日本列島旅鴉

風が吹くまま西東、しがない旅鴉の日常を綴ります。

晩秋の大地を行く 2018 - しらかば

2018-10-01 21:57:04 | 居酒屋
今回旅程を組むにあたって悩ましかったのは、旭川と釧路をいかに両立させるかでした。道東での花見と冬場の汽車旅が年中行事だった頃は、北海道へ渡る機会が年に何度かあったのに対し、いずれも消滅してしまったのがそもそもの発端です。
それでも去年は、日数が例年以上に長かったため、釧路に三泊した上で旭川にも泊まるという芸当ができました。対する今年は、五月に花見の機会を得たものの、いずれにも足を延ばすことができませんでした。つまり、今回訪ねることができなければ、次の機会は来年になりかねないということです。しかも、今回は例年とおおむね同じ日数に収めなければならないという制約があります。週末を避けるという条件まで加わると、月曜に一方へ、金曜にもう一方へ行くしかないということになり、間には三日しか残りません。
加えて厄介なのは、「万年青」が月曜定休になってしまったことです。これにより、月曜に旭川、金曜に釧路へ行く分にはよいものの、釧路へ先に行くのであれば、「万年青」を切るか、連泊するかのいずれかにならざるを得ません。とりあえず後者を前提にしつつ、第一夜は「しらかば」の暖簾をくぐりました。

お姉さんからは遅いお着きでとの第一声が。カウンターの中ほど、奥側へまっすぐ延びた一角には三名の先客がいます。そうなると、こちらは手前か奥の二者択一です。まず案内されたのは斜めに延びた手前のカウンターですが、一瞬の間を置いた後、奥の方がよいと申し出ました。というのも、玄関の近くにTVがあって、その音量がわずかとはいえ耳障りだったからです。それに加えて、奥から見渡す眺めがよいという事情もあります。
玄関からまず斜めに、次にまっすぐ延び、そこから直角に折れ曲がって終わるという、台形のようなカウンターが当店の特徴です。直角に折れ曲がった部分ではおでん舟が湯気を立て、すぐそばには炉端もあります。それらがほどよい近さにあるだけでなく、正面の突き当たりには玄関があり、暖簾の向こうの通りが見えるという寸法です。やはりここが当店の特等席だと改めて思います。

大胆にたとえるならば、会津の「麦とろ」に似ているといえなくもありません。お通しが何品も出てくる上に、品書きはあってないようなものだからです。今日はまず氷頭なますと切り干し大根が出され、箸の進み具合を見計らって当店名物の牡蠣豆腐が出てきました。その後女将からおもむろに発せられたのは、何を焼くかとの一言です。何があるかと返したところ、例を挙げつつ何でもあるとの返答が。その結果、筆頭に挙がった秋刀魚と、毎度おなじみエゾシカのやきとりを所望しました。
その秋刀魚は、何度も裏返したり、帆立の貝殻で覆ったり、団扇で扇いだりしながら仕上げられ、ほどよい間合いで出てきました。陳腐な言葉を借りるなら、脂の乗りが違います。それは昨日の戻り鰹についても同様でした。今が最もよい時期だというのが女将の弁です。拍子抜けする暖かさを含め、晩秋というより秋たけなわの形容がふさわしい夜でした。

しらかば
釧路市栄町2-3
0154-22-6686
1730PM-2330PM(LO)
日祝日定休

福司二合
氷頭なます
切り干し大根
牡蠣豆腐
おでん三品
エゾ鹿やきとり
秋刀魚
しじみ汁
煮豆
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晩秋の大地を行く 2018 - 国道38号線

2018-10-01 21:46:07 | 北海道
国道38号線を走りに走って釧路に着きました。出発からの走行距離は840kmに達し、今日だけで350kmほど走ったことになります。北海道を旅する場合、一日の走行距離は150kmから200km程度が平均的で、それを越えるとかなり走った方というのが目安です。ましてや300kmを越えることは滅多にありません。やはり釧路は遠いと実感します。

