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『オレンジ・ランプ』

2023年07月10日 | 映画(あ行)
『オレンジ・ランプ』
監督:三原光尋
出演:貫地谷しほり,和田正人,伊嵜充則,新井康弘,水木薫,
   山田雅人,堀田眞三,赤間麻里子,赤井英和,中尾ミエ他
 
なんばパークスシネマにて、
 
39歳で若年性アルツハイマー型認知症と診断された男性の実話に基づくそうです。
タイトルは何を指しているのかなと思ったら、認知症のシンボルカラーがオレンジ。
みんながランプに灯を点せば、世界を明るく照らすことができますよということ。
 
自動車販売店でトップの成績を誇る営業マン・只野晃一(和田正人)。
明るく優しい妻・真央(貫地谷しほり)とふたりの娘に囲まれ、
戸建ての家に住み、申し分のない毎日を送っていた。
 
ところが、顧客との約束を忘れたり顔を思い出せなくなったりして、
社長の島崎(赤井英和)からこっぴどく叱られる。
また、娘の好物を買って帰ると、昨日も買ってきたじゃんと笑われる。
 
さすがにおかしいと妻付き添いのもと病院へ行くと、認知症との診断。
完治することはなく、薬で進行を遅らせることしかできないらしい。
 
職場に打ち明ければ退職を余儀なくされるだろう。
父親が認知症だとバレたら、娘たちは学校でいじめられるかもしれない。
不安が膨れ上がるなか、ついに帰り道を忘れてしまい……。
 
このようなテーマの作品は批判してはいけない気がします。
ただ、演技の上手な人が揃っているとは思えない。
泣くシーンなどはいささかオーバーアクション気味で、こちらは泣けなかったりも。
 
その点は置いておくとして、いろんなことを考えさせられます。
 
認知症の夫を前にして、妻はすべて「やってあげなきゃ」と思う。
夫がコーヒーを入れようとすれば「私がやるから」と言い、
夫が買い物に行こうとすると「私が買ってきてあげるから」と言う。
 
認知症になっても、自分でやれること、できることはいっぱいある。
若くして発症する認知症と老いてからの認知症の違いを私はよくわかっていませんが、
若年性の場合は自分で認知症であることを理解しているように本作で思いました。
 
若年性認知症の患者が集う場に気乗りせずも行ってみた晃一は、
自分と同じく営業マンで今なお仕事を続けているという加藤(山田雅人)が
さまざまな工夫をして対応しているとことを知ります。
忘れるから駄目ではなくて、忘れたときにどうすればいいかを前もって考える。
自分でできることはどんどんして、困ったら助けてもらう。
 
助けてもらう方法も自分自身で考えはじめたら、人に何をどう頼めばいいかも見えてきます。
認知症であることを恥じずに、積極的に打ち明けて助けを借りればいい。
一旦は退職願を出した職場も、社長をはじめとするみんなのサポートで続けられるように。
会社のエースだった晃一の側からも営業に関して同僚に教えられることがたくさんあるのです。
 
忘れる前に感謝を。そんなひと言が心に残りました。

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