そうと分かれば行かずにはいられないのが人情というものでしょう。「唐人吉華」改め「唐人飯店」を先日再訪してきました。
新天地として選ばれたのは、皮肉にも再開発により建てられた高層ビルの飲食街です。蕎麦屋の居抜きで入ったという噂通り、店内の設えは純和風で、中華料理屋の象徴たる円卓がありません。しかし女将は健在で、麻婆豆腐の味もそのままでした。麻婆豆腐といえば、このblogでも絶賛したのは「露天」です。あちらと比較した場合、花椒を効かせた辛さは共通する一方、端的に異なる点が二つあります。一つは豆腐が細かく切り分けられることです。もう一つの違いとして、とろみが少なく、大胆にいえば肉味噌に近い味わいをしていることが挙げられます。旨味をさらに凝縮したような味わいが秀逸なのです。ただし、久々故の些細な失敗もありました。大辛を選んだところ辛すぎたのです。空調が温めの設定だったこともあり、中盤以降は流れる汗に難儀しました。夏の間は再訪を控え、辛さとしても中辛、あるいは普通にとどめた方がよいかもしれません。
「最後のランチ」なる表題の由来は「最後の晩餐」です。今の職場が赤坂から現在地へ移転することになったとき、最後に寄るならここだと思える店を綴っていったのでした。このblogを開設したのは今の職場に移る半年前です。その頃に同じ発想が浮かんでいれば、当店も最後の五軒、いや三軒には入ったでしょう。その店が、場所は変われど守られたことを喜ばしく思います。

唐人飯店
東京都千代田区神田神保町1-103 東京パークタワー102
03-3291-0213
1130AM-1430PM/1700PM-2100PM(LO)
土日祝日定休
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