道東道で先を急ぐか、38号線で延々行くかの二者択一に迫られたとき、時間が押しているにもかかわらず、比較的迷いなく後者を選びました。以前も申した通り、38号線には独特の旅情があるからです。
帯広からは、十勝平野を直線主体で貫く快走路が続きました。浦幌から峠を越えて釧路に下りると、今度は海岸段丘を上り下りする線形に一変し、白糠からは再び直線路となりました。ただし右手は太平洋で、時折霧が立ち込めてきます。彼方に見える釧路市街の灯りを目指してなおも走り、旧道で市街に入り、最後は幣舞橋のロータリーを一周して完結という顛末です。釧路への旅はやはりこれだと実感させられました。
何度も走った経路ではありますが、幕別を通過したあたりから、明らかに交通量が少ないのに気付きました。釧路市街に入るまで、大半の区間が一人旅という、今までならおよそ考えられなかったような状況でした。阿寒まで延長された道東道に、長距離を行く車のほとんどが流れたのでしょう。昨年逆方向に走ったときは、さほどの変化を感じなかったはずが、夜間になると目に見えて交通量が減るようです。
起承転結のある車窓はそのままに、交通量まで減ったとすれば、こちらにとっては願ったり叶ったりです。今回の道中で走るのはこの一回限りになりそうですが、次回釧路へ行くときも、この経路を一度は走ってみたいものだと思います。
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晩秋の大地を行く 2018 - モスバーガー帯広駅前店

2018-10-01 18:59:19 | MOS
かなりの駆け足ではありましたが、帯広三部作をどうにか完結させることができました。トリを務めるのはもちろんモスバーガー帯広駅前店です。
往路か復路かの違いはあるものの、移動の最中の慌ただしい中で立ち寄るという状況は、奇しくも去年と同様です。とはいえ短い時間であってもここに寄れるということ自体に意義があります。道東での花見が四年前を最後に途絶え、北海道新幹線の開業後汽車旅も事実上不可能となってしまった中、帯広に立ち寄る機会は秋の長旅以外にありません。今回を逃せば次の機会は来年になり、その時点で二年もの間が空いてしまうと予想されます。それだけに、多少無理してでも立ち寄りたかった次第です。健在ぶりを確かめられたことを幸いに思います。

モスバーガー帯広駅前店
帯広市西3条南10-15
0155-21-2555
700AM-2400PM
第558号
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晩秋の大地を行く 2018 - 白樺温泉

2018-10-01 18:30:42 | 温泉
インデアンと並んで立ち寄りたかった場所があと二つあります。その一つが銭湯です。銭湯なら釧路にもあります。しかし、今のところ釧路には連泊を予定する一方で、帯広の銭湯に寄れるのは事実上今日限りです。市街の至る所に温泉があり、しかもそれらが皆温泉という状況を、むざむざ見過ごす手はありません。手近なところを探して飛び込んだのは「白樺温泉」です。
ここより近いところもあったのです。しかし、スーパー銭湯のごとき大型の施設らしいのを敬遠しました。もちろん源泉掛け流しではあり、入浴料も銭湯と変わりません。とはいえ、ほんの少し足を延ばせば雰囲気との両立も図れる以上、その方が得策と考えた次第です。そしてこの狙いは的中しました。
南へ向かう幹線道路を左折して、住宅街を貫く道を走っていくと、暗闇に浮かび上がる縦長の大きな看板が見えました。昔ながらの銭湯というよりも、津軽によくある温泉銭湯のような趣があり、館内の雰囲気もまさしく外観通りです。しかし、碧色を帯びた滑らかなモール泉が、十勝の温泉であることを実感させてくれます。その源泉は洗い場にも使われる贅沢さです。時間が押してはきたものの、その価値はあったと思える名湯でした。

★白樺温泉
帯広市白樺16条西12丁目6
0155-36-2821
1000AM-2300PM
入浴料440円
泉質 アルカリ性単純温泉(アルカリ性低張性高温泉)
泉温 44.9度
pH 9.3
湧出量 毎分116リットル(動力揚湯)
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晩秋の大地を行く 2018 - インデアン

