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『きっと ここが帰る場所』

2012年07月15日 | 映画(か行)
『きっとここが帰る場所』(原題:This Must Be the Place)
監督:パオロ・ソレンティーノ
出演:ショーン・ペン,フランシス・マクドーマンド,ジャド・ハーシュ,
   イヴ・ヒューソン,ケリー・コンドン,デヴィッド・バーン他

シネ・リーブル梅田にて。

イタリア/フランス/アイルランド作品。
監督はイタリア人。彼の初の英語作品だそうです。
原題は“This Must Be The Place”、トーキング・ヘッズに同名の曲があります。

かつて絶大な人気を誇ったロックスター、シャイアン。
いまはダブリンの豪邸で株で儲けながらほぼ遁世。
消防士で男勝りな妻ジェーンがそんな彼を支えている。

シャイアンの親友はゴスロリ娘のメアリー。
彼女の兄が突然家出、息子を溺愛していた母親は心が折れてしまう。
シャイアンは孤独なメアリーの良き話し相手。
メアリーに片想い中の若者デズモンドにも、シャイアンはアドバイスを送る。

ある日、ニューヨークからシャイアンのもとへ父親危篤の知らせが。
故国アメリカを出てから30年以上、一度も父親とは会っていない。
飛行機が苦手なシャイアンは船で向かうが、案の定、死に目にはあえず。

遺品の日記を手に取ると、シャイアンのことは一言も書かれていない。
やはり嫌われていたんだと思う。
しかし、父親がある元ナチス親衛隊員を生涯に渡って追っていたことを知り、
シャイアンはその人物の捜索をはじめるのだが……。

ニコラス・ケイジに「作品を選ばなすぎ」と言ったショーン・ペンが選ぶのはこんな作品。(^^;
変わり者の元ロックスターに扮した彼は、化粧バッチリ、真っ赤なルージュ。
そんな見た目に反して口調は優しい。そして、口調と同じく、優しい物語。

さまざまな台詞や会話が柔らかく可笑しく、印象に残ります。
「寂しさと寂しさは相性が悪い」とか、「恐怖にはいつも救われる」とか。
「絶滅寸前のパンダみたいに」などという比喩も可笑しいし、
なぜ子どもをつくらなかったのかと問われたシャイアンが、
「ロックスターの娘はぶっ飛びのスタイリストになるから」と答えたのにも笑いました。

旅先では、元ナチス親衛隊員の孫娘レイチェルと知り合い、
自分の尋ね人が誰であるかを言わずに接触します。
彼女はシャイアンがミック・ジャガーとも歌ったことのあるスターだと気づき、
彼女の息子は1曲だけでいいからギターを弾いてくれと懇願。
レイチェルの息子が「アーケイド・ファイアのあの曲がいい」とリクエストすると、
「ナンセンス!あれはトーキング・ヘッズの曲で、
アーケイド・ファイアがカバーしただけ」とシャイアン。

そのトーキング・ヘッズのデヴィッド・バーンは本人役で出演しています。
また、メアリー役はU2のボノの愛娘。ゴスロリが超似合う。

雰囲気を感性で感じ取れ、みたいなところはあります。
心地よい作品だけれども、いろいろ釈然としない部分も。
登場人物同士の関係については説明がなさすぎるし、メアリーの心中も察しづらい。
もっと単純な点では、借りた車について裏切った信頼はどうなるんだろうとか。

垂れている髪をフッと吹き上げる仕草は、
個人的には、最後のほうの数回は取って付けたようで要らないし、
ナチス親衛隊員が眼鏡を取ったり外したりしすぎるのも気が散るし。
それでもまぁいいやと思えるのは、
ショーン・ペンとフランシス・マクドーマンドの人を和ませる力に因るのでしょうか。

いちばん好きだった台詞は二度登場します。
「そんなの嘘だ。でも嬉しいよ、ありがとう」。
ホントでありますように。

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