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『サマーショール 遺言 第六章』

2021年03月17日 | 映画(さ行)
『サマーショール 遺言 第六章』
監督:豊田直巳,野田雅也
 
次年度に繰り越せない有休消化月間。
近場のシネコンは“エヴァンゲリオン”一色で、しかも155分の長尺だから、
それを観ると下手すると2本しか観られない。せっかく丸一日休みなのに。
少なくとも3本は観たいから、会員証を更新しがてら第七藝術劇場へ。
十三は駐車料金が安くていいですねぇ。日中の最大料金は500円也。
 
2人のフォトジャーナリストがフィルムに収める福島・飯舘村の様子。
前章は『遺言 原発さえなければ』(2014)は225分の大作。
その続編として撮られたのが本作なのだそうです。
 
2011(平成23)年3月11日に起きた東日本大震災
超巨大地震に襲われて福島では原子力発電所事故が発生しました。
あれから10年が経ち、飯舘村はどうなっているのか。
 
放射能に汚染されため、村人全員が避難することになった飯舘村。
6年後、避難指示が解除されることにはなったものの、
除染作業は継続中、本当に戻って大丈夫なのかどうかはわかりません。
 
若い人は出て行ったまま戻ってこないだろうから、
村に戻るかどうかの決断を迫られるのはそこそこの年齢の以上の人ばかり。
「放射能が効く前に俺はどうせ死ぬからいいんだぁ」と言う男性。
町場で暮らすには家賃や駐車場代がかかるから、
最低でも月20万の収入がなければ無理、帰ってくるよと言う男性。
みんな明るく笑ってそう言うけれど、寂しさが伝わってきます。
 
朝ごはんにちょっと野菜が足りんねというときは、
家のすぐ外から野生のクレソンやウルイを採ってきて食卓に並べた。
今もそれらは同じ場所で育っているのに食べられない。
 
セシウムに侵されているなんて信じたくない。なかったことにしたい。
でもこの先もここで暮らすならば真実から目を背けるわけにはいかず、
作物のセシウム含有量を定期的に調べている人もいます。
 
チェルノブイリを旅して現実をつきつけられた元酪農家の男性。
原発事故から30年経ったその地は廃墟と化した家ばかり。
夢を打ち砕かれた思いを抱きながらも、現実を見られてよかったと言います。
 
どうなろうが生まれ育った故郷。
そこから離れられずに田畑を耕し続ける人がいる。
 
タイトルの「サマーショール」とは、
チェルノブイリの原発事故で立ち入りを禁止された区域に
自らの意志で暮らす人々のこと。
飯舘村へは帰ってもよいことにはなっている。
帰郷したい思いはある、でも帰郷すべきかどうか、
本当に帰郷しても大丈夫なのか、人々は考えています。

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