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水の丘交通公園

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国鉄 711系電車

2011-02-15 23:14:59 | 電車図鑑・国鉄型一般用車両
函館本線の札幌近郊の電化に伴い登場した、国鉄で初めての北海道向けの電車である。
昭和42年に試作車の900番台2両編成×2本=4両が登場し、その後、昭和43年に量産車
3両編成×8本=24両と900番台を3両で使用するための中間車のモハ711形1両の計25両、
昭和44年に3両編成10本=30両、昭和55年に車体や機器の設計を一部変更し、
100番台とされた3両編成17本=51両と試作車2本とあぶれた中間車を
3両編成にするための先頭車4両の総計114両が製造された。
製造を担当したメーカーは川崎重工、東急車輛、日立製作所である。
構成形式と編成の組み方は以下の通りである。
■構成形式と番台区分
・クハ711形
 :制御車。試作車では札幌駅基準で小樽向き。量産車は両側の先頭車となる。
  連結側に便所と洗面所がある。補助機器の類は搭載せず、トイレ用の水タンクを
  装備している。
・モハ711形
 :中間電動車。量産車のみ製造。制御器・電動発電機・空気圧縮機を装備する。
・クモハ711形
 :制御電動車。試作車(900番台)のみの存在。運転台の向きは旭川側。
  制御器・電動発電機・空気圧縮機を装備する。
  量産車のモハ711形は本形式から運転台構造を無くしたもの。
・900番台
 :クモハ711形+クハ711形で構成される試作車。それぞれ901と902の2本が
  製造された。
  901編成は2段窓と4枚折り戸が、902編成は温風送風機と大型の通風器、
  床下機器覆いが特徴であった。901編成のドアは後年引き戸に改修され、
  902編成の機器覆いは除去されている。平成11年までに廃車。
・100番台
 :クハ711-100+モハ711-100+クハ711-200で構成される。
  昭和55年に増備されたグループで各部に仕様変更が行われた。
  主な内容はクハ711-100の便所廃止による定員増加、便所の汚物処理装置設置、
  車体の難燃化、行き先表示幕の設置、ドア・雨樋のステンレス化、電気系統の
  構成・使用素材変更、種別幕上へのヘッドライト増設などである。
  なお、クハ711-100は試作車編成の3連化用に2両多く作られている。
■編成の組み方(←小樽側)
・量産車:クハ711+モハ711+クハ711
・100番台:クハ711-100+モハ711-100+クハ711-200
・900番台:クハ711-100+クモハ711-900+クハ711-900

車体は普通鋼鉄製で、本州で急行用に使用されていた455系や165系などの
急行形電車のものをベースに耐寒・耐雪構造を強化した設計としている。
正面デザインもこれらの車両のものを引き継いでいるが、ヘッドライトを当初より
小型で照度の高いシールドビーム式としたほか、運転台も従来の形式よりも
高い位置にされた。
また、正面下部のスカートは雪塊や大型の動物(エゾシカ、ヒグマなど)との衝突に
備えて、大型で強固なものとした。
正面は種別表示幕が、側面は行き先表示札を掲出するが、100番台は側面に
行き先表示幕を当初より装備する。
塗装はエンジ色に正面下部をクリーム色としたものであったが、昭和60年より
現在の赤にクリームの帯というものに塗り替えられた。

車内はデッキ側をロングシート、他の部分を4人向き合わせのボックスシートとした
セミクロスシートである。
本形式は分類上、113系や115系電車と同じ近郊形電車になるが、冬季の客室
保温のため、車体両端にデッキを設けたものとしている。
座席の間隔などは急行運用も考慮していたため、急行形電車と同じだが、
通路幅を確保するため、肘掛を省略した。
冷房装置については搭載されず、客室にあるスイッチで稼動する首振り扇風機を
設置している。
トイレは和式でクハ711形0番台、200番台、900番台の連結側に設置され、
対面に洗面所を設置した。

