歳を重ねると楽しいとか賢くなるとか・・・・みんな戯言なんだよ。

感じるままに、赴くままに、流れて雲のごとし

ただひたすら虚しいだけ…と思い詰めたところでどうなるわけでもあるまい。

2019-03-27 | 映画

平穏な時を過ごして終わりの時が来るなどと思いはしない。

意のままに時を重ねながら生きて行ける程、器用でもない。

遠くに霞む山の緑が恋しくなっても春はまだ遠く、山並みには白いカーテンが垂れ下がり、草原はブラウンに澱んでる。

遠くの方で鶯の啼く声を聞いたような気がしも空耳としか思えなくてハンドルをにぎる手にもチカラが入らない。

 

さあ、さて何処に行こう。

思い倦ねる僕はアクセルを踏み込む。

メルセデスのエンジンは振動を心地良く僕の身体を揺さぶり、やる気を出させてくれる。

 

フロントガラスには枯葉が溜まっていたけれど、お構いなしにクルマを発車させた。

 

老いを簡単に受け入れてはいけない。

身体の節々の軋む音がしても、やるべき事はやらなくてはならない。

惰性だけで生きてはいけない。ましてや過去のつまらない躓きに心を曇らせたり、早く忘れてしまいたいなどと弱音を吐く暇などないのだ。

時は留まらない。過ぎ去っていく風景を眺めやり過ごし、無いモノとして過去を偽るには罪が重すぎるのだ。

「償う」しかないのだ。何があっても、謝罪の言葉以外で相手に伝える方法を編み出し赦しを乞う。

それが老いたもののすることなんだ。

自分を見つめ直して気が付けば誰だってそうするのだ。

しない事を老いの所為にしてはならない。

 

そんな言葉が頭の中でグルグルまわりはじめた。

 

横浜に戻るか・・・・。

 


置き去りにした人へ今更なにをすれば良いのだろう。

2019-03-14 | 旅行

そう言えばと思い出す事ばかりが頭の中でグルグル廻り始めていた。

別れを切り出すことはほとんどなかった。

付き合いの長さに関係なく、自然消滅が成り行き任せと言う言葉に変換され、それが彼女たちにとっても最良の事だと考えていた。

連絡をしなくなれば、連絡を取らなければ忘れてしまい、次のステージへ向かうとかんがえていた。間違いだと気付いていながらもそんな行動をあからさまにしていた。

結果的にそれでも良かった。今となっては…。決着をつけてしまえば思い出にもならない。

そんな風にしか彼女たちとの関係を、風に舞う木の葉のように思い浮かべて一人で寂しさに耐えようと決めていたようだ。

ようだった。

なんてふざけた生き方をしていたんだろう。

 

柔らか過ぎるベッドに横たわりなが思いを巡らしていた。

突然。部屋の電話機が鳴った。

「もしもし」

「小枝です。もう、おやすみになりましたか?」

「いや、ベッドの中でグズっています。で、どうかしましたか」

「いえ、とくになんでもないのです。なんだか私の所為で気分を悪くされたのではないかと…気になってしまって。」

確かに会話を途切れさせたままにして部屋に入ってしまった。

「悪かったです。ちょと気になる仕事を抱えていて、頭がそっちへ行ってしまったようで。申し訳なかった。すみません。」

「それならいいんです。私、気になる事を抱えたままだと寝つきが悪くなるんですの。それでは、おやすみなさい。」

「あの…その…あやすみなさい。」

電話は僕の言葉が終わらないうちに切れた。

こんな電話をさせてしまった事を悔やんだ。

そして、片方でほっとしている自分を見つけ出していた。