日本列島旅鴉

風が吹くまま西東、しがない旅鴉の日常を綴ります。

第三玉の湯

2020-07-21 22:31:40 | 温泉
大星湯を訪ねてみて気付いたのは、地図上の距離と体感上の距離が必ずしも一致しない可能性です。かような観点から目を付けたのは神楽坂の一帯でした。手始めに訪ねたのは第三玉の湯です。
自宅からの道順でいうと、外濠の土手沿いを飯田橋まで走り、そこから神楽坂を登り切った先にあります。一回左折するのを除き、ほぼ道なりという分かりやすい経路です。事前に地図を見る限りでは、神楽坂上の交差点から斜めにそれた路地裏にあるようでした。ところが表口は通り沿いにありました。しかるに今まで全く気付かなかったのは、少しだけ奥まった場所にあるからでしょう。繁華街の至近に宮造りの銭湯が残っているとは盲点でした。

一昨年に改装されたと聞いていました。実際のところ、各所の造りは現代的です。つまみで湯温を調節でき、一回押せば適量のお湯が出て、シャワーとカランも切り替えられるという仕組みを、少なくとも銭湯で見かけたことはあまりありません。そのような事情もあり、浴場にはビジネスホテルの大浴場のごとき雰囲気があって、見方によっては無味乾燥です。
しかし、何軒か訪ね歩いたことにより、改装されても天井回りに古さが残るということに気付いてきました。こちらでも、脱衣所の格天井は往年のままの形で残ります。いわゆるダブルルーフの客車を彷彿させる浴場の天井は、「塩湯」と同じ造りです。これが関東地方における銭湯建築の典型と、後々知ることとなります。
銭湯通いを通じて明確に意識し始めたのは、銭湯めぐりと湯めぐりが似て非なるものだということです。佇まい、雰囲気、建築様式の違いを知り、その街の日常の一端に触れるのが真髄という点で、お湯が命の湯めぐりとは本質的な違いを感じるとでも申しましょうか。銭湯の楽しみがさらなる次元に昇華されたことは、軟禁生活がもたらした数少ない恩恵の一つとなりました。

★第三玉の湯
東京都新宿区白銀町1-4
03-3260-9326
1500PM-100AM(最終受付)
水曜定休
入浴料470円
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