2018-10-01 17:23:09 | B級グルメ
38号線を延々行くのも芸がありません。新得からは北側を並行する道道75号線に入りました。交通量のほとんどない直線路をひた走り、帯広市街の手前で241号線に入り南下。38号線と合流する交差点に目当てのインデアンがあります。立ち寄るのは西18条店です。
去年の道中では図らずも四度の機会を得て、三種あるルーの全てを試しました。しかし、一年ぶりともなればインデアン以外に考えられません。大盛をいただくにもやぶさかでないところ、夜の部への影響に鑑み見送るも、アルマイトの深い器にぎっしりご飯が敷き詰められ、並でも十分な満足感があります。昨日訪ねた「大地のテラス」のカレーも上々ではあったのです。しかし、北海道へ来てまでいただきたいと思うのは、やはりこれだと実感させられます。久々の味わいは格別です。
前回は往路で素通りしたものの、釧路の店舗へ二日続けて寄ることができ、帰りも十勝で二度の機会が巡ってきました。しかし、今回釧路の店舗を訪ねる時間はなさそうであり、帰りに十勝を通る見込みもありません。行くとすれば往路が実質ただ一度の機会だっただけに、どうにか立ち寄れたのを幸いに思います。

★インデアン西18条店
帯広市西18条北1丁目30
0155-41-5700
1000AM-2100PM
インデアン453円
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晩秋の大地を行く 2018 - 幾寅駅

2018-10-01 15:31:29 | 北海道
山部から先は国道38号線と線路が大きく離れます。再びしたところに現れるのが、映画「鉄道員」の幌舞駅こと幾寅駅です。中間の三駅を飛ばし、これでようやく去年の進行に追いつきました。しかし、追いついただけということは、十勝を素通りするしかないということでもあります。次第に時間が押してきました。
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晩秋の大地を行く 2018 - ホクレン

2018-10-01 14:15:13 | 北海道
一昨日は燃料切れという前代未聞の失態を演じてしまいました。しかし、北海道へ渡る直前だったのはむしろよかったともいえます。北海道での燃料切れは、より深刻な事態をもたらしかねないからです。二の轍を踏まないためにも、早めの給油を心がける必要があります。燃料計が半分を切ったところで、山部にホクレンの給油所が現れたため、こちらで道中二度目の給油を済ませました。
長年宇佐美に丸投げしてきた給油を、北海道に限ってホクレン主体に切り替えたのは前回の活動からです。有り体に言えば、宇佐美と同様ポイントカードで囲い込まれたともいえます。そしてこのカードに看過しがたい特徴があることに気付きました。裏側に発行した給油所の名が記載されるのです。今持っているのは昨秋上士幌で給油したときにもらったもので、ご丁寧にも「上士幌町農業共同組合 ホクレン上士幌セルフSS」とあります。
文字通り「もらった」ものであり、カードを所望したところそのまま手渡され、登録の手続きは一切ありませんでした。つまり、道内の給油所を片っ端から訪ね歩き、その都度カードをもらうことで、恰好の収集品ができてしまうということになります。
趣旨を逸脱しているのはたしかであり、お世辞にも褒められた行為とはいえないでしょう。しかし、上士幌にしてもそうですが、そうそう行けない僻地に限り、行った記念にいただく程度なら許されないでしょうか。今回は比較的再訪容易な場所だけに、わざわざ求めはしませんでしたが、ここぞという場所でいただくことはあるかもしれません。
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晩秋の大地を行く 2018 - 布部駅

2018-10-01 13:50:20 | 北海道
幾春別の炭坑に寄った後は粛々と移動。富良野市街を素通りし、「北の国から」ゆかりの布部駅にやってきました。ファサードに掲げられた琺瑯の駅名看板、正面から突き出た煙突など、北海道らしい特徴を持つ木造駅舎と、その前に立つ個性的な出で立ちをした松の木が健在です。
去年はここから駅に寄りつつ下っていき、狩勝峠を越えたところで暗くなりました。その後は自動車専用道を交えつつひたすら走り、どうにか釧路へ着くという結果でした。当時の記録を振り返ると、布部駅に寄ったのは12時台となっており、今の時点で一時間遅れていることになります。去年訪ねたばかりのところを、再び一から見ていくこともないため、適宜飛ばして進みますが、遅れを取り戻すのがせいぜいで、帯広に寄る時間までは捻出できないかもしれません。インデアンのカレーだけでもいただければよいのですが。
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晩秋の大地を行く 2018 - 唐松駅