主制御装置はサイリスタ位相制御方式で日本の鉄道車両で初めて採用した。
この制御方式は従来の交流電流区間用電車(新幹線含む)で使用されていた
タップ式と異なり、接点を無くすことが可能である。
これにより、着雪時の故障を抑えることに成功した。
また、機器の小型化と軌道への粘着性能も向上したため、3両編成中電動車1両という
このため、起動加速度は1.1km/h/sと、かなり低いが、高速域になっても加速度が
一定で下がらないため、高速運転は得意であり、最高速度120km/hで札幌~旭川間を
ノンストップで走る急行「さちかぜ」では最短1時間36分で走破した。
この区間は平坦で直線が多く、蒸気機関車もまだ走っていた時代ということで
これでも十分な性能であった。
国鉄の新性能電車で初めて電動車ユニット方式を採用しなかった。
ブレーキは電磁直通ブレーキで、発電ブレーキや回生ブレーキの類は装備していない。
台車はインダイレクトマウント式空気バネ台車で軸箱支持は油圧円筒案内方式で
軸バネには凍結防止の為、ゴムの皮膜が設けられた。
モーターの駆動方式は中空軸平行カルダン方式である。
モーターは密閉式で冷却は強制送風式であるが、車体の雪切り室と呼ばれる装置と
繋がれ、その循環気流を利用している。
降雪時には雪を風で分離して車外に排出し、冷気のみをモーターや床下機器に
送ることが可能である。
この構造のため、国鉄標準のモーターを搭載しながら、走行中の冷却ファンの騒音が
格段に少なくなった。

本形式は試作車2連×2本=4両での各種試験運転の後、量産車が投入され、
昭和43年8月28日の函館本線小樽~滝川間の電化完成と共に営業を開始した。
翌昭和44年の函館本線滝川~旭川間電化完成と昭和55年の千歳線・室蘭本線
沼ノ端~室蘭間電化完成に合わせて増備されている。
本形式は普通列車のほか、車内設備を生かして急行列車にも使用され、
札幌~旭川間の「さちかぜ」、「かむい」でも活躍した。
国鉄の民営化後はJR北海道に全車引き継がれ、引き続き、札幌近郊の電化区間で
普通列車を中心に運用された。

試作車については2回に分けて量産車に仕様を合わせる改造を実施した。
最初の改造は床下機器を中心に量産車との併結対応、902編成の床下カバー撤去など、
2度目の改造で901編成のドアの片引き戸化、主回路装置の変更などが行われた。
また、試作車は原則2両で運用されたが、3両でも運用できるように量産車の
中間電動車モハ711形を1両余分に製造(モハ711-9号)し、必要に応じて編成を
組ませた。
主に901編成と組むことが多く、クハ711-901+モハ711-9+クモハ711-901という
編成を組んでいた。
その後、100番台を製造する時にクハ2両を余分に製造することで再度の編成組み換えを
実施し、以下のような3組み合わせとなった。

・901編成=クハ711-119+クモハ711-901+クハ711-901
・902編成=クハ711-120+クモハ711-902+クハ711-902
・118編成=クハ711-118+モハ711-9+クハ711-218

この他、量産車でも様々な改造がなされている。
主な内容は、種別表示器上にヘッドライト増設、PCB製造禁止に伴い絶縁材を
シリコン油に変更、客室扉増設改造(クハ711形1・2・106・111・115~117・206・211・
215~217)、731系電車開発に伴う室内設備検討改造、冷房装置設置(100番台のうち、
110編成と114編成以外が対象)、パンタグラフのシングルアーム化などである。
このうち、客室扉の増設は車体強度の関係で対象編成のモハ711形には
施工されてない。

既述の通り、民営化後も札幌近郊で運用されたが、都市化が進むにつれ、2ドア・
デッキ付の車体構造から乗降に難を呈し、ラッシュ時の列車遅延の原因となった。
そのため、本形式も3ドア化されたが、後継の721系、731系が導入されると置き換えが
進み、平成11年に900番台が、平成16年までに基本番台車が全車廃車された。
現在は100番台ばかり3両編成16本が残り、主に函館本線の岩見沢~旭川間、
室蘭本線苫小牧~室蘭間で運用される。
札幌近郊へも乗り入れるが、既に列車密度が濃い都市型のダイヤ構成と
なっているため、ラッシュ時か、その前後の入出庫を兼ねた運用が中心である。

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○苗穂工場に保管されている2段窓が特徴のクモハ711-901+クハ711-901。
 引退を前に登場時の塗装に復元された。


○3ドア改造車。ドアにクリームの細いラインが追加されている。
 ちなみに撮影地は平成22年、ホームが高架になった旭川駅。


○冷房改造車。3扉化は未施工。


○残り僅かとなった原形を保つ非冷房車。交代中の乗務員と対比すると本形式の
 運転台の高さがよくわかる。また、床下には断熱材を通し、さらにその下に
 モーター冷却のための風洞が通るモハ711形と同じ床の厚さがあるため、
 走行音は電車とは思えないほど静かである。


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