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『恋人たち』

2016年01月06日 | 映画(か行)
『恋人たち』
監督:橋口亮輔
出演:篠原篤,成嶋瞳子,池田良,安藤玉恵,黒田大輔,山中崇,
   内田慈,山中聡,リリー・フランキー,木野花,光石研他

12月26日(土)にテアトル梅田にてハシゴした2本のうち、1本目。

『ハッシュ!』(2001)、『ぐるりのこと。』(2008)ともにピタリと来た橋口亮輔監督。
本作も観たい観たいと思っているうちに1日1回の上映に。
こりゃ劇場で観るのは無理だとDVD化されるのを待つ気でいたところチャンス到来。
ただただ暗いというレビューも見かけましたが、私はかなり好き。

現代の生きづらい日本で毎日を過ごす3人の男女が主人公。
脇を固めているのは芸達者な個性派俳優ですが、
主演は橋口監督が主催するワークショップで見いだされたほぼ無名の3名。

橋梁点検の仕事に就いているアツシ(篠原篤)。
数年前、最愛の妻が通り魔殺人事件の犠牲者となり、喪失感を拭えないまま。
精神疾患を訴える犯人への憎しみは募るばかりで、
なんとか奴を罰するために、裁判が可能だと言う弁護士に望みを託している。

アツシの話を聞き入れたのはエリート弁護士・四ノ宮(池田良)。
しかしその実、顧客の話に耳を傾けているふりをしているだけ。
ゲイである四ノ宮には同棲中の男性がいるが、
彼が本当に想っているのは学生時代からの友人・聡(山中聡)。

弁当屋にパートに出ている主婦・瞳子(成嶋瞳子)。
ヤリたいときしか声をかけてこない夫・信二郎(高橋信二朗)、
どうにもソリの合わない姑・敬子(木野花)と暮らしている。
退屈きわまりない生活のなか、弁当屋に鶏肉を卸す業者・藤田(光石研)と親しくなる。

こんな3人が主人公。

3人のうち、四ノ宮に対しては自己チューなふるまいに嫌悪感を抱きましたが、
見ているのが辛くて仕方ないのはアツシ。
どこに向けてよいのかわからない怒りを抱え、
なんとか気持ちに整理をつけたいと思っているのに、どうにもならない。
保健課の職員(山中崇)は冷ややかで、先輩(リリー・フランキー)はいい加減。
上っ面の言葉だけが通り過ぎるなか、黒田大輔が演じるアツシの上司はよかった。

怪しい水を売って稼ごうとするスナックのママに安藤玉恵
この人が出ているだけで笑ってしまうのですが、
別に好きでこんなことをしているわけではない、
でも人を騙しでもしなければ生きていけないんだよという開き直りが感じられます。

瞳子役の成嶋瞳子は新人らしからぬ堂々ぶり。
新人といってももうオバハン、こちらも開き直りがすばらしく、
まるっきりのオバチャン体型をさらけ出した体当たり演技。
束の間の夢が消え去ったときの呆然とした表情は他人事とは思えません。

橋口監督、これからも楽しみです。

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