MT MANIAX

苦難の時にこそ、われわれは隣人に対して寛大であらねばならない。そうしていれば世界はわれわれにとって寛大なものになるはず。

神戸新聞の100日

2008年01月17日 | 
 『神戸新聞の100日』は、現在は角川文庫から刊行されている阪神淡路大震災に関する書籍です。私は地震発生時、兵庫県三田(さんだ)市というところに住んでいました。六甲山を挟んで神戸市の隣に位置する田舎町です。しかし今は四国に住んでおります。今日、身の回りで1995年の地震のことについて話題にだす人はいませんでした。よその地域にとっては、他人事になるのは仕方がないことだと思います。
 震災によって被害にあった人の口癖は「風化してはいけない」です。「風化」という言葉だけでブログ検索したところ、多くのブログで「あの時の惨事は風化しつつある」「震災の記憶を風化させてはいけない」といった発言がヒットしました。大災害と風化という言葉は、日本人の中ではセットになっているようです。
 「風化させてはならない」「忘れてはならない」と声にすることは簡単ですが、なかなか難しいことです。というか不可能です。私たちは、1年間に発生した悲惨な事件のうち、いったいどれだけを記憶に留めているでしょうか。私は自信がありません。
 それでは被災者以外の方々の記憶から消えないようにするためにはどのようにすればよいでしょうか。忘れさせないためには何かと組み合わせる必要があると思います。例えば、ショッキングな映像、遺族のインタビュー、悪役(政治家の怠慢、報道競争に徹した関東系マスコミ)などです。「9・11」テロは、ビル崩壊という奇跡的な映像としっかりとしたペアとなっており、なかなか忘れることができません。
 阪神淡路大震災の組み合わせのペアとして、『神戸新聞の100日』は最適な書籍であると思います。地震発生から新聞発行が復旧されるまでの100日間がつづられています。この本の内容は映像ではなく文章であるため、活きていると思います。京都新聞社との協力関係についての箇所は、ドキュメンタリーとしても面白いし、美談としても読めます。結構好きな本でして、被災されていない方にオススメしたい一冊です。
 「風化させてはならない」「忘れてはならない」という声に対して、ときとして聞き手は、心の中で、うっとうしいと反応することがあります。他人の苦労話に聞こえるからです。「風化させてはならない」と口にする方は工夫が必要だと思います。『神戸新聞の100日』のような本とペアですすめてみると、風化するスピードがゆっくりになるかもしれません。

最新の画像もっと見る