日本列島旅鴉

風が吹くまま西東、しがない旅鴉の日常を綴ります。

海を渡って沖縄へ 2018 - hinode

2018-10-28 21:20:31 | 居酒屋
今夜はなじみの店へ行くつもりだと申しました。脇目も振らずに乗り込んだのはhinodeです。
全国主要都市の中でも、那覇は教祖の導きへの依存度が最も低いところの一つで、なじみと呼べる店はいずれも自力で開拓してきました。中でも最も古くから愛用してきたのは「八合一升」でしたが、残念ながら一昨年限りで閉店しました。その結果、最も旧知の店として残ったのが、斜向かいにあるhinodeです。長旅を終えて沖縄に上陸を果たし、挨拶代わりにどこへ行くかと考えたとき、いの一番に浮かんできたのはここでした。
純然たる居酒屋だった「八合一升」と違い、こちらはダイニングバーとでも形容した方がよさそうな小洒落た店構えをしています。男一匹乗り込むにはいささかの思い切りを求められる雰囲気であり、実際のところ他に一人客を見た記憶がありません。とはいえ虎穴に入らずんば虎児を得ずとの諺もあります。いざカウンターに向かえば全く気兼ねがありません。これも店主による軽妙な客あしらいと、和洋中、ならぬ和洋沖何でもござれの幅広い品書きのおかげでしょう。
その品書きに、今回トマトキムチなる珍品が加わりました。トマト風味のキムチなのか、トマトを漬けたキムチなのかをあえて聞かずに注文すると、差し出されたのは後者でした。漬けてもなお青いと分かるトマトは、生ではいただけそうにありません。しかし、キムチにすることで特有の酸味が活かされ、なおかつ青いトマトの瑞々しさも感じることができます。完熟したトマトでは溶けてしまって使えない、青いトマトに限るというのが店主の弁です。
特別な食材を使わない代わりに、素人には真似のできない着想で勝負するところは、弘前の「はすや」の店主を彷彿させます。ただし、薬味を効果的に使う「はすや」の店主とも一味違う、いわば作風とでも表現すべきものが感じられました。今や常備の肴として定着した「大人のポテサラ」と同様、研究の跡が窺われる力作です。

hinode
那覇市牧志1-6-13 グリーンヒルハイツ1F
098-863-2332
1800PM-2400PM(LO)
年末年始休業

オリオン
暖流
三点盛り
大人のポテサラ
島ダコこオリーブ和え
トマトキムチ
ソーメンチャンプルー
手作りブルーベリーケーキ
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海を渡って沖縄へ 2018 - ロコイン沖縄

2018-10-28 20:33:11 | 沖縄
港から宿への移動手段が未知数だった中、一時間に二本のバスがたまたま通りがかったため咄嗟に乗車。幸運にも宿まで最短経路かつ最安値でたどり着きました。投宿後、船上で浴びた飛沫を洗い流し、ひとまずさっぱりしたところです。

往路を船旅にできるばかりか、現地に三泊できるのも今回の行程の目玉だと申しました。滞在中世話になるのは定宿のロコイン沖縄です。無料だった駐車場が一泊千円となってしまい、かつてほどの圧倒的な優位性が失われた結果、去年は二泊のうち一泊を他の宿に切り替えるという自衛策をとりました。しかし、仮にそうしたところで五百円も違いません。わずかな金を出し惜しむより、慣れたところがよかろうと思い至った次第です。
そのようなわけで、那覇ならここという点では迷いがなかったものの、三連泊で押さえた後、よくよく考えると違う手もあったことに気付きました。たとえば中日に名護で泊まれば、長らく無沙汰している北部を旅するという選択肢も出てくるからです。しかし結局見直しはしませんでした。北部へ行ってみたいのもさることながら、それ以前に那覇でもう一泊したいという考えをかねがね持っていたからです。
十数年通い続けた経験から、沖縄の呑み屋がはしご酒には向かないことに気付いてきました。実際のところ、近年は連泊しながら三軒ほどしか行けないという結果が続き、訪ねる店も固定化されていたのが実情です。それだけに、もう一泊できれば多少なりとも選択肢は広がるだろうと思ったわけです。今日のところはなじみの店へ行くつもりですが、明日は趣向を変えるのも一興だろうと考えています。

