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『インポッシブル』

2013年06月23日 | 映画(あ行)
『インポッシブル』(原題:The Impossible)
監督:J・A・バヨナ
出演:ユアン・マクレガー,ナオミ・ワッツ,トム・ホランド,
   サミュエル・ジョスリン,オークリー・ペンダーガスト他

友人と会う前に2本観られるかどうかの瀬戸際、
前述の『華麗なるギャツビー』とハシゴ。
同劇場ではありますが、本館から別館へ、その間5分しかないので必死のぱっち。

アメリカ/スペイン作品。
2004年のスマトラ島沖地震による大津波で被災した家族をめぐる実話を
『永遠のこどもたち』(2007)のJ・A・バヨナ監督が映画化。

2004年12月。
イギリス人夫婦のヘンリーとマリアは、息子のルーカス、トマス、サイモンを連れて、
タイのリゾート地をクリスマスのバカンスに訪れる。
ところがクリスマス当日、ホテルのプールでそれぞれ楽しんでいたところ、
スマトラ島沖地震が発生、一瞬にして津波に呑み込まれる。

濁流の中、かろうじて生き延びたマリアと長男のルーカス。
大けがを負ったマリアをルーカスが支えながら、なんとか水の引いた場所へ。
地元の住民に助けられ、病院へと搬送される。

一方のヘンリーは、二男と三男のトマスとサイモンとともになんとか無事。
幼いふたりをほかの大人たちに預けると、
あきらめきれずにマリアとルーカスを探しに出かける。
点在する避難所や病院を来る日も来る日も回りつづけるのだが……。

あくまでも家族愛がテーマの、災害に遭って離散した一組の家族が再会するまでの物語。
もしも同様の災害で家族を失った人が観たら、辛いだけかもしれません。

それでも、こうした災害に遭ったとき、
尊厳を傷つけずにいられるか、利己的にならずにいられるか。
『遺体 明日への十日間』を観たときと同じことを考えさせられます。
助けを求める人のことを「自分の身も危ないのに、他人を助けてはいられない」と思わないか。
携帯電話を借りたいという人に気持ちよく差し出すことができるのか。

母親のマリアは、出血の酷い凄惨な状況に置かれながらも、
さっさと自分たちだけで逃げようという息子のルーカスに、
それは断じてならないことだと言い聞かせます。
そうしてルーカスも母親の思いをしっかりと汲み取り、
病院内では自分ができること、人のためになることをなんとか見つけようとします。

涙なくしては観られない作品であることは間違いありません。
しかし、私の泣きモードのスイッチが入りかけたときに、ずいぶん離れた席から聞こえてくる嗚咽。
それがこれまで聞いたどんなものよりもスゴくて、
さすがに「アンタ、それは泣きすぎやろ!」とツッコミたくなりました。(^^;
決してシラけたわけではなく、よそさまのあまりの泣きっぷりに笑ってしまい。

なぜに“Impossible(=不可能な)”かと思っていたら、途中こんなシーンが。
父親のヘンリーから三男を見てやれと言われたまだ幼い二男が、
心細い気持ちを抑えて三男に膝枕しながら星空を見上げたとき。
同じく被災した老婆が近くに座り、星の話をします。
どの星も輝いているけれど、中にはすでに死んでしまっている星もある。
星の生死はここから判断することができないのかと尋ねる二男に、老婆が“Impossible.”と。
人の生死もそこで判断することはできないから、
その目で確かめるまであきらめられないのですね。

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