仙台で呑むのも一年四ヶ月ぶりということになると、新規開拓するよりなじみの店を訪ねたくなるのが必然というもので、店の選択肢も限られてくるこの時間にあってはなおさらです。過去に仙台で訪ねた居酒屋は、最も多く通った「おのちゃん」と、教祖おすすめの「源氏」「一心」「かん」の合わせて四軒しかありません。このうち「源氏」と「一心」は既に看板ということで、選択肢はさらに絞られます。二つに一つの状況で最初に選んだのは「かん」です。
なじみといっても、この店に立ち寄ったのは二年前の正月一回だけです。延々四時間かけて常磐線を行く「スーパーひたち」を終点の仙台まで乗り通した後、石巻を通って女川まで往復し、夕方から早々に始めて牛タン二軒と居酒屋三軒をはしごしたとき、通算四軒目に立ち寄ったのがこの店でした。その二月後にどうなったかは周知の通りで、仙台行きの「スーパーひたち」も女川駅もことごとく過去のものとなってしまいました。それだけに、自分の中でも当時のことは思い出深く、二年の月日を乗り越えたこの店がどうなっているかを確かめたかったという次第です。
当時の記憶としては、国分町の古びた雑居ビルの二階にあること、五、六席ばかりのカウンターと申し訳程度のテーブルしかない小さな店だったこと、居酒屋というより日本酒バーといった雰囲気の店だったこと、中年の店主が一人で営んでいたこと、正月らしく粕汁が出てきたことなどです。当然ながら、店の雰囲気と店主は何一つ変わらないものの、再訪して改めて気付いたこともあります。カウンターの背後には造り付けの立派な棚が天井まで延び、向かって左には酒器が、右には食器と一升瓶が並び、器の一つ一つはなかなか気がきいたものです。三品のお通しは箸の進み具合を見計らいつつそいの造り、生湯葉、アイナメ煮付けの順で差し出され、牛タンの後ならこれさえあれば酒以外のものは必要ないでしょう。気のきいたお通しだけで十分呑めるところは「源氏」にも通ずるものがあります。
品書きはお造りとだし巻きなどわずかばかりの一品料理に限られていて、そのお造りの分量もかなり控えめです。腹は満ちない代わりに酒ばかりが進んで、酔いが次第に回ってきます。ある程度想定していたこととはいえ、やはり盛大な飲み食いはこの店に合わないのかもしれません。しかし、牛タンで腹を満たした後、酒をあおって仕上げたいと思ったときに、この店が「源氏」と並ぶ候補の一つに上がるのは事実です。居酒屋が先、お好み焼きが後になる広島に対し、仙台では逆順が定石なのだと改めて実感する結果となりました。
★かん
仙台市青葉区国分町2-13-11
022-225-8148
1800PM-100AM(日祝日休)
かん・鳳陽・水鳥記
お通し三品
かわはぎ造り
なじみといっても、この店に立ち寄ったのは二年前の正月一回だけです。延々四時間かけて常磐線を行く「スーパーひたち」を終点の仙台まで乗り通した後、石巻を通って女川まで往復し、夕方から早々に始めて牛タン二軒と居酒屋三軒をはしごしたとき、通算四軒目に立ち寄ったのがこの店でした。その二月後にどうなったかは周知の通りで、仙台行きの「スーパーひたち」も女川駅もことごとく過去のものとなってしまいました。それだけに、自分の中でも当時のことは思い出深く、二年の月日を乗り越えたこの店がどうなっているかを確かめたかったという次第です。
当時の記憶としては、国分町の古びた雑居ビルの二階にあること、五、六席ばかりのカウンターと申し訳程度のテーブルしかない小さな店だったこと、居酒屋というより日本酒バーといった雰囲気の店だったこと、中年の店主が一人で営んでいたこと、正月らしく粕汁が出てきたことなどです。当然ながら、店の雰囲気と店主は何一つ変わらないものの、再訪して改めて気付いたこともあります。カウンターの背後には造り付けの立派な棚が天井まで延び、向かって左には酒器が、右には食器と一升瓶が並び、器の一つ一つはなかなか気がきいたものです。三品のお通しは箸の進み具合を見計らいつつそいの造り、生湯葉、アイナメ煮付けの順で差し出され、牛タンの後ならこれさえあれば酒以外のものは必要ないでしょう。気のきいたお通しだけで十分呑めるところは「源氏」にも通ずるものがあります。
品書きはお造りとだし巻きなどわずかばかりの一品料理に限られていて、そのお造りの分量もかなり控えめです。腹は満ちない代わりに酒ばかりが進んで、酔いが次第に回ってきます。ある程度想定していたこととはいえ、やはり盛大な飲み食いはこの店に合わないのかもしれません。しかし、牛タンで腹を満たした後、酒をあおって仕上げたいと思ったときに、この店が「源氏」と並ぶ候補の一つに上がるのは事実です。居酒屋が先、お好み焼きが後になる広島に対し、仙台では逆順が定石なのだと改めて実感する結果となりました。
★かん
仙台市青葉区国分町2-13-11
022-225-8148
1800PM-100AM(日祝日休)
かん・鳳陽・水鳥記
お通し三品
かわはぎ造り