それにしても、下船した直後こそ感じなかったものの、しばらく経ってから足取りが覚束なくなっていることに気付きました。船上で揺られ続けたことにより、三半規管とやらがそちらに順応した結果、陸の上ではかえって違和感を覚えるのかもしれません。
船酔いするほど揺られた経験は他にもあります。しかし、下船後にふらついたのは初めてです。この状態で酔いが回ったときはどうなるのでしょうか。今から早速試してきます。
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海を渡って沖縄へ 2018 - 那覇港

2018-10-28 19:34:20 | 沖縄
本部からは波、風、飛沫ともに収まり、甲板で暮れ行く空を見届けました。とっぷりと暮れたところで那覇港に到着。25時間20分に及んだ長旅はこれにて完結です。
昨晩の錦江湾では劇的な場面に遭遇しましたが、今日も印象的な黄昏時の光景に出会いました。秋らしい薄雲が茜色に染まる中、残波岬と一目で分かる灯台が見え、やがて真横を通過しようとしたその瞬間、またも陸地で花火が上がったのです。昨夜は花火で見送られ、今日は花火で出迎えられるとは出来過ぎています。全くの偶然だった昨日の花火に対し、こちらでは船の通過に合わせて毎日上げているのかもしれません。とはいえ、仮にそうだとしても粋な計らいではあります。
入港の案内放送が流れたとき、「最終港」なる一言を聞いて、そこはかとない感慨が押し寄せてきました。決して広くはない川幅を目一杯に使った、180度回頭してからの接岸にも見応えがあり、最後までめくるめく場面の連続でした。それを含め、船旅のよさをしみじみ実感した次第です。
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海を渡って沖縄へ 2018 - 本部港

2018-10-28 17:14:45 | 沖縄
茶花港を出て左の方へ旋回すると、いよいよ沖縄本島が見えてきました。しかし飛沫がさらに強まり、甲板に立ち続けられる状況ではありません。食堂のテーブルから窓越しに眺めつつ、入港間近となったところで外に出ました。最後に寄港するのは本部港です。ここからの乗客は当然なく、またここから積み込む荷物もありません。荷下ろしが済み次第出航すれば、30分ある停泊時間を使い切ることはないでしょう。寄港地の変更により生じた遅れを、多少は回復できそうです。
ちなみに、日が傾いてきたため再び雨合羽を羽織りました。波がようやく収まってきたのか、与論島を出てからはそれほど揺れを感じません。飛沫さえ凌げるようなら、このまま日が沈むのを見届けるのも一興でしょう。
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海を渡って沖縄へ 2018 - 茶花港

2018-10-28 14:27:41 | 九州
腹が満ちるとどうしても眠くなります。伊延港を出航後、昼寝をしてから甲板に出てきました。続いて寄港するのは与論島の茶花港、沖永良部島に続いての寄港地変更です。
あくまで臨時の寄港地だけに、こちらも伊延港と同様ささやかです。防波堤もない岸壁には、屋根付きのベンチとコンテナを改造した待合室があるに過ぎません。しかし、ほぼ外海に晒されていた伊延港と違い、こちらは弓形をした長い入江の隅にあります。それを含めた景観としては、むしろ亀徳港に近いという印象です。
ただし、徳之島とは明確に違う点もあります。一つは海の青さ、もう一つは暖かさです。昨夜から一貫して羽織ってきた雨合羽を、伊延港に着いたところで脱ぎました。ただし、依然として半袖シャツは羽織っています。一昨年などは、同じ10月下旬にもかかわらず辟易するほどの蒸し暑さでしたが、今日は朝から汗一つかきません。与論島でこれなら、沖縄に渡ってもさほどの違いはないでしょう。今回の滞在では秋らしさを実感することができそうです。
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海を渡って沖縄へ 2018 - レストラン

