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『シュヴァルの理想宮 ある郵便配達員の夢』

2019年12月25日 | 映画(さ行)
『シュヴァルの理想宮 ある郵便配達員の夢』(原題:L'Incroyable histoire du Facteur Cheval)
監督:ニルス・タヴェルニエ
出演:ジャック・ガンブラン,レティシア・カスタ,ベルナール・ル・コク,
   フローレンス・トマシン,ゼリー・リクソン,ルカ・プチ=タボレーリ他
 
ある郵便配達員が33年間に渡ってたったひとりで築いた奇想の宮殿。
実話だということに興味を惹かれ、シネ・リーブル梅田へ。
 
1873年、フランス南東部ドローム県の小さな村オートリーヴ。
人づきあいが苦手で口下手、真面目さだけが取り柄の郵便配達員シュヴァルは、
自分の子どもとすらどう話してよいのかわからない。
病死した妻の葬儀の席で、シュヴァルには子育ては無理との烙印を押され、
言い返すこともできないまま一人息子のシリルを取り上げられる。
 
郵便局長のオーギュストは数少ないシュヴァルの理解者。
あるときオーギュストがシュヴァルの配達地域を変更したさい、
シュヴァルは心優しき未亡人フィロメーヌと出会う。
やもめ同士めでたく再婚、授かった赤ん坊にアリスと名づける。
 
アリスをどう扱えばよいのか戸惑うシュヴァルだったが、
ふたりを見守る近所の女性フェリシエンヌの企みが功を奏し、
シュヴァルはアリスを抱き上げる。
以来、不器用ながら傍目にもわかる愛情をアリスに注ぐように。
 
ある日の郵便配達中、石につまずいて転んだシュヴァルは、
その石の奇妙な形に心を奪われる。
それがきっかけで、アリスのために宮殿を築くことを思いつき、
石を拾い集めては終業後にこつこつと積み上げるのだが……。
 
郵便配達員としての実績がまず凄い。
勤続30年を表彰しにやってきた偉いさんが、その数字を見て「何かの間違いでしょ」と言う。
毎日32キロ、徒歩で配達を続け、配達した郵便物の数は22万通以上に上る。
偉そうに振る舞うことなどない彼が、表彰のときは顔を上げて得意気です。
 
パン屋で修行したことはあるけれど、建築の知識など皆無のシュヴァル。
パンも建築物も同じだろと、独学で宮殿を築き始めます。
もともと村人からは偏屈扱いされているから、
「あの変人、また何か始めよった」てな感じ。
 
同年代の子どもたちから「お姫様」とからかわれたアリスが
「もう宮殿をつくるのは止めてほしい」とシュヴァルに懇願することも。
でも、シュヴァルは決して止めようとしないし、
アリスも「本当は大好きだ」と言ってくれます。
 
嬉しいときもそれを素直に表せずに素っ気なくしてしまうシュヴァル。
怒らせてしまったのだろうかと戸惑う客人に、
あれは喜んでいるときの態度ですとフィロメーヌが「通訳」するのも微笑ましい。
 
33年間にシュヴァルを襲った数々の不幸。でも、幸せもあった。
何もしてやれなかった息子が大人になってから訪ねてきてくれた。
あらためて父親と息子の関係を築けた。
シュヴァルのもとにシリルが帰ってきたのは、
父親に疎まれていたわけではないと、子供心にわかっていたんだなぁ。
 
のちにフランス政府により重要建造物にも指定された凄い宮殿。
実際に見てみたい。

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