2018-10-01 11:50:42 | 北海道
道央から釧路といえば、東京から仙台までには及ばないものの、新潟あたりへ行くとの大差のない距離です。一昨日仙台まで10時間半かかった以上、北海道の道路事情を考えても、悠長にはしていられません。しかしもうしばらくなじみの場所をたどっていきます。続いて訪ねるのは唐松駅です。
こちらも大型連休以来の再訪ですが、今回由々しき事態が起きているのに気付きました。マンサード屋根を頂く待合室の側面が、長年の重みに耐えかね歪んできているのです。屋内から見てみると、腰壁の化粧板が剥がれて浮き上がっており、壁際に造り付けたベンチも直線を保っていません。壁全体が老朽化して、重みを支えきれなくなっているということです。
路線の廃止後、荒れ放題だった駅舎が地元の方々によって再生され、こうして開放されるようになって久しくなりますが、老朽化がこれ以上進むと、維持して行くには早晩限界が出てくるかもしれません。こちらにできることがあるなら、微力ながらも貢献したいものですが。
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晩秋の大地を行く 2018 - 三笠鉄道村

2018-10-01 11:10:05 | 北海道
続いて訪ねるのは旧幌内駅こと三笠鉄道村です。前回訪ねたときは大型連休の影響もあり大賑わいでしたが、今回は一転して秋の休館日に重なりました。行き止まりの道道の終端という立地上、人っ子一人いないのはもちろんのこと、車の往来もほとんどなく、時折聞こえる鴉の声がもの悲しげに感じられます。
来週いっぱいで記念館は冬季休業に入り、屋外展示の車両はビニールシートをかけられて、半年の永い眠りにつくことになります。動態保存の蒸気機関車は、一足先に今季の運行を終えており、動輪周りを外された状態で、鉄骨を組んだ足場に鎮座していました。思った以上に暖かく、晩秋の趣は今のところ乏しいのが実情ながら、冬支度は少しずつ進んでいると実感する光景です。
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晩秋の大地を行く 2018 - クロフォード公園

2018-10-01 10:24:04 | 北海道
セイコーマートで食料を買い、軒先を拝借しつついただくのが、北海道の旅によくある一幕です。しかし、手近なところに然るべき場所があるならその限りではありません。旧三笠駅ことクロフォード公園を訪ねました。
萱野を出た時点で雨は早くも上がっており、西の方には所々青空まで見えました。回復傾向はますます鮮明になり、路面は次第に乾き始め、時折日も射すようになっています。最新の予報を見る限りでも、これから雨が降ることはなく、風についても大したことはなさそうです。大型台風襲来と聞き、去年以上に身構えたはずが、あまりの呆気なさに拍子抜けさせられます。とはいえありがたい話には違いありません。
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晩秋の大地を行く 2018 - セイコーマート

2018-10-01 10:03:16 | B級グルメ
萱野を出て富良野へ向かう関係上、朝食の選択肢は必然的に三笠のセイコーマートとなりました。一昨年の活動では突如としてセイコーマートの出番が激減し、昨秋も中盤以降失速したものの、五月の活動では久々に復活を遂げ、今回は上陸二日目にして初登場です。前回姿を消していた、道産トマトいっぱいのミートパスタが復活したため即決。これにクリーミーカルボナーラとフライドチキンを組み合わせ、まずは手堅くまとめます。
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晩秋の大地を行く 2018 - 三日目

2018-10-01 08:16:03 | 北海道
おはようございます。北海道を旅していると、生活が規則的になってくるという現象が起こります。日没に前後して昼の部を切り上げ、一風呂浴びて買い出しを済ませ、晩酌して眠りにつくのと前後して日付が変わり、翌朝はおおむね六時台に目覚めるというのが典型です。昨夜も見事なまでに同様の流れでした。片付けは済んでおり、挨拶さえ済ませればすぐにでも出発できる状況です。先ほど俄に風雨が強まりましたが、それでも庇の下にいれば濡れずに済む程度にとどまっています。ともかく出発し、運転に支障するほど強まれば、その都度待機しながら進むつもりです。
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