2018-10-28 12:21:38 | B級グルメ
荷役作業の一部始終を見届けたいのはやまやまながら、空腹感が限界に近付いてきました。船内のレストランで遅い朝食兼昼食をいただきます。
25時間の長丁場にもかかわらず、乗船にあたって食料の調達をしませんでした。これは、船内のレストランがごく良心的な値段と分かったためです。乗船前にラーメンをいただいてすっかり満腹になったため、夜は缶ビールの一本もいただければ十分だろうと思っていました。翌日の朝食と昼食をレストランでいただけば、食料の必要はなかろうと判断したわけです。
ところが足をすくわれました。名瀬港に停泊中、開店を知らせる放送があったため、出航後しばらくしてから向かったところ、早々と店じまいしていたのです。その理由が分かったのは沖永良部に着いてからでした。荒天につき停泊中のみ営業との案内があったのです。またも逃せば那覇まで補給の機会はありません。その結果、とるものもとりあえず駆け込んだ次第です。
元々朝はカレー、昼は定食にでもしようかと思っていました。それが一度だけになってしまった現状に鑑み、両取りできる唐揚カレーを注文。カレーはありがちな業務用といってしまえばそれまでですが、もちろん悪くはありません。濃く味付けされた唐揚も自分好みです。この唐揚に生野菜と玉子スープもついて800円なら、船上のレストランとしてはきわめて良心的といってよいでしょう。次の乗船機会があったとしても、またここの世話になりそうな気がします。ただし、名瀬での荷役作業を見届けると、朝食を逃す可能性は高いため、弁当を一食分だけ買って乗るのが正解ということになりそうです。
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海を渡って沖縄へ 2018 - 伊延港

2018-10-28 11:56:12 | 九州
雲は多めながらも一応晴天、気温も暑からず寒からず適度です。しかしながら飛沫がひどく、甲板に立ち続けるのは憚られます。徳之島が右後方に遠ざかる中、潮時と見て船内に戻り、沖永良部島がいよいよ迫ったところで再び外に出てきました。次なる寄港地は伊延港です。
名瀬から那覇までの間に四ヶ所ある寄港地のうち、最も入港しづらいのが沖永良部島の和泊港です。前回乗船したときも、ここだけは条件付となっていました。そのときは結局予定通りの入港となったものの、亀徳港にもまして外海に晒されており、宜なるかなと納得した経験があります。ましてや他の三ヶ所までが条件付となった今回、果たしてどうなるのかと思っていたところ、今度は寄港地の変更という措置が採られました。九年も前のおぼろげな記憶とはいえ、亀徳港のように岸壁を二つ造れるほどの港ではなかったような気がします。さりとて抜港が頻発しては生活に支障が出ることから、荒天時は方角の違う港に入ることで、波風を避けるという知恵が生み出されたのでしょう。
こうして着いた伊延港、思った通りのささやかさです。二階建ての待合所があった亀徳港の旧岸壁に対し、こちらの待合所は屋根付きのベンチと形容した方が合っています。これでは乗船手続もできそうにありませんが、さりとて周囲には事務所らしきものも見当たりません。本来の和泊港で手続だけ済ませた後、こちらへ移動してくる仕組みなのでしょうか。真相のほどはともかく、ささやかな岸壁に本土からきた大型船が着岸する光景は貴重です。
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海を渡って沖縄へ 2018 - 亀徳港

