夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『秘密の森の、その向こう』

2022年10月08日 | 映画(は行)
『秘密の森の、その向こう』(原題:Petite Maman)
監督:セリーヌ・シアマ
出演:ジョゼフィーヌ・サンス,ガブリエル・サンス,ニナ・ミュリス,
   ステファヌ・ヴァルペンヌ,マルゴ・アバスカル他
 
シネ・リーブル梅田にて、2本ハシゴの1本目。
 
『燃ゆる女の肖像』(2019)が強烈な印象を残しているセリーヌ・シアマ監督。
それはそれはとても気に入って、今後も楽しみにしたい監督になりました。
しかし、2020年のセザール賞(フランスにおけるアカデミー賞のようなもの)の授賞式で、
ロマン・ポランスキー監督の最優秀監督賞受賞が発表されたとき、
それに抗議するために退席した人々の中にシアマ監督もいたと知り、なんだかなぁと思いました。
 
そんなこともあって、本作を観るかどうか少し迷ったのですが、観てよかった。
やはりこの監督の映画は素晴らしい。
 
最初のシーンは、どこかの施設内に見えます。
可愛い女の子が各部屋を回り、入居者にお別れの挨拶をしている。
少女自身が病気で入院でもしていて、退院するのかなと。
少女は施設を出ると、母親が運転する車の後部座席に乗り込みます。
 
全容が見えてくるのは数十分経つ頃でしょうか。
少女がいたのは老人介護施設で、彼女の祖母が亡くなったのだとわかる。
母親と共に少女がやってきたのは祖母が暮らしていた家で、
主のいなくなった家の片付けを始めるのでした。
 
さて、この少女は8歳のネリー。
母親は自らの幼少時代の思い出が詰まった実家を片付けるうち、
それに耐えかねたのか、ネリーと父親を残してどこかへ行ってしまう。
 
家の片付けを続ける父親。
ネリーが母親から聞いていた森を散策していると、そこには自分と同じ年齢の、
しかも自分によく似た少女マリオンの姿が。すぐに仲良くなるふたり。
 
この先の展開には意表を突かれました。
 
マリオンに誘われてついて行ってみると、彼女の家は祖母の家と瓜二つ。
しかもマリオンの母親は具合が悪そうで、寝込んでいます。
傍らには杖があり、彼女は足が悪いことがわかる。
 
マリオンこそがネリーの母親で、寝込んでいる女性はネリーの祖母。
その事実に気づいたネリーは、最初こそ驚きますが、母親と交流を図るのです。
 
やがてネリーは「私はあなたの娘なの」とマリオンに打ち明ける。
マリオンもそれを受け入れて、祖母の家の片付けが済むまでの数日間を過ごします。
 
ネリーとマリオンを演じるのは双子、ジョゼフィーヌ&ガブリエル・サンス姉妹。
愛らしくて、賢くて、楽しい表情も寂しい表情も何でもできる。
冒頭のネリーが後部座席から母親の口元へお菓子を持って行くシーンなど、なんと幸せなことか。
 
タイムスリップしたわけでもないのに、森の中で会ったのは子ども時代の母親。
コメディにしかなりそうにもないところ、静謐で純粋で穏やかな作品になっています。
とても良かった。

この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 『ダウントン・アビー/新た... | トップ | 『3つの鍵』 »

映画(は行)」カテゴリの最新記事