夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

“浪速の歌う巨人パギやん”に会いに行く。〈2回目〉

2016年09月13日 | 映画(な行)
1週間以上前に観た映画の話がまだUPできていないのですが、
一昨日の日曜日の話を先にUPします。

パギやんの『歌うキネマ』に初めておじゃましたのが去年の12月。
そのときの演目は『飢餓海峡』(1965)でした。
世の中にはいろんなことする人がいてはるねんなぁと圧倒され、
ほかの演目も観たい聴きたいと思いながら9カ月。

前回と同じく飲み友だちのお姉さまからお誘いいただきました。
お姉さまイチ押しの演目は『砂の器』(1974)なのですが、
今回はパギやんの新作『ナッツ』(1987)とのこと。わくわく。

当日の朝は箕面市のクリーンみのお作戦の日。
仰々しい名前ですが、なんのこっちゃない、地域一斉清掃活動の日。
朝からご近所さんと一緒に草を抜いたり枝を払ったり。
猿や猪や鹿も疾走するお山のこと(阪急箕面駅から徒歩10分ではあるのですが)、
ときには不法投棄物もあったりして、それを拾い上げたり。
朝8時すぎからぼちぼち掃除を始めたら、不法投棄された炊飯器を発見。
箕面ドライブウェイから放り投げたものが転がってきたとしか思えず。
たのんます、そんなものを放らないでください。

2時間ばかりで「もうええよねぇ」と掃除終了、シャワーを浴びました。
『歌うキネマ』は谷町六丁目で午後2時からだから、1時ごろ家を出れば間に合う。
ということで、『ナッツ』のビデオを観ることに(笑)。
実はこれ、お姉さまから半年以上前にお借りしたもの。
なんで『歌うキネマ』当日まで観ずにきてしまったのか、私。すんません。

監督はすでに故人のアメリカ人マーティン・ソリット。
『トランボ ハリウッドに最も嫌われた男』のダルトン・トランボ同様、
1950年代に赤狩りに遭って、つらい時期も経験した人。
“ナッツ”をいちばん上手く表している日本語は、差別用語の「きちがい」。
きちがいということにされかけている主人公にバーブラ・ストライサンド
彼女をやむを得ず弁護することになった官選弁護人リチャード・ドレイファス
非常に見応えのある法廷ドラマです。

富裕な家庭に育ったクローディア・ドレイパーは、家を出て結婚、やがて離婚。
実家に頼ることなくコールガールとなって稼ぎまくっていたが、
ある日、自宅に招いた客から殺されそうになり、逆に相手を刺殺してしまう。
世間体を気にする継父アーサーと実母ローズは、
刑務所よりも病院に入れられるほうがマシだと、クローディアの精神異常を訴える。
著名な辣腕弁護士ミドルトンと医者モリソンを雇い、
精神異常のため裁判を受ける能力なしと認定させようとするが、
正当防衛を主張して裁判を受けたいクローディアは、憤慨してミドルトンに殴りかかる。
負傷したミドルトンはキレて弁護人やんぴ。
その場に居合わせたアーロン・レヴィンスキーが官選弁護人として判事から指名される。
精神異常の線をレヴィンスキーが引き継ぐものと誰もが思っていたが、
判事や検事の物言いになんとなくムカついたレヴィンスキーは拒否。
とりあえずクローディアと面会して調べることにするのだが……。

日本ではすでに廃止されている予審制度がアメリカにはあります。
裁判をおこなう前に、裁判するかどうかを判事が決める制度。
本作はクローディアが裁判を受けられることになるかどうか、予審の様子を描いたもの。
ネタバレになりますが、最近の映画ではそう珍しくもない、「困ったときの性的虐待」。
『砂上の法廷』なんかもそうでした(って、これは性的虐待はなかったのに、
あったことにしちゃったというものでしたけれども)。
性的虐待ものに詳しいわけではありませんが、そのハシリなのかもしれません。

クリーン作戦後にこのビデオを観て、ちょっと興奮気味で谷六へ。
いま観てきたところなのですから、たぶん「話を知っている度」はこの日の客で私がいちばん。

バーブラ繋がりで『追憶』(1973)のテーマ曲をパギやん熱唱。
100回演じて芸になるとおっしゃっるとおり、
まだ8回目だという本作は、確かに『飢餓海峡』ほどこなれちゃいません。
が、パギやん迫真の演技にはやはり引き込まれます。

ただ、映画のクローディアのほうが嫌な女ですよね。(^^;
バーブラ演じるクローディアがそうなってしまったのは、
継父から性的虐待を受けていたという背景があってのことなのですが、
それにしてもヒステリックにがなり立てる彼女は、
映画序盤、「たとえこいつが無実だとしても誰も味方にはならん」と思うほど嫌な女。
それに比べてパギやん演じるクローディアはなんだかしおらしい。
そんなしおらしいパギやんのクローディアが「ご託並べてんじゃないわよ。
アンタみたいな三下(さんした)が」と息巻くシーンは格好よかったです。

お姉さまがピアノ好きな私のために取っておいてくれた席は、最前列のピアノの前。
素敵な生伴奏をされるピアニストの春間げんさんの真ん前で、
時にはパギやんの熱演よりも春間さんのピアノ弾きに見入ってしまいました。
パギやん、ごめんなさい。

ビデオを観た直後だったから、登場人物の名前もすべて覚えていたので、
あのいけ好かない医者の名前、モリソンだったのに、
スミノフになっているのはパギやんのアレンジ?
ウオッカでも飲みたい気分なのかなと思っていました。
どうやら単なる言い間違いだったということが判明。それもまたご愛嬌。(^o^)

そんなこんなで、今回も楽しかった『歌うキネマ』でした。
そのうち全演目制覇したいなぁ。

この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 『家族の日』 | トップ | 『アンナとアントワーヌ 愛の... »

映画(な行)」カテゴリの最新記事