2018-10-28 09:26:36 | 九州
夜明けの一部始終を見届けたいのはやまやまながら、港外に出るやいなや風が強まり、船体が大きく揺れ始めました。これではまたも船酔いしかねません。やむなく寝台に戻って一寝入りすると、目覚めたときには揺れがすっかり収まっていました。しかしその直後、横揺れ防止装置を格納するとの案内があり、船が再び揺れ始めるという経過です。格納するのは徳之島への入港が近付いたためでもあります。ここでまたもや新たな発見がありました。
名瀬を出た直後、亀徳港の旧岸壁に着岸するとの案内がありました。いよいよ入港が近付くと、左前方に見覚えのある待合所が見えてきました。しかし船はそこを素通りしてさらに進み、右前方にあるもう一つの岸壁に接岸しました。船上から眺めれば目と鼻の先とはいえ、川を挟んだ反対側にあるため、歩けば10分は下らなさそうな距離です。
真正面が外海となるあちらの岸壁に対し、旧岸壁は直角に交わっています。このことから分かるのは、旧岸壁が横風用の滑走路のような役割を果たしているということです。風はむしろ左舷の方から吹き付けてはいるものの、波についてはたしかに船首方向から受ける形になります。名瀬と違って湾と呼べるほどの入江がなく、申し訳程度の防波堤で守られているに過ぎないため、荒天時にはこうすることで波を避けているのでしょう。離島における生活の知恵が、フェリーの入港にも体現されていることになります。
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海を渡って沖縄へ 2018 - 名瀬新港

2018-10-28 05:43:48 | 九州
奄美大島の名瀬新港に着きました。一晩かけて航海の半分弱を終えたことになります。一時間以上に及ぶ荷役作業がようやく一段落し、あと少しで出航となりそうです。

九年前に一度訪ねただけということもあり、当時の記憶もおぼろげになっていた中、湾に入ると埋もれていた記憶が甦ってきました。左側に新市街、右側に旧市街があり、最も奥に古い港と繁華街があって、そのやや手前に造られたのが名瀬新港です。しかし、懐かしさに浸る間もなく、再びめくるめく光景が展開されました。こちらが着岸するや荷下ろしが始まったのです。決して広くはない岸壁で、何台ものフォークリフトが職人芸によって操られる光景は、錦江湾の航海と同様に見応え十分でした。
それをしばし眺めて気付いたことがあります。下ろされるのが貨物ばかりということです。後から車も下船してはきたものの、宅急便のトラック二台と自衛隊の車両が数台、それに片手で数えられる程度の乗用車と二輪車だけでした。新たに乗船してきたのも、車中泊の旅らしきワンボックスカーと商用車、合わせて数台に過ぎません。その代わり、旅客は乗船、下船ともかなりもので、離島航路につきものの、部活の遠征らしき高校生らの姿もありました。
一部始終を眺めていて思ったのは、この航路が長距離フェリーよりも離島航路に近いということです。長距離フェリーというと、カーフェリーとほぼ同義のように理解されがちのところ、この航路に関する限り、カーフェリーとは明らかに異なります。離島航路の貨客船に、車もついでに載せているのが実態なのだと気付きました。虚飾を排した簡素な設備も、離島航路の一種と思えば宜なるかなです。

今や沖縄への航空券が数千円で手に入る中、鹿児島から沖縄まで通しで乗るのはよほどの物好きに限られます。それでも航路が続いているのは、中間の離島にとって、この航路が欠かすことのできない生活の足だからでしょう。コンテナのみならず、長尺の建材から日用品の段ボールまで、あらゆる生活資材が荷下ろしされていく光景が、そのことを雄弁に物語っているかのようでした。
奄美大島から与論島まで四つの島に寄港しつつ、本土と沖縄とを一日がかりで行き来するこの航路こそ、離島航路の真打ちとはいえないでしょうか。この先の航海も楽しみです。
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海を渡って沖縄へ 2018 - 二日目

2018-10-28 04:15:09 | 九州
おはようございます。昨夜は十時を待たずに早々と休みました。前夜ほとんど休めず疲れていたのもさることながら、湾外へ出てからいよいよ波が高くなり、そのままでは船酔いしかねなかったからです。しかし、海域が変わったためか、目覚めたときには船体が大分安定してきたのに気付きました。昨夜は五時とされていた名瀬の入港予定時刻も4時35分に繰り上がっています。順調に航海してきたということでしょう。こちらにとっては好材料です。
前方には名瀬市街の明かりが見えています。まずは入港の一部始終を見届けるつもりです。
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