なぜか台風が好きだ。
もちろん人命が失われたり家屋が流されたり
悲惨を招くことは分かっている。
でも、心がときめくのだ。
それは、破壊への願望ともいえるのかもしれない。
不幸は自分の身に降りかからぬ限り絶頂を招く。
蜜の味。
自然に逆らうなどもっての外なんだ。
でも、抗うのだろう。
何度でも何度でも・・壊されたって・・・また、同じものを作り上げる。
同じ場所で生まれ、同じ進路をたどって来る。
なのに、防ぎようがない。
過ぎ去ったあとに死人の数、その多さだけを競う。
哀しみは何処かえ置き去りにされたまま、
また来年も8月を迎える。
そして、また、誰かが呟く。
「もう、秋だ。」
秋の狡賢さや狡猾さを知らない
狭量な大人たちは今夜も酒盛りを始める。
「どんな嵐も去っていくのだ。」
そんなことを言い放っている。